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145.またいつの日か
私たちは出発をライラたちの誓いの翌日に決めて砂漠越えの仕度を始めた。といっても必要な物はほぼ揃っているので、消耗品の確認や馬車の点検、後は料理のストックを作っておくくらい。
今回は自家製スパムにも初挑戦。飲み会の時にファニーさんが持ってきてくれた差し入れにスパム的なのが使われていたので作ってみる事にしました。保存食という感じではなく、塩分控えめにしてみました。これを使った料理なら最初はやっぱりスパムおにぎりかな?個人的にはジャーマンポテトに入れてビールと一緒に楽しみたい。寝かせる時間が必要なので出来上がりはちょっと先ですが。
そうそう、マル君は流れを止めて回復屋としてバリリアに落ち着くことにしたそうです。兄であるランドさんたちのパーティーに入るという選択肢もあったけれど、下級ランクの自分が加入するとパーティーランクが下がるので止めたのだとか。それに居場所がハッキリしていればまた会う事もできる。彼はそう言って笑っていた。
ランドさんたちはもう少しここに留まり、依頼などを熟してから次を決めるそうです。子供の事を話し合っておいた方が良い、と夫たちがアドバイスしていたのでその辺りも相談してから発つのだろう。大陸を出る気はないようなのでいずれどこかの街に落ち着くのかもしれない。
私はそれがバリリアなら素敵だと秘かに思った。
■
そして出発の日。朝早い時間なのにも拘わらず、ランドさんたちを始めマル君やガーディアンの面々、ギルマス、ファニーさんとルリアちゃんといった人たちが見送りに来てくれていた。
「バリリアはレックスに受けた恩を忘れません。君たちの旅路が幸福であるよう祈っています」
ギルドマスターというより神父さんのような口調のベリルさん。
「世話になった。達者でな」
言葉は短いけれど微笑みを見せてくれるアイシクルさん。
「ガーディアンもSランク目指して頑張るぜ!今度こそ、何があってもおれたちがここを守る」
気合い充分、ガッツポーズのゴルドさん。
「皆さんのおかげで命拾いし、兄にも会えました。本当にありがとうございました」
すっきりした笑顔のマル君。
「本当に、色々お世話になりました。皆さんに背中を押されなければどうなっていたか…ありがとうございました」
頬を赤らめながら頭を下げるライラ。
そしてランドさんがガッ!とレオンとエヴァの手を握る。
「お前らに出会えて良かったよ、感謝してる。マルの事も、ライラとの事も、それに…」
彼は一度目を瞑り、深呼吸してから目を開けて続ける。
「ずっと流れでやってきたのに、見送るのが寂しいなんて初めてだ。それくらい…お前らが好きだぜ。…じゃあな、元気でやれよ」
鳶色の瞳が僅かに潤む。3人はガッチリと握手を交わした。
旅に出会いと別れはつきもの。分かっていても、こうして親しくなった人たちと別れるたびに寂しさを感じる。そして心の中で呟くのだ。
"またいつの日か会えますように" と。
⬛︎
馬車は砂漠を順調に進んでいる。11月半ばになれば暑さも和らぐと聞いたが、10月もあと数日となった今日でも来た時よりは幾分かマシだ。バリリアを出てからいつもより静かだった馬車内はもう平常を取り戻し、私の胸の谷間に埋まっていたスノウも元気に外を飛び回っていた。
次の目的地は王都でその次が港街、そして東大陸へと向かう予定になっている。ただ王都までの道中にはダンジョンや中継点となる街もあるので立ち寄るつもりだ。最初に寄るのはダンジョンで、砂漠越えに5日、それからダンジョンまで3日で計8日間ほどの移動となる。
道中私はBランクになった複製スキルの検証をした。ランクアップする度に色々試しているのだが、Cの時は家具やテント、タープテントくらいまでは出来たけれど魔道具や馬車は無理だった。今回は一部の魔道具、馬車、馬小屋などが成功、コテージそのものやエアコンは失敗しました。
バリリアを発って5日、砂漠を抜けた私たちの馬車は久しぶりに街道を走っていた。11月に入った南大陸は涼しく、風もあまりなくて過ごしやすい。体感温度からすると一気に秋がやって気が感じだけれど、緑が少ない所為か秋になったという実感は少なかった。砂漠への道だからなのか、他の馬車や馬などとすれ違う事もほぼ無くて閑散とした雰囲気が続いていた。
砂漠を抜けた日の夜、コテージで日課の会議。
「この調子だと明日の夕方には着くな」
「そうだね。もう1日掛かるかと思ってたけど、やっぱり涼しいと進みやすい」
「あしただんじょんつくの?」
「ああ、おそらくな」
「こんどはなにがいるの?」
わくわくを隠せない様子のスノウの質問にレオンが答える。
「獣系だな。スノウの知ってる魔物で言うとウルフ、オーク、ボア辺りだ」
「難易度は低いみたいだね。高く見積もっても最初に行ったスパイダーダンジョンと同じくらいかな」
「まるやきできる?」
「そこは入ってみなきゃ何とも言えねえな。だがレベル的にはスノウとサニー、サックスには丁度良いと思うぜ?」
「れべりんぐできる?」
「ああ」
「やったぁなの!さにーとさっくとれべりんぐするの!」
ニットスパイダーに挑戦した時20前後だったスノウたちのレベルは30を越えた。私たち抜きでも良い所までいけると思うな。
「ドラゴンダンジョンではサニーとサックスに我慢してもらったからね」
「そうだな。状況にもよるが、今度は思いっきりやらせてみるか。キラ、お前はどう思う?」
「うん、賛成」
「じゃあ決まりだね」
「やったぁなの!」
スノウのは羽を広げて喜び、そのまま2頭に元へと飛んでいった。
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