やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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旅人馬のシーバさん

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 わたしは気になることがあると直ぐに質問してしまう。

「妖怪の皆さんは夜になると何をして過ごしてるんです?」

 そもそも妖怪が労働する世界が不思議なのだけれど、夜の行動も気になるところだ。

「そうだな…酒を呑んで騒いでいる者や動物達と遊ぶ者、中には勉強に励む者もいるぞ。因みにオレは静かな動物園を散歩するのが好きだ」

「散歩するのは気持ちが良さそうですね。それにしても、妖怪も人間と余り変わらない行動をするんだ...あっ!園内から外に出る妖怪とかいないんですか?」

「園長の許可が無ければ妖怪がこの動物園を勝手に出入りする事は出来ない。この動物園に居る妖怪達は最初に園長と誓約を結ぶんだが、その誓約書に動物園の出入りに関する条文があって縛られている」

 園長の結ぶ誓約って人間だけじゃなく妖怪にもあるのか…
 まぁ確かに、悪戯好きの妖怪達が何の誓約も無く生活していたら、このやしあか動物園の社会は成立しないのだろうけれど。

「シーバさんはここに来るまでは自由気ままに過ごしてたんですよね?自由が無くなって動物園から出て行きたいと思うこともあるような…」

「オレの場合、確かに外の世界では自由だったが暇を持て余していたからな。ここでは日々の仕事もあって、他の妖怪達との関わりも楽しめているし、外に出たいと思った事は今のところ一度もない。他の妖怪がどう思っているのかは知らんが、オレのような考えの者が多いと思うぞ」

「なるほどね…」

 シーバさんの言った事は少し理解できた。
 法律の無い土地の人間は別だけれど、現代社会の人間は生まれながらにして法治国家の縛りの中に居る。
 これを不自由と感じる人々は自由を求めて行動を起こすか我慢している筈。

 ここに居る妖怪達はその逆で縛りのある世界に自ら飛び込み、きっと充実感を得ているのだろう。

「シーバさん、ありがとうございました。話しをしてくれて嬉しかったです」

 シーバさんと会話をして昨日より仲良くなれたような気がする。

 まだ質問したかったけれど、掃除の途中だったのを思い出して馬小屋から牛小屋へ移動する。

 牛小屋に入ると牛女のトクさんと目が合い挨拶を交わした。

「お早うございます、トクさん」

「お早う。シーバとは上手く会話が出来たようだね。そのうちわたしの話しも聞いておくれよ」

「そんな、わたしで良ければ話しをするくらいいつでも構いませんから」

「そうかい、ありがとうよ」

 先日の朝はわたしの不注意で怒らせてしまい不安だったけれど、トクさんの言葉を聞いて正直ホッとしたし嬉しく想う。

 牛小屋の掃除は馬小屋とさほど変わりなく、スムーズに進める事が出来た。
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