刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

文字の大きさ
119 / 131

第3話 芥藻屑との戦 ノ83

しおりを挟む
 病によって弱りきった少年を相手に傲慢な態度であった男が、突如としてあり得ない姿に豹変した少年を前におののく。

「お、お、お前のその異様な姿は一体全体何だってんだい...まるで得体の知れねぇ化け物じゃねぇか!?」

 今更だけれど男の名は秤度斉次(はかりどせいじ)。ある人物に金で雇われ、源蔵少年を暗殺するよう命じられた者で単なる傭兵に過ぎない。
 彼は何処からどう見ても冷静ではなかったが、恐怖に震えながらの言い分は完全に的を得ていた。

 脂肪だけに止まらず、全身隈なく筋肉まで削ぎ落とされて痩せ細り、ミイラを連想させるような乾涸びた肌に、位置関係のおかしい異形の顔だった少年の様相は、今や人の想像を絶するものとなっていたのである。

 その姿はあからさまに人に非ず...

 少年の身の丈は成人男性の平均的高さまで一気に伸び、痩せ細っていた身体は隆々とした赤い筋肉を纏う強靭なものへと変貌していた。
 極めつけは人間に限らず、あらゆる固有生物を認識するための情報が詰まった顔の変化である。
 「奇形」という言葉こそ当て嵌まらなくなったものの、少年が病にかかる以前の面影を僅かに残しただけの般若の如き顔になっていた。

 風貌は変わり果ててしまったけれど、少年は心まで失ったわけではなく、以前の頭の冴えすら取り戻していた。

「ハ、ハハハ。これは凄いな...生まれ変わって別人になったような感覚がするぞ...ところであんた。さっきは渋っていたが、ひょっとして誰に雇われたのか話す気になったんじゃないか?」

 刀を折られガタガタと震える秤度を見るや、形勢逆転を確信した元少年の化け物が流暢に言葉を発した。

「い、言うから俺に絶対手を出すんじゃねぇぞ」

 もはや彼からは先程までの余裕ある態度は微塵も感じられない。
 化け物と化した少年がニヤリと笑う。

「ククク、実におもしろいなぁ。まるであんたも別人になったように見えるぞ...う~ん、気が変わった。やっぱりあんたは何も言わずこのままくたばるがいいさ。誰が雇ったのかは僕自身で調べることにするよ」

 化け物は言うや否や、秤度のこめかみの辺りを両手で「ガシッ!」固く挟んだ。

「ひっ!?ひぃいい!?やめろ!やめてくれーーーっ!!!」

 秤度が情け無くも悲鳴を上げた瞬間!

「バキッ!!」

 化け物の両手に挟まれた秤度の顔が、木の幹が折れるような音を立てて真横へ直角に折れ曲がった!

 こうして少年の命を奪いに訪れた筈の男は、本人の意図していた結果と真逆の運命を辿ることとなったのである...
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...