10 / 131
第1話 旅立ち ノ10
しおりを挟む
この寝室にある灯りは温かみは感じるが乏しい蝋燭一本の光のみ。無論、部屋全体を照らせる訳もなく、空間の半分程は薄い暗闇に包まれていた。
めんと向かい合う光圀の顔から笑みが消え、此処に来て仙花が初めて見るような真剣な表情になる。
かつてない光圀の雰囲気や挙動を察し、仙花は両手で襟元を整えグッと気を引き締めた。
「...まずは明日からの旅のことだが、馬などは使わず徒歩で、つまりは『膝栗毛(ひざくりげ)』によって旅をするのじゃ」
全国行脚の旅を徒歩でと途方も無いことを言われた仙花であったが特に同様もせずに返す。
「じっさま。儂は言われずとも始めからそのようにするつもりであったぞ。馬などに乗って旅すれば見落としてしまう物事も多かろうからな」
正面に座す娘の物言いに得心のいった表情をする光圀。
「天晴れ仙花。若いのに良い心がけじゃ。儂は立派な娘を持ったのじゃのう。よし、話を続けるぞ。お主の大事な大事な刀を此処へ持って来るのじゃ」
「刀を?」
「そうじゃお主が小さき頃より持っておるあの刀じゃ」
「....承知。只今取って来るぞ」
何故このような夜更けに刀を要求されたのか疑問に思う仙花だったけれど、光圀が意味も無く要求するような無駄なことはすまいと考え、暗い部屋の隅に置かれる刀掛けまで移動し刀を手に取って戻る。
「ほれ、言われた通り取って来たぞじっさま」
「うむ。取り敢えずそこへ座るのじゃ」
素直に元いた場所へ刀を膝に置き正座する仙花。
刀を手にして何故だか分からないが若干の高揚感が窺える。
「で、次はどうすれば良いのだ?」
「そう慌てるでない。では、ゆるりと刀を鞘から抜き刃をその目で確かめるのじゃ」
「刃を?」
「そう、刃をじゃ」
未だ意図が読めずに聞き直す仙花を諭すような口調で言い直す光圀。
仙花が左手で鞘を掴みゆっくりと丁寧に刀を抜く。
薄暗い部屋の中にあっても刀の刃は綺麗に磨かれており相当な斬れ味を想像させる。
「ほうほう、お主が日頃から手入れしているだけあって美しい刃をしておるのう」
「ハハハ、これの手入れだけは毎日欠かさずやっておるからのう♪」
光圀に刀を褒められた仙花は照れながらも嬉しそうに笑った。
「良かろう、もう十分じゃ。刀を鞘に戻せ」
言われた仙花の反応は今一であったが黙って刀を鞘に戻す。
「お主も知っておろうがその刀の柄には頭が無い。柄の空洞にこれをはめ込むのじゃ」
「これは.........」
光圀に渡された物は、鉄か石か区別がつかぬ物質で出来た黒く細い板であった。
めんと向かい合う光圀の顔から笑みが消え、此処に来て仙花が初めて見るような真剣な表情になる。
かつてない光圀の雰囲気や挙動を察し、仙花は両手で襟元を整えグッと気を引き締めた。
「...まずは明日からの旅のことだが、馬などは使わず徒歩で、つまりは『膝栗毛(ひざくりげ)』によって旅をするのじゃ」
全国行脚の旅を徒歩でと途方も無いことを言われた仙花であったが特に同様もせずに返す。
「じっさま。儂は言われずとも始めからそのようにするつもりであったぞ。馬などに乗って旅すれば見落としてしまう物事も多かろうからな」
正面に座す娘の物言いに得心のいった表情をする光圀。
「天晴れ仙花。若いのに良い心がけじゃ。儂は立派な娘を持ったのじゃのう。よし、話を続けるぞ。お主の大事な大事な刀を此処へ持って来るのじゃ」
「刀を?」
「そうじゃお主が小さき頃より持っておるあの刀じゃ」
「....承知。只今取って来るぞ」
何故このような夜更けに刀を要求されたのか疑問に思う仙花だったけれど、光圀が意味も無く要求するような無駄なことはすまいと考え、暗い部屋の隅に置かれる刀掛けまで移動し刀を手に取って戻る。
「ほれ、言われた通り取って来たぞじっさま」
「うむ。取り敢えずそこへ座るのじゃ」
素直に元いた場所へ刀を膝に置き正座する仙花。
刀を手にして何故だか分からないが若干の高揚感が窺える。
「で、次はどうすれば良いのだ?」
「そう慌てるでない。では、ゆるりと刀を鞘から抜き刃をその目で確かめるのじゃ」
「刃を?」
「そう、刃をじゃ」
未だ意図が読めずに聞き直す仙花を諭すような口調で言い直す光圀。
仙花が左手で鞘を掴みゆっくりと丁寧に刀を抜く。
薄暗い部屋の中にあっても刀の刃は綺麗に磨かれており相当な斬れ味を想像させる。
「ほうほう、お主が日頃から手入れしているだけあって美しい刃をしておるのう」
「ハハハ、これの手入れだけは毎日欠かさずやっておるからのう♪」
光圀に刀を褒められた仙花は照れながらも嬉しそうに笑った。
「良かろう、もう十分じゃ。刀を鞘に戻せ」
言われた仙花の反応は今一であったが黙って刀を鞘に戻す。
「お主も知っておろうがその刀の柄には頭が無い。柄の空洞にこれをはめ込むのじゃ」
「これは.........」
光圀に渡された物は、鉄か石か区別がつかぬ物質で出来た黒く細い板であった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる