やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

文字の大きさ
72 / 93

猫の名は

しおりを挟む
「お母さん!子猫!子猫がどこに居るか知らない!?」
 
 ダイニングキッチンに駆け込み直ぐに訊いた。
 
「何をそんなに慌てているのよ。ほら、お父さんを見てみなさい」
 
「ん!?」
 
 父を見ると、子猫を腕に包み込むように抱き哺乳瓶でミルクを与えていた。
 子猫は美味そうにグイグイとミルクを飲んでいる。
 
「良かった~、でもどうしてここに子猫が居るの?」
 
 子猫が自分で部屋のドアを開けてここまで来たとは到底思えない。
 
「あなたがベッドで熟睡しているあいだにドアの近くでこの子が鳴いているのが聴こえたから、お母さんがドアを開けてここに連れて来たのよ。お腹が減ってたみたいよこの子」
 
「そうだったんだ…全然気づかなかった。ありがとう」
 
「見てみろ、この子は飲み方も可愛なぁ」
 
 父は可愛くて仕方が無いのか、まるで我が子を見るような目をしてご満悦のよう。
 
「あのさ、猫を飼うのっていつ決まったんだよ。家族で知らなかったの僕だけでしょ」
 
「フフフ、真は元々猫好きだから驚かそうと思っていたのよ」
 
 少し不貞腐れていた弟は母に言われて今度は照れだした。
 
「そりゃそうだけどさ~…お父さん、それ僕にもやらせてよ」
 
「お、いいぞ。じゃあ子猫ちゃん、お兄ちゃんのところに行っておいで」
 
 父が弟に子猫と哺乳瓶を渡し、弟が嬉しそうにミルクを飲ませる。
 
「子猫ちゃんは大人気ね~。でもみんな、夕飯が冷める前に食べてね」
 
 テーブルに料理を並べ終わった母がそう言って、わたしと父は「いただきます」して料理を食べ始めた。弟も子猫がミルクを飲み終わり、子猫を床に降ろして食べ始める。
 
「サリ、この子の名前は決めてあるのかい?」
 
 わたしが口いっぱい肉じゃがを詰め込んでいる時に父が訊いてきた。
 
「んぅ、むぅだきめぃてぇぬい」
 
「そうか。まだ決まってないんだな」
 
 …良く分かったわね。お父さん。
 
「サリ、あなたのパートナーになるのだから、あなたが決めた方が良いわよ」
 
 母にそう言われて頭に浮かんだ名前があるけれど、安易に決めると後々後悔しちゃうかな…でも言うだけ言ってみるか。
 
「キイチゴのラズベリーから取って、『ラズ』って名前はどうかな?」
 
「あ、僕それ賛成。可愛いのと格好いいのが混ざった感じだし、二文字は呼びやすいしね」
 
 意外にも弟がいの一番に肯定してくれた。
 
「うん、良いんじゃないか」
 
「そうね、『ラズ』で良いんじゃない?」
 
 おお!一分と掛からず子猫の名前が決まってしまった。
 
「じゃあラズで決まりね!おいで~ラズ」
 
 わたしは箸を置いて、足に擦り寄って来ていた子猫を抱きあげて顔を覗く。
 
「今日から君の名はラズよ。では改めまして、ようこそ黒川家へラズ君♪」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...