やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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ちょっと良い話

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 ワッパさんが苛立ちを隠そうとずに話す。

「あの妙薬は全ての病気に効果を発揮する万能薬なんだぞ!二日酔いくらいで容易く呑むような薬じゃない!すごく貴重なのにーっ!」

 えーーーっ!?もしかして怒ってらっしゃる?こんな展開予想してなかったーっ!?一昨日天邪鬼のアマノさんに叱られたばかりなのにぃ…

「ワッパさんワッパさん!彼女は全然悪くありません!悪いのは僕なんですよ」

「なにっ!?」

 ふぅ、久慈さんがフォローしてくれたお陰で風向きが変わりそう。

「僕も妙薬を貰った時に二日酔いに効く薬だということしか聞かされてなかったんです」

「ん!?…久慈っちは妙薬を誰に貰ったんだい?」

「ああえっと………」

 久慈さんはその問いに答えず下を向き黙り込んでしまった。[河童の妙薬]をくれた相手を思ってのことだろう。

 そんな久慈さんをギョロっとした目で見ながら、表情が柔らかくなったようなワッパさんが口を開く。

「フン!どうせリンのやつなんだろ。俺っちが妙薬を渡したことのある相手は園長とリンくらいのもんだからな…おろっ!?…」

 今度はワッパさんが黙り込んでしまい、急にばつが悪くなったような様子。
 ここは突っ込んで訊いてみようか。

「リンさんのことで何か思い出したんですか?ワッパさん」

「い、いや、あれだ。リンに妙薬を渡した時のことを少し思いだしてね…」

 おやおやおやぁ。もしかしてワッパさん、都合の悪いことを思い出して自爆モードに入ってませんかぁ?ここはそれに乗じて更に突っ込んで訊いてみましょう。

「ぜ、是非その思い出したことを教えてください」

 俯いていた久慈さんも興味を示してワッパさんを注視していた。

 わたし達二人にジッと見られ、観念したのかゆっくりと話し出す。

「…何年か前に一度だけ、リンのやつと二人きりでザエモンのカクテルバーへ呑みに行ったことがあってね。その時のあいつはストレスが溜まっていたんだろうなぁ、酒を浴びるように呑んでいたよ。俺っちは控えるように言ったんだけど、あいつは変わらず酒を呑み続けてそのうち突然ぶっ倒れた。たぶん急性なんちゃらってやつだったんだろうね。俺っちは慌てて妙薬を取り出して、リンの口に無理やり詰め込んだんだ…」

 このあいだわたしとリンさんとコウさんの三人で呑んだばかり、ワッパさんの話しの内容は容易に想像することが出来た。

「それで真っ青だったリンの顔は元に戻って回復したんだけど、あいつのことが心配でその時に持っていた妙薬を全部渡したんだった…とどのつまり、妙薬を二日酔いに効く薬だと勘違いさせた原因は俺っちだったのかも...ごめん、悪かったね二人とも」

 なんだ、リンさんのためにした良い話じゃ無いですか。優しい河童なんだなぁ、ワッパさん。
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