10 / 37
仲直り
しおりを挟む
家の近くで妹が行きそうな場所の見当はおおよそついていた。
僕がまだ小学生だった頃の話だが、たまに小桜と二人で遊びに行っていた小さな池である。
家から子供の足で徒歩15分、ちょっとした林を抜けた先にその池はあった。
到着したが辺りはいっそう暗くなり、
足元もほぼ見えないくらいになっていた。
密かに自然現象発生能力を意識して発動させる練習をして少しだけ上手くなっていた僕は、大嶽丸の力により掌から一つの火の玉を出現させ灯りの代わりにした。
パッと見える範囲で人影は見当たらい。
池の周囲の一部は土手になっていて、そこには昔造られた防空壕がある。
初めて防空壕を見つけた時、ワクワクとした僕と妹は秘密の部屋にしようと考え、家の庭に平積みされている廃棄寸前の平たい板を持ち込み簡単な床と壁を作ったものだった。
その防空壕へ真っ直ぐ向かう。
程なく着いて火の玉で中を照らすと横になって眠っている妹がいた。
取り敢えずホッと胸を撫でおろす。
傍には読みかけの心理学の本と、灯りの消えたアンティークなランプが置いてある。
小桜の顔を覗き込むと目尻に涙の跡が見えた。
きっと家を飛び出して泣きながら本を読読んでいるうちにいつの間にか眠ってしまったのだろう。
僕は小春の姿を見てやるせない気持ちになった。
肩にそっと手を当てて少し揺らして呼びかける。
「小桜、起きて。お母さんが心配しているよ」
「んん...」
眉間に皺を寄せて起きそうでなかなか起きない。
時間も無いし少し強めでいこう。
「起きろカボチャ頭!」
言葉に反応したのか、大きい声にびっくりしたのかは分からないが「ガバッ」と上体を上げて起きた。
瞼をゴシゴシと擦り、目を開いた妹は僕に気付く。
「あれ、キキ兄どうしたの?」
こちらの台詞だけれど優しく説明する。
「お母さんが小桜がいないって心配してたものだから探しに来たんだよ」
反応が悪い。寝起きでまだ頭がボーッとしているらしい。
「家でキキ兄と話をしたあとここに来て...本を読んでた...そっかもう夜になっちゃったんだね」
「やっと把握してくれたようだな。さ、家に帰ろう」
妹の手を握りゆっくり立ち上がらせた。
「引越しの件だけど、小桜は知っているとものだと思い込んでたんだ。今まで黙っててごめん」
寝ぼけた顔をシャキッとさせて妹が言う。
「明日になったらキキ兄がいなくなるってお母さんから聞いた時は驚いたけど、考えてもどうにもならないだろうしぃ...うん、時間の無駄だからもう良いよ~許してあげるね」
「時間の無駄」という言葉に引っ掛かったけれど、流石は僕の自慢の妹、頭の切り替えも早い。
仲直りをした僕らは、手を繋いで夜道を歩き家へ帰った。
僕がまだ小学生だった頃の話だが、たまに小桜と二人で遊びに行っていた小さな池である。
家から子供の足で徒歩15分、ちょっとした林を抜けた先にその池はあった。
到着したが辺りはいっそう暗くなり、
足元もほぼ見えないくらいになっていた。
密かに自然現象発生能力を意識して発動させる練習をして少しだけ上手くなっていた僕は、大嶽丸の力により掌から一つの火の玉を出現させ灯りの代わりにした。
パッと見える範囲で人影は見当たらい。
池の周囲の一部は土手になっていて、そこには昔造られた防空壕がある。
初めて防空壕を見つけた時、ワクワクとした僕と妹は秘密の部屋にしようと考え、家の庭に平積みされている廃棄寸前の平たい板を持ち込み簡単な床と壁を作ったものだった。
その防空壕へ真っ直ぐ向かう。
程なく着いて火の玉で中を照らすと横になって眠っている妹がいた。
取り敢えずホッと胸を撫でおろす。
傍には読みかけの心理学の本と、灯りの消えたアンティークなランプが置いてある。
小桜の顔を覗き込むと目尻に涙の跡が見えた。
きっと家を飛び出して泣きながら本を読読んでいるうちにいつの間にか眠ってしまったのだろう。
僕は小春の姿を見てやるせない気持ちになった。
肩にそっと手を当てて少し揺らして呼びかける。
「小桜、起きて。お母さんが心配しているよ」
「んん...」
眉間に皺を寄せて起きそうでなかなか起きない。
時間も無いし少し強めでいこう。
「起きろカボチャ頭!」
言葉に反応したのか、大きい声にびっくりしたのかは分からないが「ガバッ」と上体を上げて起きた。
瞼をゴシゴシと擦り、目を開いた妹は僕に気付く。
「あれ、キキ兄どうしたの?」
こちらの台詞だけれど優しく説明する。
「お母さんが小桜がいないって心配してたものだから探しに来たんだよ」
反応が悪い。寝起きでまだ頭がボーッとしているらしい。
「家でキキ兄と話をしたあとここに来て...本を読んでた...そっかもう夜になっちゃったんだね」
「やっと把握してくれたようだな。さ、家に帰ろう」
妹の手を握りゆっくり立ち上がらせた。
「引越しの件だけど、小桜は知っているとものだと思い込んでたんだ。今まで黙っててごめん」
寝ぼけた顔をシャキッとさせて妹が言う。
「明日になったらキキ兄がいなくなるってお母さんから聞いた時は驚いたけど、考えてもどうにもならないだろうしぃ...うん、時間の無駄だからもう良いよ~許してあげるね」
「時間の無駄」という言葉に引っ掛かったけれど、流石は僕の自慢の妹、頭の切り替えも早い。
仲直りをした僕らは、手を繋いで夜道を歩き家へ帰った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる