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習うより慣れろ ③
しおりを挟む庭師の息子アルテミールに一通り屋敷の庭を案内してもらった後、朝食の時間が近づいている事に気が付いて、すぐさま部屋に戻ることにした。
裏庭で気になった場所と言えは、料理人たちが丹精込めて世話をしているという野菜畑と、兵士たちが使う鍛錬所だ、さてどんなところだろうと鍛錬場を覗いてみれば、中では真剣な眼差しでスキンヘッドの眼帯を付けた大柄な男が素振りをしており、俄然テンションの上がった我が家の頼れる護衛ハンスが意気揚々と、手合わせをして貰いに走って行ってしまった。
おい、お前護衛だろとは思ったものの、引き留めるのも面倒なので、まだまだ案内したい!と駄々を捏ねるアル少年に我が領地の特産物である、子供を黙らせる飴(蜂蜜味)を賄賂に与え走って戻って来たのだ。
到着した次の日から朝食をサボるわけには行かないからね。メイドに見つからないように素早く戻れば、部屋ではしっかりと、着替えのドレスを用意して待っていてくれたステラの衣装替え技術によって、僕は外見だけは完璧な淑女に変身し、広間へと向かった。しかし、いざ、と覚悟を決めてドアを開けて貰い入ってみれば大きな長いテーブルには、何故か一人分の食事だけが用意されていた。
あれ、グラデウス様食事放棄?嫌いな女とは食事をしたくないって意志表示ですかね。僕が笑顔の下でピキピキと米神を引きつらせている。
しかし、座るべきか迷っていると直ぐに困った顔をした執事夫妻がやってきて、「申し訳ありませんが、朝食はシャシュカ様お一人でお願いいたします。」と言ってきた。食事を運んでくれたメイドもとても申し訳なさそうに身を縮めていて、何だかこちらが悪いことをした気分になってくる。
「わたくし、食事は家族で取っていたので、一人は寂しいですわ。グラデウス様はどうしましたの?」
「それがその、只今お部屋から出れない状態でして。」
「あらそう、お仕事がお忙しいの?」
「いえ、そうではなく。その私たちも部屋には入れて貰えていないので、憶測でしか無いのですが。」
使用人頭のミーアは声を潜めて、辛そうな声色で言う。
「怪我の具合が悪化して、魘されているのだと思います。起こしに行ったときに中に入るなと叫ばれてしまい、どうしたものかと戸惑ってしまって、旦那様は家族同然の私たちに、弱っている所を見られるのがとてもお嫌いなのです。」
なんとまぁ。
執事のカールさんも、すっかり気落ちしてしまっている。
昨日の視察がお体に障ったのではと心配そうだ。
無理に部屋に入ることも出来るけれど、主人が拒否をしているのならばどうしようもないと彼らは言う。主人の矜持を守るのもまた彼らの仕事なのだ。
「あなた方が無理なのでしたら、わたくしが参りますわ。そこで一緒に朝食も取ります。ステラ朝食を纏めて持ってきて頂戴。それとグラデウス様にも食べやすいスープをお願いね。ああ、大丈夫ですわよ。だってわたくし嫌いだ近寄るなと言われていますが、好きにしろとも言われてますの。わたくしはわたくしのしたい様にするだけですわ。」
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