刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

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第1話 旅立ち ノ22

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 暗い闇夜を越え、新しい朝の光を浴び目覚めることは、今も昔も変わらず何処か新鮮で気持ちの良いものである。
 寝不足や酒を呑み過ぎて二日酔いによる激しい頭痛に襲われる者は別として...

「スコォーン!」

「ふぁっ!?」

「旅立ちの朝ぞ!雄鶏の如くとっとと起きるが良い!」

 これが仙女になる素質を持つ少女の強みだろうか?
 昨晩あれだけ酒を呑み、夜更かしをして寝不足な筈の仙花がいつも通り早起きをし、手に持ったしゃもじで寝ている蓮左衞門の額を元気に叩く。
 因みに雄鶏が朝早く起きる理由についてだが、朝の光を浴びていの一番に目覚める訳ではなく、どうやら雄鶏が秘めている体内時計の作用によるものらしい。

「おっ!?今朝も早いでござるな仙花様。ん!?ぬおっ!?なんだ!?この頭の激しい痛みはぁっ!?」

 蓮左衞門は酒に酔い潰れた昨夜の記憶が吹き飛んでしまったようである。寝起き直後、二日酔いによる激しい頭痛に突然見舞われ、両手で頭を抱え床におでこをつけて悶えた。

 そんな蓮左衞門の姿を見て不憫に思った薬師の「うっかり九兵衛」が、持参していた木製の古びた薬箱から紙に包まれた薬を一つ取り出す。

「蓮さん。これを飲を飲んでくだせぇ。二日酔いなんぞたちどころに消え去りますぜ」

「なっ、なんと!?それを拙者に!?有り難く頂戴するでござるよ!」

 礼を言い薬を受け取った蓮左衞門が薬の紙を急いで開き、サラサラの白い粉末を一気に口の中に含む。

「うぅうっ!!??」

 蓮左衞門が今度は両手で口を塞ぐ苦しみ出した。

 水無を含まず薬を飲んだため、口内に留まった特別苦い薬がえも言われぬ地獄を与えたのである。

「今飲んだのはめっぽう貴重な薬。絶対に吐いては駄目でっせ蓮さん!急いで井戸の方へ行くんでさぁ!」

 九兵衛に急かされ蓮左衞門はドタバタしゃにむに部屋を出て行った。

 昨夜宴会に使われたこの部屋に残っているのは仙花に九兵衛、立ったまま延々と眠っている雪舟丸の三人。

「おっと~。雪舟丸も起こしてやらねばな」

 悪戯好きな仙花が悪戯っ子の顔になり、しゃもじを手にしたままそっと雪舟丸に近づく。
 声を掛けて起こすという選択肢は彼女の様子からして全く感じられない。

 手の届く範囲まで近づき頭を狙ってしゃもじを振る!

「起きろ!雪舟丸!」

 手加減を入れたしゃもじを振りはそれでも決して遅くはない!

「あらっ!?」

 眠ったままの雪舟丸が身体をヒョイと動かししゃもじは空を切った。

「すぴぃ~、すぴぃ~」

 静かな部屋に雪舟丸の寝息が響く。

「.....此奴。もしや巷で噂の『座頭市』ではあるまいな?...」
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