刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

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第3話 芥藻屑との戦 ノ19

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 光圀の名を出した途端に村人達の表情はおもしろいように一変した。
 水戸光圀の名はまごう事なく天下に轟いているようであり、蓮左衞門を始め、お銀に九兵衛もホッと胸を撫で下ろした。

 血相を変えて村長がいの一番に仙花の前に平伏す。

「無知な所為で存じ上げなかったとはいえ、手前共にご無礼があったこと、誠に、誠に申し訳ございませぬ。村を代表してこの通り深くお詫び申し上げますゆえ、どうか、どうか平にお許しくださいませぇ」

 誠意を表す為か、村長は額を地面に擦り付け土下座した。
 それに続いた村人達が何処からともなくわらわらと現れ同様に平伏し、今やざっと三十人ほどの集団となっている。

 人が己に頭を垂れる姿は幾度も経験して来た仙花であったが、初めて会う者達からここまでされたことに釈然としない違和感を覚えた。

「村長、皆の衆よ。面をあげてくれないか。儂はこんなものは求めておらぬよ。ただ、この村の様相とお主達の様子からして助けが必要だろうと思っておるだけだ。それにある意味ついでになるかも知れんしな....」

「はっ、ははぁ~。お畏れ大きお言葉。有り難く頂戴致します....さすれば、もうご存知かと思いますが手前はこの村の村長を勤めている橋屋郷六(はしやごうろく)と申しまして...」

 郷六がここまで言うと話しを続けて良いものかどうかと仙花の顔色を伺う。

「うむ、話しを続けよ」

 察した彼女は軽く頷いた。

「では...手前共は昨日までせっせと真面目に働き、村の者達は貧困のなか助け合い平和に暮らしておりました...今日もいつもと変わらぬ朝を迎え、村の者達が日常の仕事に精を出していたところ....奴が...悪党芥藻屑頭領の韋駄地源蔵(いだちげんぞう)が村を襲おうと手下を三十人ほどを引き連れやって来たのでございます...」

 状況を思い出しつつ話す郷六の声は僅かに震えていた。
 後ろに控える村人達の中には鳴き声は上げずとも、悲しみからかつとつとと涙を流す者もいるようである。

「奴らは視界に入った村人に片っ端から襲いかかりました。正義感の強い村の若い男達が鍬を手して立ち向かったのですが、韋駄地に一刀のもとに斬り捨てられてしまい、他の働き盛りだった男達は真っ先に斬って殺され、若い女子達は暴力を振るわれた後、犯されてしまいました...年少の子供達は殺されなかったものの縄で縛られ連れ去られた次第にございます...手前は村の長でありながら情けなくも怯えて物陰に隠れ、その悲惨な光景をただ、ただひたすら傍観することしか.......うっ、ううぅ......」
 
 気丈に話し続けていた郷六は遂に耐えられなくなり、両の掌で顔を覆い泣き崩れてしまった。
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