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魔女と少年と黒猫
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「32階層にメタル系のチュアプって云う体のプヨプヨしたモンスターが居るわ。そいつを倒しまくってレベルを上げれば暫く冒険が楽になるわよ」
「ありがとうございます!メタル系のチュアプですね。早速明日にでもパーティメンバーと狩りまくってみます!」
木のテーブルを挟み向かい合って椅子に座り、大柄な男性冒険者にアドバイスしたのは...
長い銀髪を首の後ろ辺りで赤いリボンで結び、色白の肌にキリッとした眉、クリントしたブルーの澄んだ瞳。13歳ほどの美しい少女に見える漆黒のドレスを着た魔女のマリム・アーティル。
冒険者よりもずっと若く見える少女が、歳の離れた冒険者にアドバイスする姿は滑稽であったけれど、事実を知る者からすれば至って普通の光景であった。
なぜなら、マリム・アーティルの実年齢は26歳、しかも彼女は元世界最強の魔女として有名であったからである。
このジオマールの町に居住する冒険者にとって、彼女のダンジョンに関するアドバイスは神の啓示と言って良いほど価値あるものとなっていた。
冒険者がマリムにお金を渡しお礼を言ってレンガ造りの壁の部屋を出て行く。
彼女はダンジョンに挑戦する冒険者の相談や指導、助言などを行い報酬を得るダンジョン系セラピストを生業としていた。
マリムが少女姿相応の若くかわいい声で廊下に待つ相談者を呼ぶ。
「次の人どうぞ!入って来ていいわよ!」
「す、すみません!し、失礼します!」
煌びやかな装飾品の掛かった木製のドアの向こう側から、少年の声が聴こえ、「ガチャッ!」と音を立てて部屋に入って来る。
「あ、あの、僕の名はカミュ・ローグハート、13歳です。さ、最強の勇者になりたくて相談に伺いました!」
カミュは生地が薄くボロボロで汚れた服を着ていた。ボサボサの金髪は肩と10cmほど離れたところまでの長さ。くっきりとした眉に、エメラルドグリーンの瞳、肌も汚れていたが洗えば白い肌であろう。着ている服に似つかわしくない顔立ちをしている。
マリムがカミュを一通り眺め訝し気な表情をして言う。
「君に前金の1万ギラは払えるのかしら?」
ダンジョン系セラピストの報酬システムは、まず前金で1万ギラを相談者が支払い、内容に寄っては追加報酬が発生するようになっていた。
「えっ!?い、一万ギラですか!?あの、これが僕の全財産なんですけど!?」
カミュは慌ててポケットからお金の入った布袋を取り出し、「ジャラジャラ」と音を立ててテーブルに広げ数えだした。
目を細め困ったような顔をして、マリムはそれを眺めている。
「せ、千五百七十二ギラあります!これでなんとか?…」
「ならないわ。悪いけど慈善事業はしてないの。この町のギルドへ相談に行くことを勧めるわ。ではお引き取りを」
マリムに冷たく突き放されたカミュは一気に元気が無くなりショボンとしてしまう。
「待っても無駄よ。一つの指針は示してあげたわ。もう行きなさい」
「わ、分かりました。すみませんでした…」
そう言ってカミュは重い足取りでとぼとぼと部屋を出て行った。
「...ふぅ~~~...」
少年の姿が見えなくなったあと、マリムは天井を見上げ大きな溜息をつき、何かを考えてやれやれといった表情をすると誰かを呼んだ。
「レコ~っ!ちょっと来なさい!」
するとドア下部の小さい勝手口が「パタッ」と開いて、真っ黒な猫が「にゃ~!」と鳴いて部屋に入って来る。
人間の言葉を話せるマリムのペット兼パートナーで黒猫のレコである。
「悪いんだけど、さっき出て行った少年の様子を観ててちょうだい。近づいたり話しては駄目よ!」
「あれ!?冷たく突き放したのに心配してるんだ?なんだかんだで結局マリムは優しいねぇ」
「もう、うるさいな!早く行きなさい!」
「はーい」
レコは返事をすると、部屋を出て少年を追いかけて行ったのだった。
「ありがとうございます!メタル系のチュアプですね。早速明日にでもパーティメンバーと狩りまくってみます!」
木のテーブルを挟み向かい合って椅子に座り、大柄な男性冒険者にアドバイスしたのは...
長い銀髪を首の後ろ辺りで赤いリボンで結び、色白の肌にキリッとした眉、クリントしたブルーの澄んだ瞳。13歳ほどの美しい少女に見える漆黒のドレスを着た魔女のマリム・アーティル。
冒険者よりもずっと若く見える少女が、歳の離れた冒険者にアドバイスする姿は滑稽であったけれど、事実を知る者からすれば至って普通の光景であった。
なぜなら、マリム・アーティルの実年齢は26歳、しかも彼女は元世界最強の魔女として有名であったからである。
このジオマールの町に居住する冒険者にとって、彼女のダンジョンに関するアドバイスは神の啓示と言って良いほど価値あるものとなっていた。
冒険者がマリムにお金を渡しお礼を言ってレンガ造りの壁の部屋を出て行く。
彼女はダンジョンに挑戦する冒険者の相談や指導、助言などを行い報酬を得るダンジョン系セラピストを生業としていた。
マリムが少女姿相応の若くかわいい声で廊下に待つ相談者を呼ぶ。
「次の人どうぞ!入って来ていいわよ!」
「す、すみません!し、失礼します!」
煌びやかな装飾品の掛かった木製のドアの向こう側から、少年の声が聴こえ、「ガチャッ!」と音を立てて部屋に入って来る。
「あ、あの、僕の名はカミュ・ローグハート、13歳です。さ、最強の勇者になりたくて相談に伺いました!」
カミュは生地が薄くボロボロで汚れた服を着ていた。ボサボサの金髪は肩と10cmほど離れたところまでの長さ。くっきりとした眉に、エメラルドグリーンの瞳、肌も汚れていたが洗えば白い肌であろう。着ている服に似つかわしくない顔立ちをしている。
マリムがカミュを一通り眺め訝し気な表情をして言う。
「君に前金の1万ギラは払えるのかしら?」
ダンジョン系セラピストの報酬システムは、まず前金で1万ギラを相談者が支払い、内容に寄っては追加報酬が発生するようになっていた。
「えっ!?い、一万ギラですか!?あの、これが僕の全財産なんですけど!?」
カミュは慌ててポケットからお金の入った布袋を取り出し、「ジャラジャラ」と音を立ててテーブルに広げ数えだした。
目を細め困ったような顔をして、マリムはそれを眺めている。
「せ、千五百七十二ギラあります!これでなんとか?…」
「ならないわ。悪いけど慈善事業はしてないの。この町のギルドへ相談に行くことを勧めるわ。ではお引き取りを」
マリムに冷たく突き放されたカミュは一気に元気が無くなりショボンとしてしまう。
「待っても無駄よ。一つの指針は示してあげたわ。もう行きなさい」
「わ、分かりました。すみませんでした…」
そう言ってカミュは重い足取りでとぼとぼと部屋を出て行った。
「...ふぅ~~~...」
少年の姿が見えなくなったあと、マリムは天井を見上げ大きな溜息をつき、何かを考えてやれやれといった表情をすると誰かを呼んだ。
「レコ~っ!ちょっと来なさい!」
するとドア下部の小さい勝手口が「パタッ」と開いて、真っ黒な猫が「にゃ~!」と鳴いて部屋に入って来る。
人間の言葉を話せるマリムのペット兼パートナーで黒猫のレコである。
「悪いんだけど、さっき出て行った少年の様子を観ててちょうだい。近づいたり話しては駄目よ!」
「あれ!?冷たく突き放したのに心配してるんだ?なんだかんだで結局マリムは優しいねぇ」
「もう、うるさいな!早く行きなさい!」
「はーい」
レコは返事をすると、部屋を出て少年を追いかけて行ったのだった。
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