1 / 14
魔女と少年と黒猫
しおりを挟む
「32階層にメタル系のチュアプって云う体のプヨプヨしたモンスターが居るわ。そいつを倒しまくってレベルを上げれば暫く冒険が楽になるわよ」
「ありがとうございます!メタル系のチュアプですね。早速明日にでもパーティメンバーと狩りまくってみます!」
木のテーブルを挟み向かい合って椅子に座り、大柄な男性冒険者にアドバイスしたのは...
長い銀髪を首の後ろ辺りで赤いリボンで結び、色白の肌にキリッとした眉、クリントしたブルーの澄んだ瞳。13歳ほどの美しい少女に見える漆黒のドレスを着た魔女のマリム・アーティル。
冒険者よりもずっと若く見える少女が、歳の離れた冒険者にアドバイスする姿は滑稽であったけれど、事実を知る者からすれば至って普通の光景であった。
なぜなら、マリム・アーティルの実年齢は26歳、しかも彼女は元世界最強の魔女として有名であったからである。
このジオマールの町に居住する冒険者にとって、彼女のダンジョンに関するアドバイスは神の啓示と言って良いほど価値あるものとなっていた。
冒険者がマリムにお金を渡しお礼を言ってレンガ造りの壁の部屋を出て行く。
彼女はダンジョンに挑戦する冒険者の相談や指導、助言などを行い報酬を得るダンジョン系セラピストを生業としていた。
マリムが少女姿相応の若くかわいい声で廊下に待つ相談者を呼ぶ。
「次の人どうぞ!入って来ていいわよ!」
「す、すみません!し、失礼します!」
煌びやかな装飾品の掛かった木製のドアの向こう側から、少年の声が聴こえ、「ガチャッ!」と音を立てて部屋に入って来る。
「あ、あの、僕の名はカミュ・ローグハート、13歳です。さ、最強の勇者になりたくて相談に伺いました!」
カミュは生地が薄くボロボロで汚れた服を着ていた。ボサボサの金髪は肩と10cmほど離れたところまでの長さ。くっきりとした眉に、エメラルドグリーンの瞳、肌も汚れていたが洗えば白い肌であろう。着ている服に似つかわしくない顔立ちをしている。
マリムがカミュを一通り眺め訝し気な表情をして言う。
「君に前金の1万ギラは払えるのかしら?」
ダンジョン系セラピストの報酬システムは、まず前金で1万ギラを相談者が支払い、内容に寄っては追加報酬が発生するようになっていた。
「えっ!?い、一万ギラですか!?あの、これが僕の全財産なんですけど!?」
カミュは慌ててポケットからお金の入った布袋を取り出し、「ジャラジャラ」と音を立ててテーブルに広げ数えだした。
目を細め困ったような顔をして、マリムはそれを眺めている。
「せ、千五百七十二ギラあります!これでなんとか?…」
「ならないわ。悪いけど慈善事業はしてないの。この町のギルドへ相談に行くことを勧めるわ。ではお引き取りを」
マリムに冷たく突き放されたカミュは一気に元気が無くなりショボンとしてしまう。
「待っても無駄よ。一つの指針は示してあげたわ。もう行きなさい」
「わ、分かりました。すみませんでした…」
そう言ってカミュは重い足取りでとぼとぼと部屋を出て行った。
「...ふぅ~~~...」
少年の姿が見えなくなったあと、マリムは天井を見上げ大きな溜息をつき、何かを考えてやれやれといった表情をすると誰かを呼んだ。
「レコ~っ!ちょっと来なさい!」
するとドア下部の小さい勝手口が「パタッ」と開いて、真っ黒な猫が「にゃ~!」と鳴いて部屋に入って来る。
人間の言葉を話せるマリムのペット兼パートナーで黒猫のレコである。
「悪いんだけど、さっき出て行った少年の様子を観ててちょうだい。近づいたり話しては駄目よ!」
「あれ!?冷たく突き放したのに心配してるんだ?なんだかんだで結局マリムは優しいねぇ」
「もう、うるさいな!早く行きなさい!」
「はーい」
レコは返事をすると、部屋を出て少年を追いかけて行ったのだった。
「ありがとうございます!メタル系のチュアプですね。早速明日にでもパーティメンバーと狩りまくってみます!」
木のテーブルを挟み向かい合って椅子に座り、大柄な男性冒険者にアドバイスしたのは...
長い銀髪を首の後ろ辺りで赤いリボンで結び、色白の肌にキリッとした眉、クリントしたブルーの澄んだ瞳。13歳ほどの美しい少女に見える漆黒のドレスを着た魔女のマリム・アーティル。
冒険者よりもずっと若く見える少女が、歳の離れた冒険者にアドバイスする姿は滑稽であったけれど、事実を知る者からすれば至って普通の光景であった。
なぜなら、マリム・アーティルの実年齢は26歳、しかも彼女は元世界最強の魔女として有名であったからである。
このジオマールの町に居住する冒険者にとって、彼女のダンジョンに関するアドバイスは神の啓示と言って良いほど価値あるものとなっていた。
冒険者がマリムにお金を渡しお礼を言ってレンガ造りの壁の部屋を出て行く。
彼女はダンジョンに挑戦する冒険者の相談や指導、助言などを行い報酬を得るダンジョン系セラピストを生業としていた。
マリムが少女姿相応の若くかわいい声で廊下に待つ相談者を呼ぶ。
「次の人どうぞ!入って来ていいわよ!」
「す、すみません!し、失礼します!」
煌びやかな装飾品の掛かった木製のドアの向こう側から、少年の声が聴こえ、「ガチャッ!」と音を立てて部屋に入って来る。
「あ、あの、僕の名はカミュ・ローグハート、13歳です。さ、最強の勇者になりたくて相談に伺いました!」
カミュは生地が薄くボロボロで汚れた服を着ていた。ボサボサの金髪は肩と10cmほど離れたところまでの長さ。くっきりとした眉に、エメラルドグリーンの瞳、肌も汚れていたが洗えば白い肌であろう。着ている服に似つかわしくない顔立ちをしている。
マリムがカミュを一通り眺め訝し気な表情をして言う。
「君に前金の1万ギラは払えるのかしら?」
ダンジョン系セラピストの報酬システムは、まず前金で1万ギラを相談者が支払い、内容に寄っては追加報酬が発生するようになっていた。
「えっ!?い、一万ギラですか!?あの、これが僕の全財産なんですけど!?」
カミュは慌ててポケットからお金の入った布袋を取り出し、「ジャラジャラ」と音を立ててテーブルに広げ数えだした。
目を細め困ったような顔をして、マリムはそれを眺めている。
「せ、千五百七十二ギラあります!これでなんとか?…」
「ならないわ。悪いけど慈善事業はしてないの。この町のギルドへ相談に行くことを勧めるわ。ではお引き取りを」
マリムに冷たく突き放されたカミュは一気に元気が無くなりショボンとしてしまう。
「待っても無駄よ。一つの指針は示してあげたわ。もう行きなさい」
「わ、分かりました。すみませんでした…」
そう言ってカミュは重い足取りでとぼとぼと部屋を出て行った。
「...ふぅ~~~...」
少年の姿が見えなくなったあと、マリムは天井を見上げ大きな溜息をつき、何かを考えてやれやれといった表情をすると誰かを呼んだ。
「レコ~っ!ちょっと来なさい!」
するとドア下部の小さい勝手口が「パタッ」と開いて、真っ黒な猫が「にゃ~!」と鳴いて部屋に入って来る。
人間の言葉を話せるマリムのペット兼パートナーで黒猫のレコである。
「悪いんだけど、さっき出て行った少年の様子を観ててちょうだい。近づいたり話しては駄目よ!」
「あれ!?冷たく突き放したのに心配してるんだ?なんだかんだで結局マリムは優しいねぇ」
「もう、うるさいな!早く行きなさい!」
「はーい」
レコは返事をすると、部屋を出て少年を追いかけて行ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる