100 / 113
ノ100 洗脳と心操
しおりを挟む
城太郎が握っていた右拳を目の前で開くいた掌には、まるで蛍のように光を放つ小さな虫が動かずじっとしたまま乗っていた。
霊蟲の大きさは蛍とほぼほぼ変わらないけれど、放つ光は青白く、霊蟲本体そのものもす青白く透けており、その姿は幻想的で美しい飾り物とすら云えたかも知れない。
霊蟲を一目だけ確認した城太郎は拳をもう一度握って身を屈め、空いている左手を寝ている真如の頬に寄せ、閉じた口を無理矢理開かせた。
「っ!?」
熟睡中に突如として感じた違和感に真如の脳が反射的に反応して目が開き、その目の映った城太郎の怪しい表情に彼女は驚き何かを言おうとするが声にならない。
「愚かな仙女だ...まぁ不運だったと諦めな」
城太郎の手によって強引に開られた真如の口に、彼は右手の指で掴んだ霊蟲を放り込み喉の奥へと押し込み、彼女が吐き出さないよう今度は左手で口を塞ぐ。
「んぐぅぅぅ...........」
暫くのあいだ真如は城太郎の手に抗おうともがいたが、怪力を誇る彼女の上をいく城太郎の力を跳ね除けることは叶わず、とろんとした気力を感じない目付きに変わり、身体を動かし抗うことをやめてしまった。
「ほう...効果的面だったようだな。やはり父上より授かった霊蟲に間違いはなかった...」
亜孔雀(城太郎)の父であり魔王でもある羅賦麻が育て上げ、息子に渡したこの霊蟲の能力。それはズバリ「洗脳」と「心操」であった。
真如の喉に無理矢理押し込まれた霊蟲は、人の体内において食道を通らず、なんと血管を流れる血液に溶け込み脳へと達し、大きく分けて「大脳」「小脳」「脳幹」と呼ばれる部位のうち、主に思考や判断し行動する機能を司る「前頭葉」、主に知覚や感覚を司る「頭頂葉」、視覚を司る「後頭葉」、聴覚や記憶を司る「側頭葉」の4つの領域がある大脳を支配してしまうのである。
人の脳を支配した霊蟲をさらに操れる者は育成者となる。
しかし今回の場合、その育成者は亜孔雀ではなく羅賦麻であり、仕掛けたは良いが結局真如を操れることは不可能ではないか?などという疑問が浮かぶかも知れないけれど、そこは魔王のくせに抜け目のない羅賦麻が、霊蟲が育成者(所有者)を亜孔雀だと認識(反応)するよう手を加えていたのである。
体格が良く、魔王という魔界において頂点に位置する羅賦麻が蟲を育てる光景は想像し難く、ある意味滑稽で笑えてしまうのだが...
「洗脳は無事に完了した。真如よ、明日はたっぷり働いてもらうぞ。今夜は身体を休めておくがいい」
「はい...」
脳を支配され人格を失ってしまった真如は、無表情のまま無機質な返事をして眠りについたのだった。
霊蟲の大きさは蛍とほぼほぼ変わらないけれど、放つ光は青白く、霊蟲本体そのものもす青白く透けており、その姿は幻想的で美しい飾り物とすら云えたかも知れない。
霊蟲を一目だけ確認した城太郎は拳をもう一度握って身を屈め、空いている左手を寝ている真如の頬に寄せ、閉じた口を無理矢理開かせた。
「っ!?」
熟睡中に突如として感じた違和感に真如の脳が反射的に反応して目が開き、その目の映った城太郎の怪しい表情に彼女は驚き何かを言おうとするが声にならない。
「愚かな仙女だ...まぁ不運だったと諦めな」
城太郎の手によって強引に開られた真如の口に、彼は右手の指で掴んだ霊蟲を放り込み喉の奥へと押し込み、彼女が吐き出さないよう今度は左手で口を塞ぐ。
「んぐぅぅぅ...........」
暫くのあいだ真如は城太郎の手に抗おうともがいたが、怪力を誇る彼女の上をいく城太郎の力を跳ね除けることは叶わず、とろんとした気力を感じない目付きに変わり、身体を動かし抗うことをやめてしまった。
「ほう...効果的面だったようだな。やはり父上より授かった霊蟲に間違いはなかった...」
亜孔雀(城太郎)の父であり魔王でもある羅賦麻が育て上げ、息子に渡したこの霊蟲の能力。それはズバリ「洗脳」と「心操」であった。
真如の喉に無理矢理押し込まれた霊蟲は、人の体内において食道を通らず、なんと血管を流れる血液に溶け込み脳へと達し、大きく分けて「大脳」「小脳」「脳幹」と呼ばれる部位のうち、主に思考や判断し行動する機能を司る「前頭葉」、主に知覚や感覚を司る「頭頂葉」、視覚を司る「後頭葉」、聴覚や記憶を司る「側頭葉」の4つの領域がある大脳を支配してしまうのである。
人の脳を支配した霊蟲をさらに操れる者は育成者となる。
しかし今回の場合、その育成者は亜孔雀ではなく羅賦麻であり、仕掛けたは良いが結局真如を操れることは不可能ではないか?などという疑問が浮かぶかも知れないけれど、そこは魔王のくせに抜け目のない羅賦麻が、霊蟲が育成者(所有者)を亜孔雀だと認識(反応)するよう手を加えていたのである。
体格が良く、魔王という魔界において頂点に位置する羅賦麻が蟲を育てる光景は想像し難く、ある意味滑稽で笑えてしまうのだが...
「洗脳は無事に完了した。真如よ、明日はたっぷり働いてもらうぞ。今夜は身体を休めておくがいい」
「はい...」
脳を支配され人格を失ってしまった真如は、無表情のまま無機質な返事をして眠りについたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる