刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

文字の大きさ
9 / 131

第1話 旅立ち ノ9

しおりを挟む
 そんな仙花に柔かな笑顔の光圀に話しかける。

「いやいや仙花。今宵の宴はこれにて御開きじゃ。周りを見てみい、み~んな朽ち果てて眠っておるわい」

 光圀に言われ、キョトンとして周りを見渡す仙花。

「ふむふむ、いつの間にやら皆倒れてしまっておるのう」

 話す二人の他は絹江が一人でせっせと後片付けに奔走しているだけで、あとは何も被らないまま壁にもたれたり、床に突っ伏して皆寝てしまっていた。
 起きていたはずの九兵衛も疲れ果て倒れたようである。

「仙花。眠いだろうが明日の話をせねばらならい。儂はお主に渡す代物をちょいと取って来る。それまでに寝る準備を済ませ隣の寝室で待っておれ。良いな?」

「あいわかった。だがじっさまぁ。出来れば急いでおくれぇ。何だか急に酒が回った気がする......」

「承知した」

 これ以上酒を呑めぬと悟った仙花に急激な眠気が訪れ、とろんとした目で年寄りを急かしたけれど、光圀はコクンと頷き足早に部屋をあとにした。

「最後の夜だというのにすまんのぉ~絹江ぇ。儂は手伝いたいのだが身体が重くて仕方ないぃ......」

 もはや歩くことすらかなわなくなったのか、床を這いずり脚をズルズルとひきながら絹江に謝辞?を言う仙花。

「良いんですよぉ。これが私めの仕事です。それに仙花様は今宵存分に楽しめた御様子。あとは光圀様とじっくりゆるりとお話しをしておくんなまし」

 絹江はそう言うと、囲炉裏に掛かる鍋を掴み台所へと去って行った。

「あやつはほんにできた奴よのう...」
 
 そう呟く仙花がようやく辿り着いた寝室の襖を開け、寝床へコロコロと遊ぶように転がる。

「も、もうだめじゃ。眠くて仕方ない。ま、瞼がお......」

 呟きを言い終わる前に瞼を閉じてしまい、すぴ~と一つの寝息をたてたその直後。

「こりゃ仙花!寝るでない。話があると言ったであろう!ほれ、酒も持って来たぞ。起きるが良い」

 光圀が仙花の紅い頬をパシパシと叩き起こそうとする。
 本格的に寝ついた彼女であれば起きなかったかもしれないが、幸いにして未だ眠りは浅く「酒」という言葉が効き目を覚ました。

「ん、んん~。じ、じっさまぁ。酒を一口呑ませてぇ」

「ええ~い。手の掛かる酔っ払いじゃのう」

 起きて直ぐに酒を要求する娘の口に酒の入ったお猪口をあてる光圀。

 言葉とは裏腹に刀姫を見る元水戸藩主の表情は仏の如く優しかった。

「うむ、ちょいと気がしっかりして来たぞ。じっさま。話とやらを聞こうではないか」

 お猪口一杯の酒が喉を通り、それだけで元気を取り戻した仙花が正座して光圀と向き合った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...