一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな

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第3話 鈴村未桜(すずむらみお)

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 とりたてて二度も云うことではないかもしれないが、僕は探偵を仕事にして生きている。それも「雇われ探偵」ではなく個人事業主としてだ。

 二度も探偵だと云った手前、さぞ探偵稼業を一所懸命に頑張っているものと想像される可能性はあるかもだけれど、実際はそうでもない。
 
 週に二日ほど稼働すればかなり働いた部類に入ってしまうほど頑張っていない。

 「じゃあ一つの案件の金が良いんだろ?」などと数少ない友人の一人が訊いてきたものだがそんなこともない。

 では何故僕は40時間という法定時間を遥かに下回る労働時間で生活が送れているのか?

 もちろん廃墟暮らしで食事にしても質素な生活を送っているということもあるが、それは大きな要因ではない。

 引っ張っても仕方がないので呆気なくバラしてしまうと答えは「副収入」だ。

 大学時代から趣味の廃墟探索を楽しんだついでにアップしている「廃墟」の動画と、「東大合格術」というタイトルを銘打った動画の二本柱で成り立つYouTubeの広告収入がそれである。

 「廃墟探索」の動画はゲームでいうところのFPSスタイル。
 「東大合格術」は白い仮面を被っているのでいずれにせよ顔出しはしていない。

 折角の美顔を世に知らしめる良い機会を捨てるのは勿体無いが、「探偵」を本業としているのだから「顔出し」はNGに決まっている。

 悔しいことに再生回数は「東大合格術」の方が若干上回っている。
 東大を首席で卒業した天才の僕が作る受験攻略動画、内容のレベルはもはや有料級なのだから当たり前といえば当たり前なのだが...

 それにまぁ僕の場合、本業よりもこっちの副収入の方が多いわけだから、本来なら「副」と付けるのはなんとなくおかしい気もするがそこは適当で。

 と、此処まで自己紹介的な話しをザッと雑にして来て僕のことが少しお分かりいただけたことであろう。

「コンコン!」

 事務所兼自宅のオンボロドアから軽快なノック音。

 時間といい叩く音といい誰がドアの外にいるのか見ずともハッキリと予測できる。

 丁度良い機会なので僕以外にも人物紹介をしておこう。

「どうぞ~」

 僕はノック音を発生させた人物にいつものように応えると、解錠されているオンボロドアのノブがガチャリと回り、すっかり聞き慣れた女性の声が一気に部屋を賑わす。

「いっちりーーーん!おっはよーーーっ!!助手のミオミオが只今到着したよーーーっ!!」

 半分以上、彼女の方で自己紹介は完了してしまったけれど、改めて云わせてもらうとしよう。

 彼女は探偵である僕の助手、鈴村未桜(すずむらみお)23歳さんです。
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