刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

文字の大きさ
120 / 131

第3話 芥藻屑との戦 ノ84

しおりを挟む
 周囲の人々から「神童」と称賛を受け、家族を始めとして誰もが将来を有望視していた少年、韋駄地源蔵は長い闘病生活を抜けたのち、名も知らぬ男に突如として襲われた命の窮地から逃れるべく、実態を持たぬ怪異であった「鬼」と躊躇せず命懸けの契約を結んでしまい、人間からすれば醜いともいえる姿に変わり果ててしまった。

 結果として彼の命は救われた訳だが、人としての道は閉ざされたと言わざるを得ない。

 と云っても、あの状況ならば源蔵少年には選択肢など無かったのだから仕方無し...

 第三者からの感想を述べるならばこんな具合だろうけれど、実際のところ韋駄地源蔵本人は至って後悔一つなく、今は不自由だった身体が以前にも増して動き、強靭になったことへの喜びの方が圧倒的に優っていた。

 だが、以前の優しく朗らかだった少年からは想像出来ない所業、目の前の大人を容易く殺してしまった彼の思考や精神は、この先時間をかけて深く暗い闇の中へ堕ちていくこととなる...

 韋駄地は己を殺せと支持した真犯人を探すべく、屍となった秤度の衣服を剥ぎ取って身につけると、このままでは目立ち過ぎて確実に騒動になるであろう般若の如き顔を隠すため、病床を共にした布団を程良い大きさに引き裂き、視界が辛うじて残るように頭と顔を覆う。

「まずは紗夜を探して家族の状況を聞き出すとするか。平穏無事であれば良いが...」

 なんと韋駄地は、我が身に災難が降りかかったばかりだというのに家族のことを案じた。この時点では幸いなことにまだ完全に人の心を失っていなかったのである。

 韋駄地がの居る小屋から屋敷まではさほど遠くはない。一寸(約12分)も歩けば着いてしまう距離であった。

 約2ヶ月半振りに外へ出る韋駄地源蔵。

 久しいということもあり少しばかり臆するのかと思いきや、そんな様子は些かも見せず秤度の入って来た戸を勢い良く開け外へ赴き、大きく息を吸ってまた大きく吐く。

「やはり外の空気は美味いものだなぁ。...しかし日差しが眩し過ぎる...」

 季節はすっかり秋になり、陽の光は弱くなりつつあったが彼には夏の日差しに感じるほど眩しく、そして暑くも感じていた。
 これが怪異と一体になった者の体質変化によるものだとは知らない...

 韋駄地は屋敷に着くまでに三人の人間とすれ違ったが、三人が三人とも彼の顔を布で覆う怪しい出立ちに目を向けたものである。

 韋駄地家は地元で有名な名家であったため、屋敷はほかの民家に比べ遥かに広く、明らかに上等な造りをしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...