やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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ワインのおつまみ

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「そこの引戸を開ければ、あたしの個室兼寝室があるけれど、呑むのはここで良いわよね?」

「も、もちろんです。わたしはどこでも構いません」
 
 寝室で誤ってワインを溢ぼしでもしたら、きっと恐ろしいことになるだろう。
 まだダイニングキッチンの方が対処し易いし呑み易い。

 5本のワインボトルをテーブルに置き椅子に腰掛ける。
 コウさんが素手でワインボトルの栓をスポンスポンと立て続けに2本開けた。

「はい、紗理っち。お酌はセルフで呑みましょ」

「すみません、ありがとうございます」

「あら、あたしとした事がおつまみ持って来るのを忘れちゃったわねぇ。冷蔵庫に何かあったかしら」

 冷蔵庫を漁り出したので、その間にコウさんと自分のワインをグラスに注ぐ。

「あったあったプロセスチーズとスライスチーズ!でもこれだけじゃ全然足りないわね」

 コウさんはそう言うと、バッグからスマホを取り出し誰かに電話をかけた。

「あ、リン?ごめん!あたしおつまみを持って来るのを忘れちゃって...うん...そう...悪いわね...じゃあ待ってるわ」

 電話の終わったコウさんがニッコリと笑顔になり、冷蔵庫から取り出したチーズをテーブルに置きながら言う。

「今からリンが料理の残り物か何かを集めて持って来てくれるそうよ」

「さすがリンさん!それは助かりますね」

 お腹は結構膨れているけれど、やしあか食堂の料理ならまだまだいけちゃいそう。

「さて、リンが来る前に話しでもしながら呑むわよ~。紗理っちの方からあたしに質問したい事とかないかしら?」

 おっと、いきなり質問コーナーですか...たくさんあり過ぎて困ってしまう。でもやっぱりアレしか無いでしょ!アレを訊かずして何を訊くと言うのか!

「あの、ジンさんとの関係性とか訊いても良いですか?」

 しかし、これが大きな間違いだった。

 薄らと微笑を浮かべたコウさんは、ジンさんとの最初の出会いから話し始め、わたしが口を挟む隙が無いほど延々と話し続けた。
 話を聞いているとその重い話のオンパレードにわたしの心が疲弊してして行く...
 
 30分後くらいにリンさんがダンボール箱を持って部屋に入って来た。

「今晩は~!お待たせ~!カギが開いてたわよ。無用心ね~!」

「なっ!?タイミング悪いわね!リン!いま話がノリに乗っていたところだったのよ!」

 話を中断されたコウさんは不機嫌な顔になったけれど、わたしには天界から舞い降りた救いの女神にしか見えなかった。

「それはさておき、おつまみになりそうなモノを持って来たわよ」

 リンさんはダンボールに入っている料理やおつまみを取り出し、テーブルに次々と並べて行った。
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