やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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猫と話す条件

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「ご馳走様でしたって!お風呂に入って来るね!」

 急いで夕食を済ませ魔女秘伝の入浴剤入りのお風呂に浸かる。

「はぁ~、良い気持ち~生き返るわぁ」

 今日も色々あって思いのほか疲れていた身体が、暖かいお湯と魔女秘伝の入浴剤の効果で癒される。

「....................」

「ブクブクブク……………ぷぶはぁーーーっ!?」

 あまりの気持ち良さにいつの間にか寝てしまったらしい。危うく溺れるところだった。
 浴槽から出て軽くシャワーで身体を流し、用意していた寝間着に着替える。

 濡れた髪をドライヤーでサッと乾かしラズと遊ぶためにダイニングキッチンへ向かう。

「真!あなたのラズタイムは終わりよ。さぁわたしにその子と猫じゃらしを渡しなさい」

「あと5分だけ遊ばせてよ。やっとラズが猫じゃらしに慣れて来たとこなんだ」

 考えてみれば、弟が楽しそうな顔をしているのを最近は見ていなかった。5分くらい大目にみてあげよう。

「分かったわ。5分だけよ」

「やりぃ!あんがと姉ちゃん」

 弟が引き続きラズと楽しそうに遊ぶ様子を見ていると。

「サリ、お父さんも猫じゃらしを使ってラズと遊びたいんだけど…ダメかな?」

 父が照れ臭そうにしなが訊いてきた。
 うう、拒否したらいじけてしまいそう...

「もう、仕方が無いな~。じゃあ真のあとで遊んでいいわよ」

 そう言うと父は満足そうな笑顔になり、テレビの方に目を向けた。

 ラズと遊ぶ前にちょっと時間が余っちゃったなぁ。
 皿洗いを手伝おうとして母の方を見ると、既に皿洗いは終わりコーヒーを入れて飲もうとしている。

「あっ!わたしも飲む~」

「良いわよ~。入れてあげるからコーヒーカップを持って来て」

 食器棚からコーヒーカップを取り出し母に持って行くと、コーヒーメーカーで作られたコーヒーを注いでくれた。

 そのまま母の隣に座り一緒になってコーヒーを飲む。

「ねぇ、お母さん」

「なぁに?」

「映画なんかでさ。魔女と猫の話すシーンがあるじゃない。お母さんが猫を飼っていた時に話したことってあった?」

「…ん~、そうねぇ。1年くらいのあいだだけ話せていたわね」

「えっ!?本当に魔女と猫は会話が出来るんだ。わたしにもラズと話せる日が来るかなぁ?」

 わたしは今まで動物と会話をしたことなど一度も無かった。是非ともそんな経験をしてみたい!

「残念だけどサリの場合は難しいかも」

「なんで!?」

「あのね…パートナーの猫と話すには条件があるのよ。しかもその条件の中には年齢的なものもあって、サリの場合はとっくに過ぎちゃってるのよねぇ…」

 えーーーっ!?それじゃどうしようもないじゃない。

「それってどれくらいの年齢だったら大丈夫だったの?」

「確か、10歳から15歳くらいだったかしらねぇ」

 猫と話すことへの希望は、ものの3分とかからず絶望へと反転してしまった。
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