断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第77話

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カイルは、まだ黄金の檻の中にいる。

膝は床に縫い付けられたみたいに動かない。

それでも顔だけは上げて、いつもの「優しい王子」の角度を探していた。

空の巨大モニターが、勝手に寄る。

焦点補正――喉元。

あ、そこ。嘘をつく前に、唾が飲めない癖。

コメントがざわつくのが、精霊力の粒になって落ちてくる。

【心音字幕:強制表示】

【……まだだ。まだ“王太子”として振る舞えば、民は――】

私の首輪が「ちり…」と鳴った。

笑いそうになったから。

笑ったら死ぬ。だから私は、息だけで、告げる。

《カイル。あなたには、特別枠を用意した》

彼の目が一瞬だけ揺れる。

その揺れを、モニターが逃がさない。

視聴者の「見たい」が、勝手にズームを深くする。

【心音字幕:強制表示】

【……特別? 処刑? いや、配信で殺せないなら……】

《違う》

《あなたは、“殺される”より怖いことをした》

《だから、罰も“殺す”じゃ足りない》

広場が静まり返る。

静かすぎて、私の心拍が上がりそうになる。

首輪が、喉の内側を刃で撫でる気配。私は息を細くする。

カイルが口を開いた。

「スカーレット、誤解だ。私は――」

【心音字幕:強制表示】

【……言え。優しい声で。泣かせろ。罪悪感を植えろ。最後に地下を開け――】

コメントが、怒りで燃える。

怒りは精霊力になって、檻の金をさらに硬くする。

彼の肩が、ぐっと押し下げられた。

私はテロップを落とす。

《あなたは今まで、“多数派”を買ってきた》

《サクラ、腕章、王城内中継所、地下第三層》

《でもね。今日からは買えない》

カイルの目が「わからない」を作る。

わざとだ。わからない顔をすれば、民は説明したがる。

そして説明は、彼にとっての延命になると思ってる。

《教皇は落ちた》

《国王は第七区に落ちた》

《王妃E-7は壊れて、次を回せって言われた》

《残ったのは、あなた》

私は一拍置く。

その一拍で、首輪の「ちり…」が少し弱まる。

感情を平らにする。勝った興奮も、復讐の快感も、全部捨てる。

《だから、あなたには“捻り”をあげる》

《あなたが一番嫌う形》

カイルが、やっと焦る。

焦りは声に出さなくても、心音字幕が拾う。

そして全国が、それを読む。

【心音字幕:強制表示】

【……やめろ。やめろ。殺せ。殺せるなら殺せ。】

【……俺から“王太子”を奪うな。俺は“上”にいるはずだ。】

《奪わない》

《あなたが自分で捨てるの》

空に、システムが勝手に新しい枠を出した。

誰も操作してない。

“見ている人たち”が、次を欲しがったから。

【提案:処分内容の最終選択】

【対象:王太子カイル】

【選択肢:A/B】

私は息で、文字を重ねる。

《A:処刑》

《B:生かす。ただし“王太子の婚姻儀式”を、あなた自身に適用する》

ざわ、と空気が重くなる。

民衆は「儀式」という単語に反応する。

だって、あれは本来、女から魔力を抜くための要綱。第三式。魔力移譲。刻印上書き。

彼が私にやろうとしたこと。

カイルが叫ぼうとする。

でも叫びは、心音字幕に先回りされる。

【心音字幕:強制表示】

【……ふざけるな。男に? 俺に? 刻印を“上書き”される?】

【……俺が“器”になる?】

私は、そこでだけ、少しだけ意地悪くなる。

首輪が鳴らない程度に、息を鋭くする。

《そう》

《あなたは“王太子”じゃなくなる》

《あなたは“国のための器”になる》

《民の信仰を吸い上げる装置じゃない》

《民の怒りを受け止める装置》

彼の顔から血の気が引く。

優しさの仮面が、落ちかける。

でも落ちた瞬間、全国が見る。逃げ場がない。

《あなたは、ずっと言ってたよね》

《“国家のため”》

《じゃあ、あなたの身体と人生を、国家に差し出して》

黄金の檻が、きし、と音を立てた。

多数派の意思が、形になりたがっている。

処分はまだ確定していないのに、世界が先に「見たい」を始めてる。

《怖い?》

《いいよ。怖がって》

《首輪みたいに、恐怖で死ぬ仕組みは、あなたには付けない》

《その代わり――》

私は、一番最後のテロップだけ、落とす。

心拍が跳ねないよう、息を薄く、薄く。

《あなたは“生きたまま”、毎日、全国に配信される》

《心音字幕つきで》

カイルの瞳孔が、開く。

その瞬間、投票バーが、ぐっと動き出した。

そして画面の端に、最悪の警告が、勝手に点滅する。

【警告:投票確定まで 残り00:59】

【連動:地下扉開放→対象:リオン 処理】

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