54 / 93
魔女狩り
しおりを挟む
出勤三日目も昨日と同じように担当コーナーへ歩いて行き、掃除と給餌の準備に取り掛かる。
馬小屋の掃除をしていると、旅人馬のシーバさんが話し掛けて来た。
「紗理っち、昨夜の歓迎会は楽しめたのかい?」
「それはもう楽しめましたよ~。料理は美味しかったし、お酒もたくさん呑んで最高でした。シーバさんも来てたんですか?」
「そうか、良かったな。少し遅れて行ったが、オレもトクやラゴスと一緒に酒をガブ呑みしながら楽しんでいたよ」
シーバさんてトクさんにラゴスさんと仲が良いのか。意外な組み合わせ...
こうやって徐々に妖怪達の関係性が分かってくると、仕事もやり易くなるのかも知れない。
気になっていた河童の妙薬について、シーバさんが何か知っているか訊いてみると、池掃除担当の河童のワッパさんという妖怪が作っているという情報を入手出来た。そのうち会いに行ってみよう。
掃除と給餌を済ませたあと、サトリさんのことが気掛かりだったので顔を見に行った。
兎小屋を覗くと、サトリさんは他の兎に混ざってニンジンをカリカリと美味しそうに食べている。
人間とは不思議なものでほんの少しでも相手のことを理解すると、時として親近感が湧くものだ。最初に会った時はさほど可愛いと思わなかったサトリさんを、今のわたしは食べる姿が可愛いとすら思いながら眺めている。
ん?サトリさんの動きが急に止まりわたしに視点を合わせた。
「紗理っち、今、ボクのことを可愛いと思ったろ」
あっ!うっかり魔法障壁で防ぐのを忘れてしまった。
「べ、別に可愛いと思ったって良いじゃないですか!悪いことでもないだろうし...」
「て、照れてしまうから止めてくれないかな?」
「照れなくても良いですよ。ところで昨夜は大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だったよ。紗理っちが魔法の期限を教えてくれたお陰で、ギリギリまで遊んでいられたよ。本当に感謝してる。ありがとう」
これだ。悪戯っ子がたまに見せる素直な姿が「可愛い」と人を思わせるのだ。
小動物の妖怪であるサトリさんは特に...
「いいえ~、必要な時はいつでも言ってくださいね」
わたしはそう言ったあと久慈さんと合流し、事務所へ戻って行った。
歩きながら物想いに耽る。
やしあか動物園に来るまでのわたしは、外出する際に必ず魔力封じのブレスレットを着け、世間に魔女であることをひた隠しにして来た。
もちろんそれはSNSなどで言うところの[魔女狩り]とは違い、社会的な事実上の魔女狩りをされて普通の生活が出来なくなるのを恐れてのこと。
特異な能力は家の外で活かされず、希少な魔女の血はわたしにとってハンデでしかなかった。
だからこそ、やしあか動物園で魔法を使い役立てられる現状に、わたしは至上の喜びを感じている。
馬小屋の掃除をしていると、旅人馬のシーバさんが話し掛けて来た。
「紗理っち、昨夜の歓迎会は楽しめたのかい?」
「それはもう楽しめましたよ~。料理は美味しかったし、お酒もたくさん呑んで最高でした。シーバさんも来てたんですか?」
「そうか、良かったな。少し遅れて行ったが、オレもトクやラゴスと一緒に酒をガブ呑みしながら楽しんでいたよ」
シーバさんてトクさんにラゴスさんと仲が良いのか。意外な組み合わせ...
こうやって徐々に妖怪達の関係性が分かってくると、仕事もやり易くなるのかも知れない。
気になっていた河童の妙薬について、シーバさんが何か知っているか訊いてみると、池掃除担当の河童のワッパさんという妖怪が作っているという情報を入手出来た。そのうち会いに行ってみよう。
掃除と給餌を済ませたあと、サトリさんのことが気掛かりだったので顔を見に行った。
兎小屋を覗くと、サトリさんは他の兎に混ざってニンジンをカリカリと美味しそうに食べている。
人間とは不思議なものでほんの少しでも相手のことを理解すると、時として親近感が湧くものだ。最初に会った時はさほど可愛いと思わなかったサトリさんを、今のわたしは食べる姿が可愛いとすら思いながら眺めている。
ん?サトリさんの動きが急に止まりわたしに視点を合わせた。
「紗理っち、今、ボクのことを可愛いと思ったろ」
あっ!うっかり魔法障壁で防ぐのを忘れてしまった。
「べ、別に可愛いと思ったって良いじゃないですか!悪いことでもないだろうし...」
「て、照れてしまうから止めてくれないかな?」
「照れなくても良いですよ。ところで昨夜は大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だったよ。紗理っちが魔法の期限を教えてくれたお陰で、ギリギリまで遊んでいられたよ。本当に感謝してる。ありがとう」
これだ。悪戯っ子がたまに見せる素直な姿が「可愛い」と人を思わせるのだ。
小動物の妖怪であるサトリさんは特に...
「いいえ~、必要な時はいつでも言ってくださいね」
わたしはそう言ったあと久慈さんと合流し、事務所へ戻って行った。
歩きながら物想いに耽る。
やしあか動物園に来るまでのわたしは、外出する際に必ず魔力封じのブレスレットを着け、世間に魔女であることをひた隠しにして来た。
もちろんそれはSNSなどで言うところの[魔女狩り]とは違い、社会的な事実上の魔女狩りをされて普通の生活が出来なくなるのを恐れてのこと。
特異な能力は家の外で活かされず、希少な魔女の血はわたしにとってハンデでしかなかった。
だからこそ、やしあか動物園で魔法を使い役立てられる現状に、わたしは至上の喜びを感じている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる