天狗と骨董屋

吉良鳥一

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拾い物

第三話

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 仲間も居場所も失った緋葉。
 なるべく見付からないようにと烏の姿に化け、妖気も隠して逃げていたが力尽き、行き倒れていた。

「真尋殿が助けてくれなければ某は命尽きていただろう。
この緋葉、その恩に報いるため貴殿のご命令とあらばどんなことでも聞く所存。
何なりとお申し付け下さい」

「いや、そんなこと言われても………」

 強い意志でそう言われ真尋はたじたじになる。
 別に恩を売る為に助けたわけではなく、ただ烏が可愛かったからであり、まかさこんなデカい烏頭の男とは思わなかった。
 せめて綺麗なお姉さまなら良かったのにと残念がる。

 現時点で特に緋葉にして貰いたい事も無いので保留と言うことにした。

「ところで利音殿、と言ったか……?」

「何?」

 今度は利音の方に向き直る。

「いや……某、ここに来た当初は妖気を隠していたが、貴公は瞬時にそれを見破った。
相当な実力をお持ちと見受けられる。
それに妖と知って尚、某をここに置いてくれたこと、感謝致す」

 そう言って深々と頭を下げた。
 随分と律儀な男のようだ。
 流石の利音も丁寧に頭を下げられ、感謝を述べられると文句を言えなくなる。

「……まぁ別にいいんだけどさ、君これからどうすんの?」

 帰る場所もなく、行く宛もない。
 緋葉は俯いてしまう。

「仲間を殺されようとも、某一人ではどうすることも出来ぬ。
昔は大天狗のきみにお仕えしていたが、その方もとうの昔に亡くなった。
もう、消えゆく運命さだめと思いながらもこうして命を助けられた。
某を式として使うならそうしてくれて構わぬし、邪魔だと言うならここから去る。
真尋殿の好きに使ってくれて構わぬ」

 悲しげな目で言われ、真尋も困った。
 行くところが無いなら彼をここに置いてあげたいと思うも自分も居候の身なので、ここにいていいよなんて言えない。

「う~ん……烏の姿でいてくれるならペットで飼えるとか思ったけどさ、野生動物って許可無しじゃ勝手に飼っちゃダメなんだよなぁ~」

 飼うなら役所に許可を貰う必要があるが、そもそも何の理由で保護したのかと言われるだろう。
 既に怪我もだいぶ治った。
 野生に帰しなさいと言われるだろう。



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