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第168話 余儀

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 そんなたわいも無い会話をしながら長閑な道中を歩き、仙花一味は「怪異の国」と化した不始末村の領域に足を踏み入れた。

「やっと人気(ひとけ)のありそう場所にたどり着いたな。今宵は野宿をせんで済みそうじゃわい」

 ここ二、三日、宿の取れぬ状況が続き、野宿を余儀なくされていた仙花がさも嬉しそうに呟いた。

 季節は梅雨時を目前とした過ごしやすい気候であるとはいえ、屋根も無い場所で一夜を過ごすことに仙花は多少なりとも不満があったのかも知れない。

 だがくノ一として鍛え抜かれたお銀の勘は、この地にて安らぎを得ることは難しいと訴えていた。

「仙花様のお気を悪くしては申し訳無いのですけれど、この地には途轍もない不穏さを感じます。この地にて宿を取るとするならば、もしかすれば安心して眠れぬかもしれませぬ」
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