天狗と骨董屋

吉良鳥一

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報酬

第二話

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 栗郷を招いて早々に帰らせるのは何なので居間に上がってお茶でも飲んで貰うことにする。

「……………」

 居間に通された栗郷だったが、棚にある壺が気になってしょうがない。
 壺の側面には顔があり、舌を出したりコロコロと表情を変える。
 キッチンでお茶を入れる真尋がお菓子を戸棚から取り出すと壺がカタカタとお菓子を見て身体を揺らす。

「壺くんも食べたいの?」

 真尋がそう聞くと縦に身体を揺らした。

「壺くん………?」

 栗郷がそう呟くと真尋が何ですか?と聞いてきたので声の音量を上げて質問する。

「それ何?ペットか?」

 見たところあの壺は付喪神である。
 それをまるで真尋はペットのように扱っているように見える。

「違いますよ。
利音さんのコレクションです。
ほんとこう言うのばっか増えて困ります」

 自分の物ではないと真尋はキッパリ言いながらもお菓子の饅頭を壺に与える。
 どう見てもペットに餌をやる飼い主だ。
 しかも壺の隣にある金魚にも金魚用の餌を与えるが、それも妖である。
 困ると言いながらも可愛がっているようだがと思うと、お茶菓子を持ってきた利音も同じ事を思っているようだ。

「その割りに名前付けてご飯までやって可愛がってるじゃん」

「別に名前付けたわけじゃないです。
呼ぶとき困るので壺くんって呼んでるだけで可愛がってるって事じゃ……
それにご飯あげると喜ぶんですよ。
あげないとしょんぼりして可哀想なので……」

 それを可愛がると言うのではと二人は思う。

 変わった青年。
 栗郷の彼に対する印象は、何も考えて無さそうで意外と責任感がある。
 先の大蝦蟇との対戦で利音を逃がし、自らは残って戦うなど中々出来ない。
 イマイチ掴めない人物ではあるが、嫌いではない。

 栗郷は少しだけ真尋を気に入った。
 
「んじゃそろそろ帰るわ」

 暫くお茶を飲みながら寛ぎ、報酬の刀を持って宗像骨董店を後にした。
 真尋とは同じ大学。
 今後もまた付き合いはあるだろうから、ゆっくり彼を知ればいいと栗郷は考えた。
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