刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編

流川おるたな

文字の大きさ
101 / 113

ノ101 英雄

しおりを挟む
 魔界三大魔王の一人である羅賦麻が、リスクが高いことを承知の上で息子の亜孔雀を仙人界へ忍ばせた狙いとは一体何なのか?
 それはこの世に一つしか存在しない「退魔の鎧」を奪取することであった。

 退魔の鎧とはその名の通り、魔力を退ける特殊な仙力が凝縮された鎧であり、遥か昔、仙人界への侵略を試みた魔界の者達との大戦において、大戦を終結させるほどの決定的な力を誇っていた仙人界の英雄、琰季絶六法(えんきぜつろっぽう)が戦いの最中に身につけていた謂わば伝説の鎧なのである。

 三大魔王がそれぞれ支配する国の戦力差はさほど無く、かなり拮抗した戦力であるが故に各国は隣国へ攻めいることを踏み留まっている状態であり、日々魔王達は自国の戦力アップに勤しんでいた。

 つまり魔王羅賦麻は、自国の戦力アップをしようと模索する中で仙人界に存在する退魔の鎧に目をつけていたのである。手に入れたとして装備可能なのかどうかは別として...

 ところで、不要かもしれないが敢えて付け加えるならば、退魔の鎧の所有者であり英雄であった琰季絶六法は、大戦終結後、鎧を脱ぎ捨て仙人界から姿を消していた。
 嘘か誠か仙人界に伝わるその理由は、大戦の折に命を落とした仙王の代わりになって欲しいと周囲から懇願され、そういった地位や名誉などに興味の無かった六法はひたすら拒絶を繰り返し、執拗な懇願に嫌気のさした英雄は仙人界を出て行ってしまったらしい。

 間違いなく云えるのは、紀元前より長きに渡って存在する仙人界において、歴代最強であった英雄の琰季絶六法は、仙人界の何処にも存在しないのである。

 だが六法の身につけていた退魔の鎧は、現在の仙王の暮らす啼鳥園という場所へ確実に存在し保管されている。

 保管といっても厳重な守備の下に保護されているわけでもなく、広い啼鳥園の片隅にある仙王大社という建造物の大部屋に、武士の鎧を飾るが如くお粗末な格好で飾られていた。

 そして信じられないことに、純和風で煌びやかな大部屋に飾られる退魔の鎧の真前には、亜孔雀の手によって自我を失っている聖天座真如が立っていた。

 もちろん真如の意思で此処に居るわけもなく、亜孔雀が霊蟲の能力を使い退魔の鎧を盗むよう仕向けていたのである。

 確かに仙人界は平和ボケするほど平和であったが、仙人界の頂点である仙王の暮らすこの大社には仙王を警護する者が十人ほど存在している。
 警護する者達は数こそ少ないものの、仙人界でもかなりの上位にランクする精鋭が配備されていた。

 では真如が如何にして精鋭達の監視を掻い潜り、大社のほぼ中央に位置する大部屋まで侵入出来たのであろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

処理中です...