やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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妖怪の文明社会

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 脱衣所に移動してロッカーを開け、白いバスタオルを取り出す。
 濡れた身体をそのバスタオルで拭き、リュックに入れてある替えの下着と服を急いで着た。

「えっと、髪を乾かしたいところだけど...あっ!あったあった」

 髪を乾かすスペースは脱衣所の一部に設けられていて、3人分の大きな鏡とドライヤーも置いてある。

「ブゥオー!」

 ドライヤーを手に取り電源を入れると温風が強く吹き出した。
 いつもであれば雑に乾かしてしまうのだけれど、今夜は歓迎会があるので念入りに髪を乾かす。

 持参したクシで髪をとかしながらふと想う。ここは妖怪達が作った社会なのに、文明は人間社会と何ら変わらない。まぁ、それだけ妖怪達の知能が高く努力した結果なのだろう…

「よし!準備万端!」

 脱衣所を出て受付の方に行くとコクリさんは寝ていて、待合スペースの椅子に座った久慈さんがスマホをポチポチしていた。

「久慈さん、良いお湯でした~。どのくらい待ってたんですか?」

 世間では男と女の平均入浴時間には差があり、やはり女性の方が若干長く掛かるらしい。

「ああ、5分くらいかな。大丈夫、そんなに待ってないよ」

 ポチポチする手を止めて久慈さんは笑顔でそう答えたその時、寝ていたコクリさんがパチッと目を開ける。

「久慈ッちぃ、あたしゃぁ仕事で歓迎会に参加できないんだぁ。料理長のナカには料理と酒を準備しておくよぉに言ってあるからぁ、悪いがそれを持って来ておくれでないかぁい?」

「そんなのお安い御用ですよコクリさん。じゃあ紗理っち、そろそろやしあか食堂に行こうか」

 久慈さんはコクリさんの頼みを嫌な顔一つせずに受けた。偉いなぁ。

 やしあか温泉を出て、来た時の林の中を二人で歩く。

「来る時に結界の場所を示す目印を説明しなかったけど、紗理っちは結界の場所は分かるかな?」

「たぶん魔力を使えば分かりますよ。試しにやってみますね」

 要領は妖怪の姿を見破るのと同じで良いだろう。わたしは目に魔力を集めて前方を凝視する。

 すると、何も無い空間に薄い紫色の壁が見えた。

「あ、見えました。わたしが結界を解いてみても良いですか」

「良いよ~。やってみて」

「やしあかあやかしあやしいな!」

「ヴン!」

 目に映っていた薄い紫色の壁が音と共に消えた。

「OKです!久慈さん通りましょう」

「やるねぇ紗理っち。これで一人でもやしあか温泉に行けるようになったね」

「予想以上に温泉は最高でしたよ。これから何度も利用させてもらおうと思います。それにリンさんにも誘われました」

「リンさんは面倒見が良いからね。紗里っち喜んでくれて僕も嬉しいよ」

 実際のところ、あの温泉を無料で使用できるなんて信じられないくらいだった。
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