天才にして天災の僕は時に旅人 第一部

流川おるたな

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困惑

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 謎の生物を追いかけていると水面まで出てしまった。
 水面を360度見回したがそれらしい生き物は探し切れずにがっかりする。

「見失ってしまったか...気になるなあ。あれは何だったんだろう?」

 僕は諦めて一旦岸に戻った。
 岸に上がって様子を見ようと二人の元に歩いて行くと。

「キキー!こっちに来てーっ!」

 芹奈が緊張を帯びた声で僕を呼んでいる。
 全速力で声のする方へ向かった。
 二人の居る場所まで着き顔を見ると、怖いモノでも見たのかまっ青になっている。

「二人とも顔が青いぞ。幽霊でも見たのか?」

 ここは海水浴に持ってこいの場所なのだけれど、今更ながら自分達の他には人が全く居ない事に気付いた。

「乙葉さんが最初に気付いたんだけど、二人ではしゃいでいたら岩陰に人の気配を感じたらしくて、わたしがそこを見たら...」

「見たら?」

「白い顔が見えちゃったのよ。でもすぐに居なくなって...わたし幽霊は苦手なのよね...」

 芹奈の身体がブルブル震えている。
 こいつにこんな弱点があったなんて、いつか役立たせてもらおう。

「でも幽霊って言うけど、確信がある訳じゃないんだろ?」

「か、確信は無いけど、ここって他に人がいないじゃない」

 改めて周りを見渡しても確かに人の気配は全く感じない。

「乙葉も見たのか?」

「ううん、芹奈さんが教えてくれた時にはもう何も見えなかったから」

「そうか...その場所は何処だ?僕が行って見てくるよ」

「た、たまには男らしいことも言うじゃない。あっちの岩場よ」

 僕は芹奈の指差した岩場に行ってみる事にした。
 
 岩場に上がり周りを見渡すがやはり誰もいない。

「誰かいませんか~?いたら返事をお願いします!」

 呼び掛けに応じる声は聞こえなかったのだが...

「ザブン!」

 何かが海に落ちる音が聴こえた。
 音のした方へ急いで向かい海を見ると、僕がさっき追いかけていた謎の生物の形に似た陰影が動いている。

「今度は逃がさないよ!っと」

 大嶽丸の力で陰影のある海中に渦を起こす。
 謎の生物は狙い通り渦に巻き込まれて真っ直ぐに泳げなくなった。
 その渦を海面まで移動させ、今度は竜巻を起こして移し、謎の生物を岩場近くの芝生のある平地まで運ぶ。
 竜巻を消し去ると姿がハッキリと見えたのだが、僕は驚かずにはいられなかった。
「に、人魚!?」

 そう、あの伝説上の生物である人魚。
 上半身は若くて美しい人間だが、下半身は尾ヒレになっている。
 僕は困惑しながら質問した。

「あ、あの~失礼かと存じますが人魚さんですか?」
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