女装令嬢奮闘記

小鳥 あめ

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泥棒猫参上 ①

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 朝起きたら軽く走り込みをし、剣を振りたいときは護衛達の訓練に混ぜて貰う。軽く朝食を取ったら、動きやすいドレスに着替へ、書斎に赴きグラデウスが無理に仕事をしていないか、呪いのせいで熱が出ていないかなどを確認しながら、部屋に用意して貰ったボク専用の、ゆったりとした椅子に座って編み物をする。(因みに今はマフラーを編んでいる、妹の分も作って贈るつもりだ。)書斎でお昼を一緒に食べたら、グラデウスは職務の続きをし僕は、本を読んで経済の勉強をしながら、分からないところはグラデウスに聞いて教えて貰っている。


 何故勉強をしているのかということだけど、妹が学校で学んでいる間に少しでも、将来領主になるための勉強をしておかないと、元に戻った時に僕が困るからに決まっている。
 領主の嫁の仕事は分かっていても、領主の仕事が出来ないとかそんな無能な跡継ぎには成りたくない。その為、実家にいた家庭教師を呼んで欲しかったのだけれど、丁寧にお願いしてもあっさり駄目だと断られてしまったので、将来領主の妻になるのだから、勉強がしたいのだと言い張って、渋々「それなら俺が教えよう」と折れさせた。騎士学校を首席で卒業した彼であれば確かに教師には相応しい、思えば王宮の最強騎士で頭も良く美形、こんな女性の思う理想的な男は中々いないんじゃないかなと思えてきた。本当に妹の婚約者にしては出来過ぎだ、僕も彼が将来自分の義兄弟になるのかと思うと嬉しい気がする。
 
 まぁ将来どうなるかは、それもこれも僕の頑張り次第ではあるんだけどね。


 大体の一日の流れが決まってきて、僕もこの屋敷と環境に慣れ始めた頃、急にグラデウスが今から外へ出かけてくると言ってきた。しかも朝方まで戻って来ないとも。
 急に領地の見回りでも入ったのかなと思ったけれど、それなら彼の護衛に行かせればいいし、領主自ら行くべきではない。そもそも怪我も呪いもまだ直っていないのだし、心配だ。


「何処かの夜会に行くのでしたら、わたくしもお供いたしますわよ。」
「いや、今夜は結構だ。それに護衛もつけなくていい。ではカール戸締りは頼んだぞ。」
「畏まりました。」
 頭を下げるカールさんとは裏腹に、僕の心は疑問で一杯だ。優秀な執事が止めないということは別に何か危険なことがあるとかじゃないんだろうけど。それなら僕を連れて行ってくれてもいいのに。
 最近は鉄扇の切れも良くなったから、試し打ちもしたいし。


 「朝には帰ってくるから、君は早く寝てしまうと良い。」
 「子供扱いしないでくださいませ。」
 僕が剥れて言えば、子供だろうとグラデウスは苦笑して、不貞腐れている僕を引き寄せると、ギュッと抱きしめ目元に一つ口づけを落した。
「ひゃ!」
「よく眠れる呪いだ。ではなシャシュカ良い子にしているんだぞ。」


 突然の抱擁とキスに戸惑っている間に、グラデウスは夕闇の中消えていった。


 騙されない、騙されないからなぁ!


 今まで近所のがきんちょ扱いしかしなかったくせに、いきなりあんな態度怪しすぎるだろう!絶対に何かある!しかも僕に都合の悪い事!


 絶対に突き止めてやる、僕は彼の消えていったドアを見つめながら強く拳を握った。 




 
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