夢中の少女 第一章

流川おるたな

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手掛かり

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「では、お話を詳しく教えてください」

 ベテラン警官が事情を尋ね、若い警官が手帳を取り出しメモを取る。

 まずは父から一日の行動を説明した。

 今朝いつものように起きると、外に雪が降り積もってるのを見て畑が心配になり、「今日は外に出なくていいから家のことをやってくれ」と母に言い、おにぎりと水筒を持ち、早朝から夕方まで外に出ていたということだった。

「外に出ているあいだは一度も奥さんと連絡は取らなかったんですか?」

「...はい。余りそういう習慣も無かったですし...」

「そうですか...良ければ奥さんの携帯などがあったら見せてもらえますか?」

「あっ!?トイレに置きっぱなしでした。今取ってきます」

 父が母の携帯を取りに行こうと立ち上がると、ベテラン警官が慌ててそれを止める。

「ちょっと待ってください和久井さん。奥さんは携帯をトイレに置きっぱなしで居なくなったんですね?」

「...そうですけど」

「私達も同行します。トイレに行ったら一切の物に触れないでください」

「...はい」

 ベテラン警官と若い警官も立ち上がり、僕もつられるようにトイレへ付いて行った。

 灯りをつけて警官の二人が廊下からトイレを見渡す。

「この窓は和久井さんが開けたんですか?」

 トイレの中は最初に父と見た時のまま、携帯は同じ場所にあり窓も開けっ放しだった。
 
「いえ、妻の携帯に電話を掛けたらトイレから呼び出し音が聴こえて、中に入ったら開いてたんです」

「奥さんですが、普段からトイレを使用する時は窓を開けたりする事は?」

「...夏ならともかく、冬に窓を開けるのはトイレ掃除をする時くらいだと思います。もちろん妻の習慣を全部知っている訳では無いですが...」

「ハハハ、そうですよね。変な質問をしてすみません。冷たい風が入って来るでしょうから閉めますね」

 ベテラン警官が白い手袋を着け窓を閉めて鍵を掛け、棚の上の携帯(スマホ)に気付く。

「これですね...」

 慎重にゆっくり腕を伸ばし、ベテラン警官が母の携帯を手に取った。

「電話とメールを確認しても?」

「...どうぞ、調べてください」

 ベテラン警官が黙って若い警官に携帯を渡し、若い警官が携帯を操作してベテラン警官がそれを覗く。

 二人で五分ほど確認していたが、表情は何一つ変わらなかった。

「もうちょっと調べないと何とも言えませんが、今のところ携帯からは手掛かりになりそうな情報は見つかりませんね」

「...そうですか」

 父の顔は暗い。

 僕は母の携帯を他人が見ていることに抵抗感がり、少なからず嫌な気持ちになっていた。
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