夢中の少女 第一章

流川おるたな

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何も無い

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 居間に戻り今度は僕への質問が始まった。
 ベテラン警官は強面な顔だったけれど、小学生の僕に気を使ったのか、無理やり優しい顔をしようとして頬の辺りがピクピク動いている。

「凪君は今日は学校があったんだよね?」

 例年通りなら昨日が終業式だったのだが、学校側の事情で一日遅れになり、しかも下校時間がいつもと同じくらいになっていた。

「はい。学校の都合とかで今日が終業式でした」

「学校に行く前の話だけど、お母さんに何か様子は無かったかい?」

 今朝の母は...いつも通り「凪~、朝よ起きなさい」と言って僕を起こし、いつも通り居間に朝食を運んでくれて、いつも通り僕の支度を手伝い見送ってくれた。

「特に何も変わったところは無かったと思います...」

「...そうか...じゃあ夕方家に帰った時に変わったことは無かったかな?」

 学校からの帰り道は、雪が積もっている所為で普段より時間がかかってしまった。
 出入口の戸は常に閉まっているけど、こんな山奥には人も来ないという理由から日中は鍵が掛かっていることが無く、家に入るために鍵を開けるという行為を僕はしないし、今日の夕方も同じように閉まっていたはず...
 
 いつも母は父より早く仕事から帰り、僕が学校から帰る頃には家に居てくれた。

「家に帰っ時に母さんが居なかったこと以外は何も変わり無かったです」

「...そっか、ありがとう凪君...和久井さん、ちょっと席を外させてもらいます」

 それで僕への質問が終わり二人の警官が居間から出て行く。

 待っているあいだ僕と父はずっと黙ったままだった。

 程なく警官が居間に戻る。

「和久井さん、念のため家の中を見せてもらって良いですか?」

「もちろん構いませんよ。ご案内します」

 それから警官の二人と父は一緒になって家の中を見て回った。
 僕は居間に一人残り、こたつから頭だけを外に出して寝転ぶ。
 
 こたつの暖さが気持ち良く、頭と身体の疲労感から睡魔に襲われ、僕はいつの間にか寝てしまった...

 暫くして襖が開き、廊下の冷たい風が頬に当たって目を覚ます。

 三人がこたつには入らず立ったまま話をしている。

「和久井さん、捜索願いは出されますか?今夜はもう遅いし天候も悪い。捜索が開始されるとすれば明日以降になりますが...」

 父が少し考えて答える。

「分かりました。明日になってからまた考えようと思います。一晩経てば妻が帰って来るかも知れませんので...」

「もし、何かあればいつでも警察の方に連絡をください」

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」

 こうして二人の警官は家の庭に駐めていたパトカーに乗り込み、雪の降る山道を帰って行ったのだった。
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