天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(上)

第十話

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 本殿の方からはだいぶ離れたこの場所に一軒の家が現れた。
 見たところ和風建築の普通の住宅に見える。

「ここは………?」

「普通に俺が住んでる家」

 神社が実家と言うことで神社の敷地内に居住地がある。
 とは言えここは一般人は立ち入り禁止区域。
 しかも一般人に視えないように結界で隠してある。

「あんま人をウチに入れんのは好きじゃねぇけど、仕方ねぇ」

「…………」

 だったら招かなければいいのにと利音は心の中で悪態をつく。
 栗郷の家の中に入ろうとしたその時、後ろから人に声をかけられる。

「オヤ、レン、帰ってたのかい?」

 そこに現れたのは中年の白人男性だった。
 少し訛りのある日本語だ。

「オトモダチ?珍しいねぇ、レンが連れてくるなんて」

「…………親父」

「親父?」

 栗郷の親父と言う言葉に真尋が反応する。
 その男性は外国人だ。

「あれ、栗郷さんってハーフ?」

「みりゃ分かんだろ」

「いや、全く気付かなかった。
思いっきり日本人顔なんですね」

「………そう言われたのはお前が初めてだよ」

 日本人離れした顔立ちで外国人の血が入っている事は明らかだと自分でも思っていた栗郷。
 勿論利音も最初から気付いていた。
 今まで日本人顔など言われたことが無かったので驚きと呆れと興味が湧いた。

「親父、コイツらは友達じゃなくてただの客だ」

「オトモダチじゃないの?
残念ネ。トモダチいないレンにやっとできたとチョット嬉しかったのに」

「親父!!余計なこと言うんじゃねぇよ!!」
 
 さらりと友達がいないと暴露され顔を真っ赤にする栗郷に利音は、面白いことを聞いたとニヤリと笑う。
 そしてそれをみて栗郷が利音を睨む。

「んだよその目は!!
別にダチいないわけじゃねぇよ。
この界隈にいたら視えねぇ奴とツルむの面倒だろ」

 必死に弁明するが利音は冷たい視線を向ける。

「別に友達がいないのが悪いとも思わないけどね。
何が楽しくて他人と一緒にいるのか……」

 利音自身必要以上に人と関わる事を避けてきた。
 人間関係が面倒で昔から親しい友人なんてものはいなかった。

「バカバカしい……」






    

    



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