異世界ライフは前途洋々

くるくる

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147.新店舗の準備

 ホワイトウルフダンジョンを攻略した翌日、近くの街に向かって出発した私たちは夜な夜な新たな店についての相談を重ねた。

 取り敢えず最初は回復薬や魔除け香などを扱う雑貨店からスタートする事に決め、様子を見ながら進める事にした。店舗には複製が成功した馬車を使う案も出たけれど、そうすると誰かがずっと立っていなければならない。客数を見込めないのにそれはちょっと、という事でコテージの玄関辺りを少々改造することになった。改造はもちろんレオンが。そしてエヴァはドアベル的な魔道具や保存食、私は商品用の薬の調合とそれぞれ担当が決まった。

 そうこうしているうちに中継点となる街に到着。そう大きな街では無いがとても賑わっている。それはやはり最近出現した植物系ダンジョンの影響だろう。攻略が目当ての冒険者や素材を求める商人などが訪れ、活気に溢れていた。ダンジョンには街に入る前に行ってみたが、もの凄い人気で攻略希望者が殺到していたため入るのはやめた。いつもなら入りたいと主張するスノウも人混みを見て諦めたようです。

 さて、到着は昼下がりだったのでまだ時間がある。まずはいつも通り冒険者ギルドで情報収集してから店が並ぶ通りへ。そこでは色々な品物の価格調査をしてから街の外へ出てコテージに落ち着いた。




 そして夕食後。

「今まで回った街での価格と併せて考えると、南大陸での平均価格はこんな感じかな」
「…薬系は西大陸と比べると3割は高いな」
「そうだね。やっぱり素材になる植物が少ないからかな?」

 エヴァが書いてくれた価格表を覗き込みながら話す。保存食は同じくらいだが回復系は高い。

「そうだと思うよ。だからこそ回復屋が必要になるんだ」
「なるほど」

 納得。

「売価はどうするんだ?」
「オレは平均の2割安くらいで良いと思う」
「賛成。元手はほぼ掛かっていないけど安すぎるのも不自然だし」
「俺もそれで良いと思うぜ。あまり安いとバッタもんだと思われる可能性がある」

 その他幾つか商品について話し合った後、明日からの予定を確認。

「明日から数日間街の傍に滞在し各自仕事を終わらせる、って事で変更ねえな?」
「ないね。キラも大丈夫?」
「うん、大丈夫」

 私たちは次の日から腰を据えて準備を始めた。





⬛︎





 6日後、店の準備が整った。

 店舗となったのは玄関ポーチの横で、外から見ると扉の右側。そのがら空きだったスペースに部屋が増設された。石材の土台を延長して少し張り出すような形になった店は専用の階段も設けられ、扉の内側にはドアベル的魔道具、外側には取り外し可能な店名ロゴ入り看板、階段下にA型看板もある。2つの看板は営業時間にのみ設置される。

 中の広さは6畳ほど。外から入ると正面奥に作り付けの大きな棚、その前に商品の陳列ケースとカウンターがL時型に並んでいる。天井にはランプ、右側には窓、作り付けの棚の横には扉があってリビングに続いている。天井が高いので広く感じるし、殆どが明るい色合いの木製なので爽やかな雰囲気だ。

 商品は回復薬各種、魔除け香、保存食数種類、水袋、火打ち石、といったところ。どれも旅の最中に無くなると大変な消耗品だ。冒険者には生活魔法を持っていない者も多く、更に火や水の魔法も無い場合は火打ち石と水袋を持ち歩くのだそうです。

 その後の話し合いで最初の営業をダンジョンの周囲に決めた私たちは、店舗完成から2日後に目的地へ向けて出発した。目指すは植物系ではなくもう少し先にあるスライム系ダンジョンだ。





⬛︎





 それから4日後の夕方、目的地に到着。

 ダンジョンの入口は街道から少し離れた場所にあった。乾いた平らな地面にぽっかりと空いた穴は垂直で、4、5m下に松明の灯りに照らされた地面が見える。一応縄梯子があったがボロくなっていて心許ない感じだ。周囲にある柵も似たような状態で魔物避けにはならなそう。

 建物は管理小屋だけ、あとは露店が1つと冒険者のテントが2つ。露店があるだけホワイトウルフダンジョンよりはマシだが、閑散とした雰囲気は同じだった。ここも植物系に影響を受けたのだろう。

 私たちは柵で囲われた敷地内の一画にコテージを設置し、取り敢えず今日は休む事にした。




「先ずはダンジョン攻略だな」
「だね。まあスライム系だから難易度は低いけど、良い素材が手に入るかもしれないし」
「うん」

 最初にこのダンジョンの話を聞いた時、スライム系だけで成り立つのか不思議に思ったが2人に教えてもらって納得した。




 スライムはとても広い地域に存在する順応性の高い魔物で、色々な種類がいる。そしてとても弱い分進化しやすく、環境によって進化先が違う。最初は無色透明なのでまず見つからず、その後周囲に溶け込むような色合いに変化する。更に進化すると毒液を吐いたり痺れ粉を吹いたりといった攻撃もできるようになるが、防御力は然して高くならない。ただこの頃になるとスライムゼリー以外も取れるようになり、偶にレアな物もある。




「すらいむってぽにょぽにょしたやつ?」
「そうだよ」
「ふーん…あんまりたのしくなさそうなの」

 スノウはあまり興味が無さそうだ。

「まあ進化してもスライムはスライムだからな。スノウの出番がねえ事も有り得る」
「サニーとサックス中心で討伐して偶にスノウが出る、って感じで良いんじゃない?」
「ああ、そうだな。キラもそれで良いか?」
「うん、良いよ」
「おはなしおわり?おふろ?」

 私が頷くとテーブルの上のスノウがソワソワしながら尋ねる。11月も3分の2を過ぎた。最近は肌寒く感じる夜もあって温かいお風呂が気持ち良いのだ。

「そうだね、入ろうか」
「ん、はいるの!」

 私たちはスノウに急かされながらバスルームへと向かった。

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