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第四章 絢爛のスクールフェスタ
第273話 マリーの財力
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イグニスたちが去った後、改めてマリーの執事ジョスランの手によって蒸気車両の荷台が恭しく開かれた。
「わぁ、すごい……」
アルフェが感嘆の声を上げたのも無理はない。広々とした荷台には、店をまるごと持ってきたかのような空間が広がっていたのだ。
「さあ、みなさん好きな楽器をお選びくださいまし!」
荷台には、ギターをはじめとした様々な楽器が、所狭しと並べられている。ギターだけでなく、ライブハウスで使われていたようなスタンド型の拡声器やドラムセットまで揃っている。
「すごい……。ギターもベースもこんなにたくさん……」
「にゃはははっ! 店ごと持ってきたって感じだな!」
「ええ! せっかくですので、店ごと運んでもらいましたの。選んだ楽器は、もちろん差し上げますわ~!」
ファラの突っ込みは間違いではなかったらしく、マリーが自慢げに頷いた。店ごと運んできたとあって、楽器に半ば埋もれるようになっていた店主らしき男性がにこやかな笑顔を浮かべて前に出て来た。
「じゃあ、早速――」
「あっ! ちょっと待った!」
楽器が好きらしいファラが猫人族の尻尾を揺らしながら荷台に上がろうとするのを、メルアが鋭い声で止めた。
「もう、なんですのメルア? せっかく盛り上がってきたところでしたのに」
水を差されたと感じたのか、マリーが抗議する。この程度はいつものことらしく、メルアは別段気にしていない様子でマイペースに訊いた。
「バンド組むって言ったけど、うちら担当決めてないよね!?」
「そういえばそうね」
メルアに同意を求められ、エステアが頷く。さすがに担当を決めなければ楽器を選べないので、メルアの指摘はもっともだ。マリーは少し考えていたが、僕たちを見回して再び笑顔を見せた。
「ん~! では、それは私の一存で決めさせて頂きますわ~!」
ああ、なんだかそうなりそうな予感がしたんだが、間違いなかったようだ。まだ知り合って浅いが、少しずつマリーという人物がわかったきたのかもしれないな。
「まずはエステア! 文句なしにリードギターですわ! 私の独断で特注のギターを用意していますの!」
「それは楽しみね。ありがとう、マリー」
マリーの言動に慣れているエステアが嬉しそうに応じる。マリーは誇らしげに頷くと、次にアルフェを指差した。
「それからアルフェ! 貴方はボーカルですわ」
「えっ、私!?」
マリーの指命にアルフェが心から驚いたような声を出す。僕もボーカルはアルフェしかいないと思っていたけれど、当のアルフェは違ったらしい。
「びっくりするの遅いって、アルフェちゃんの美声の話、昨日したじゃん! あれから満場一致でボーカルはアルフェちゃんしかいないってなったんだよね~」
「でもワタシ、歌ってな――」
「氷炎雷撃の詠唱は、まさに魂の叫びでしたわ。あの声を出せる貴方なら、どんな歌も魂に響かせて人の心を揺さぶるに決まっていますわ」
ああ、そういえば武侠宴舞・カナルフォード杯をマリーも見ていたと話していたな。
「……ありがとうございます。ワタシ、頑張ります!」
そこまで言われてアルフェも漸くマリーの指名を受け入れたらしい。僕もアルフェの歌が大好きだから、折に触れてもっと好きだと伝えた方がいいのかもしれないな。
「じゃあ、うちは鍵盤! これでも子供の頃、竜堂のパイプオルガンを弾いてたし、ちょっと自信あるんだ」
「それは期待出来ますわね。では、あとはドラムとサブギター、ベースギターですが……。お三方、楽器の経験は如何ほどですの?」
一通りバンドとしての形を成してきたので、マリーの興味が僕たちに移る。
「あたしは一通り出来るけど、剣が二刀流だしドラムがいいな」
「確かに相性が良さそうですわね。反対する理由がありませんわ」
ファラの応えに納得しながら、マリーは僕とホムを交互に見比べた。
「僕たちは得意な楽器というものはないのだけれど――」
「それなら私がホムにギターを教えるわ。サブギターをお願い」
「かしこまりました」
エステアがホムに教えるというのなら、安心だ。このバンドで二人の仲が更に深まれば、良き仲間としてライバルとして研鑽を積めるだろう。
「では、消去法でリーフはベースギターですわね」
「まあ、原理はわかるしどうにかするよ」
「原理がわかるからどうにかなるっていうのが、ししょーらしいっ!」
メルアはそう僕を評したが、父がギターを弾いていたわけだし、母も歌が上手かった。そう考えると、僕のこの身体にも音楽の才能が引き継がれていることに期待したいところだ。思えば僕は前世の記憶を頼るばかりで、リーフとしてなにが出来るかまで考えたことがなかったな。これを機会にもっと色んなことに挑戦するのも悪くないのかもしれない。
「各種教材も用意してありますの。必要なものを必要なだけ選んでくださいまし」
バンドの各担当が決まったこともあり、マリーが意気揚々と告げる。その言葉に楽器店の店主らしき男性が、早速エステア用に特注したギターを恭しく運んできた。
「わぁ、すごい……」
アルフェが感嘆の声を上げたのも無理はない。広々とした荷台には、店をまるごと持ってきたかのような空間が広がっていたのだ。
「さあ、みなさん好きな楽器をお選びくださいまし!」
荷台には、ギターをはじめとした様々な楽器が、所狭しと並べられている。ギターだけでなく、ライブハウスで使われていたようなスタンド型の拡声器やドラムセットまで揃っている。
「すごい……。ギターもベースもこんなにたくさん……」
「にゃはははっ! 店ごと持ってきたって感じだな!」
「ええ! せっかくですので、店ごと運んでもらいましたの。選んだ楽器は、もちろん差し上げますわ~!」
ファラの突っ込みは間違いではなかったらしく、マリーが自慢げに頷いた。店ごと運んできたとあって、楽器に半ば埋もれるようになっていた店主らしき男性がにこやかな笑顔を浮かべて前に出て来た。
「じゃあ、早速――」
「あっ! ちょっと待った!」
楽器が好きらしいファラが猫人族の尻尾を揺らしながら荷台に上がろうとするのを、メルアが鋭い声で止めた。
「もう、なんですのメルア? せっかく盛り上がってきたところでしたのに」
水を差されたと感じたのか、マリーが抗議する。この程度はいつものことらしく、メルアは別段気にしていない様子でマイペースに訊いた。
「バンド組むって言ったけど、うちら担当決めてないよね!?」
「そういえばそうね」
メルアに同意を求められ、エステアが頷く。さすがに担当を決めなければ楽器を選べないので、メルアの指摘はもっともだ。マリーは少し考えていたが、僕たちを見回して再び笑顔を見せた。
「ん~! では、それは私の一存で決めさせて頂きますわ~!」
ああ、なんだかそうなりそうな予感がしたんだが、間違いなかったようだ。まだ知り合って浅いが、少しずつマリーという人物がわかったきたのかもしれないな。
「まずはエステア! 文句なしにリードギターですわ! 私の独断で特注のギターを用意していますの!」
「それは楽しみね。ありがとう、マリー」
マリーの言動に慣れているエステアが嬉しそうに応じる。マリーは誇らしげに頷くと、次にアルフェを指差した。
「それからアルフェ! 貴方はボーカルですわ」
「えっ、私!?」
マリーの指命にアルフェが心から驚いたような声を出す。僕もボーカルはアルフェしかいないと思っていたけれど、当のアルフェは違ったらしい。
「びっくりするの遅いって、アルフェちゃんの美声の話、昨日したじゃん! あれから満場一致でボーカルはアルフェちゃんしかいないってなったんだよね~」
「でもワタシ、歌ってな――」
「氷炎雷撃の詠唱は、まさに魂の叫びでしたわ。あの声を出せる貴方なら、どんな歌も魂に響かせて人の心を揺さぶるに決まっていますわ」
ああ、そういえば武侠宴舞・カナルフォード杯をマリーも見ていたと話していたな。
「……ありがとうございます。ワタシ、頑張ります!」
そこまで言われてアルフェも漸くマリーの指名を受け入れたらしい。僕もアルフェの歌が大好きだから、折に触れてもっと好きだと伝えた方がいいのかもしれないな。
「じゃあ、うちは鍵盤! これでも子供の頃、竜堂のパイプオルガンを弾いてたし、ちょっと自信あるんだ」
「それは期待出来ますわね。では、あとはドラムとサブギター、ベースギターですが……。お三方、楽器の経験は如何ほどですの?」
一通りバンドとしての形を成してきたので、マリーの興味が僕たちに移る。
「あたしは一通り出来るけど、剣が二刀流だしドラムがいいな」
「確かに相性が良さそうですわね。反対する理由がありませんわ」
ファラの応えに納得しながら、マリーは僕とホムを交互に見比べた。
「僕たちは得意な楽器というものはないのだけれど――」
「それなら私がホムにギターを教えるわ。サブギターをお願い」
「かしこまりました」
エステアがホムに教えるというのなら、安心だ。このバンドで二人の仲が更に深まれば、良き仲間としてライバルとして研鑽を積めるだろう。
「では、消去法でリーフはベースギターですわね」
「まあ、原理はわかるしどうにかするよ」
「原理がわかるからどうにかなるっていうのが、ししょーらしいっ!」
メルアはそう僕を評したが、父がギターを弾いていたわけだし、母も歌が上手かった。そう考えると、僕のこの身体にも音楽の才能が引き継がれていることに期待したいところだ。思えば僕は前世の記憶を頼るばかりで、リーフとしてなにが出来るかまで考えたことがなかったな。これを機会にもっと色んなことに挑戦するのも悪くないのかもしれない。
「各種教材も用意してありますの。必要なものを必要なだけ選んでくださいまし」
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