異世界ライフは前途洋々

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170.進化後の戦闘

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 次の街を目指して出発した私たちの旅路は以前にも増して賑やかで楽しいものとなっていた。サニー、サックス、スレートの鳴き声はスノウと同じく言葉として聞こえる。似ていると思っていたサニーとサックスの性格も、話をしてみると確かな違いが感じられて面白い。レオンとエヴァも御者台に居る時退屈しないと言って笑っている。

(注:通常スライムは体から『ポヨポヨ』と音を出して仲間と意思疎通するのでそれが言葉に聞こえます)

 目的地である漁師町までは通常馬車で10日前後だが、例によって私たちは店を開けながら進む事にしていた。











 村を発った4日後、馬車は森の中の道を走っていた。ここは抜けるのに2日は掛かるという深い森。珍しい物も採れるけれど、奥の方には一日中太陽の光が届かないような危険地帯もあるらしい。

 私たちはその珍しい物を採取するべく、林道を外れて森の奥へと向かった。




(あっちにこんふぃが4いるの!)

 探し始めて少し経った時、先頭を飛んでいたスノウが鳴いた。

 "こんふぃ"とはアルミラージというホーンラビットの上位種のこと。肉がホーンラビットよりも柔らかくとても美味で、ツノは薬に、皮も使い勝手が良い魔物だ。以前これの肉をコンフィにしたところスノウがすごく気に入り、それ以来アルミラージを見つけると『こんふぃがいたの!』と叫ぶようになった。クラーケンをから揚げ呼ばわりした事といい、最近スノウは魔物を料理名で呼ぶことが多々ある。

(スノウたちでいってきてもいい?)

「他には居ねえか?」
(ん、ちかくにはいないの)
「なら行っても良いが、終わったらすぐ戻って来いよ?」
(はいなの!みんな、とつげきなの!)
((トツゲキ!))
(オー!)

 スノウの号令に答えるサニー、サックス、スレート。この中では一番移動が遅いスレートがサックスの上によじ登ると、意気揚々と飛び出していった。




 複数の契約獣が居る場合、いくつかの条件を満たすとその中でリーダーが誕生することがある。スノウたちは今まで常にレオハーヴェン達の指示を受けて行動していたが、進化してみんな揃って秘めていたポテンシャルや知力が上がったことでスノウがリーダーとなった。だからといって決して勝手な行動はしないものの、今回のように許可を得て契約獣のみで戦う機会が出てきたのだ。




(みんなで1ずつやるの!)
(((オー!)))

 スノウたちの接近に気が付いたアルミラージが逃げようと身を翻す。

(まっぷたつなの!)

 可愛い声と共に真っ先に獲物を倒したのはもちろんスノウ。風の刃で的確に首を落とした。

((ニガサナイ!))

 続いて鋭く嘶いたサニーとサックスは、疾走スキルで瞬時に差を詰めて蹴りと踏みつけを使って一発で仕留めた。

 そしてスレートはサックスから飛び降りて200㎝の本体に戻ると、自分に背を向けていた獲物に手を伸ばしてガッチリ捕まえる。アルミラージは捕まった相手を見て驚き、必死にもがきながら土魔法を放つ。だが隆起して尖った硬い土も、防御力が高くぷにぷにしたスレートの体には効き目がない。そうしているうちに獲物を体内に取り込み、血液や内臓、骨などの要らない部分を吸収する。程なくして皮と肉、それと魔石だけになったアルミラージが吐き出された。




 進化時の成長率でいうとスレートが一番だろう。エンペラースライムはスライム種の最終形態で知力も中々高く、レベルが上がればその強さはAランクとも言われている。すべてのスライムに共通の消化吸収スキルは威力が格段にアップし、毒や麻痺を持つ敵でも余程強力でなければ全て吸収してしまう。その上スレートは元プロテクトスライムなので防御力も高くなるし、ナイフの使い方まで教わっている。レベルが上がって強くなり、レオハーヴェンたちが制作した武器を使いこなすようになったらと思うと末恐ろしい。




 スノウたちを少し離れた位置で見ていた私たちは、危なげない戦いぶりに感心したのだった。











 私たちはアルミラージを仕留めたあとも探索を続けていた。ブラックベリーや薬草などはあったが一番欲しいものはまだ見つからない。

「ん…あった!」

 目当ての物を見つけて声を上げたエヴァが土の中からそれを掘り出す。最近Bランクになった彼の探索スキルはやはり上級だけあって格段に精度が上昇した。そのスキルを頼りに探したのだ。

 私はエヴァの手にある物を見て思わず声を上げた。

「わ…ほんとにトリュフだ。しかも白…」

 そう、この森の珍しい採取物とはトリュフとのこと。私の身体を考えて休憩を挟みながらだったので時間は掛かったが漸く見つけた。トリュフはここでも高級食材だが、採れる時期が違うので前世のものと多少違いがあるのかもしれない。でも見た目はそっくり。

「時期的にはギリギリだったが探してみて良かったな」
「ホントだよ。ヴェスタでもホワイトはまず見なかったし、これは大きさも状態も凄く良い」
(これがとりふ?これたべれるの?)

 エヴァの手に飛んで来たスノウが匂いを嗅ぎながら言う。

「もちろん食べれるよ。でもトリュフは香りを楽しむ食材だから、スノウの好みでは無いかも」
(ふ~ん)

 エヴァが言った通りあまり関心がなさそうな返事をする。スノウは食いしん坊だけど好みは割とハッキリしているので分かりやすい。

「もうすぐ日が落ちる。さっき通った湖のそばまで戻ろうぜ」
「だね。おいでキラ」
「うん」



 その夜は湖の畔にコテージを設置して休んだ。 

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