やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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やしあか寮

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 コウさんの待つテーブルに戻ると、赤ワインのボトルを5本も抱きかかえて座っていた。

「お、来た来た来たぁ。紗理っちぃ、あたしの部屋に移動するわよ~」

 かなり陽気でご機嫌な感じのコウさん。

 移動する前に久慈さんに挨拶だけはしておこう。

「久慈さん、お疲れ様でした。今日はこれで失礼しますね」

「うん、お疲れ様。じゃあまた明日」

 そう返した久慈さんは、モン爺さんとトメさんの三人で会話が盛り上がっていた。

 わたしはコウさんの持つワインボトルを2本預かり、一緒に賑やかなやしあか食堂を出る。

 外にはまだ動物系の妖怪達が半数以上残ってお酒を呑んでおり、その中にはサトリさんの姿もあった。魔法の効果切れが少し心配だけれど…一応話してあるし、まあ大丈夫でしょ。

 月明かりでなんとか見える暗い林の中を抜けて、普通にマンションの様相を呈すやしあか寮に着いた。

 園内の敷地に在るためかオートロックにはなっていない。性別による境界線的な概念はやしあか寮にはなさそう。
 ここに来るまで鼻歌を歌い続けていたコウさんが話す。

「あたしの部屋は401号室、角部屋よ~フフ~ん良いでしょ~」

「は、はい。やっぱり部屋を選ぶなら角部屋ですよね。窓の数は多いし、お隣さんとのリスクも半減しますから」

「わかっているじゃない紗理っち~、そこのエレベーターに乗って行くわよ」

 やしあか寮はオートロックさえ備えていないものの、一般的なマンションと比べても綺麗で設備も整っているようだ。
 エレベーターを降りて廊下を真っ直ぐ突き当りまで歩くと401号室に着き、コウさんがバッグからカギを取り出しドアを開ける。

「さ、入ってぇ、ここがあたしの棲家だよ」

 部屋の中に入った瞬間、さわやかな良い香りが漂って来る。

「おじゃましま~す。うわぁ、凄く良い香りがしますね」

「あ、わかる?あたし最近アロマテラピーにハマっていて、アロマディフューザーをずっとつけているの。これは[ゼラニウム]っていうアロマオイルを使っているのよ」

「ふ、ふ~ん、そうなんですねぇ」

 コウさんが嬉しそうな顔をして丁寧に説明してくれたけれど、立て続けに横文字を使って話されるとなぜか脳が拒否反応を起こす。わたしの曾祖母は外人だというのに…

 玄関から靴を脱いで廊下に上がり、正面の木製のドアを抜けると、思いの外広いダイニングキッチンになっていた。

 ダイニングキッチンの中央には白い長方形のテーブルと4人分の椅子が置かれ、入って左側に冷蔵庫とキッチンが並んでいる。

 キッチンにガスコンロが無いのに気付いて訊いてみた。

「この寮って、もしかしてオール電化になってます?」

「そうよ~。しかも寮の屋上にはソーラーパネルがビッシリ設置してあって、停電があっても暫くは大丈夫なように大きな蓄電池まであるらしいわ」

 最先端のマンション並みじゃないか...やしあか寮恐るべし。
 
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