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好敵手の条件 ③
しおりを挟む懺悔室と言う名の扉を通ったはずだった気がしたのだが、部屋に足を踏み入れれば、木でできた丸いテーブルと、お洒落な椅子が四つ並べてあった。
テーブルの上にはチェック柄のテーブルクロスが敷かれており、その上には籠に入った丸いパンが置かれている。
更にその奥には3人掛けの質の良さそうなソファーまで置いてあって、思わず懺悔室?と首を傾げてしまった。
「貴方たちはその辺の椅子にでも座ってなさい。」
青年はそういって水の入ったケトルを持ってやって来た、そしてケトルに手を翳しぶつぶつと呪文の様なモノを唱えると、ケトルの中の水は沸騰しピーという音を立てた。
「もう、あんた達のせいであたしのブランチが遅れちゃったじゃない。」
プンスコと拗ねた口調で青年は言いながら、マグカップにお湯を注ぐ、するとカップの中のお湯がいつの間にかコーンスープに変わっていた。
「あんたたちも小腹が空いたでしょ。」
そういって、僕とハンスにもカップを出してくれる。ハンスが一口飲んでグッドのサインをしてきたので、僕も頂くことにした。
コーンの甘い味が優しく美味しいものだから。先ほどまでの緊張感が解けていく気がした。
「ハンス、あれを出してくれないかしら。」
僕がそういってハンスに持ってきて貰ったのは、ワルツ家のシェフに作って貰った、ミートパイと、サンドウイッチ。
長期戦になったら、ここでご飯食べてやると意気込んで持ってきたものだけど、この流れなら目の前で小さく丸パンをちぎりながら、食べている男にも分けてやっても良いかなと、思ったのだ。
癖があるけどなんか悪い奴にも思えないんだよなぁ。凄く素直な所もあるし。
テーブルの上に持ってきた食べ物を置けば、えー、これくれるの?やったー!と大げさすぎるくらいに喜んだ。
というか王宮からの派遣神父なんじゃないのか?食事事情どうなっているんだろ。
「このミートパイ美味しい!流石グラデウスの所のシェフねー。懐かしいわ。良く長期休暇の時はグラデウスのお家に泊まらせてもらって、一緒に課題をしたり、剣のお稽古をしたのよね。その時におやつにって良くパイを作って貰ってたの。その時と全然変わらない素敵なお味。本家のシェフはグラデウスについてきてたのね、ちょっと安心したわ。」
パイを頬張りながら、目を細め青年は懐かしそうに過去を語る。
「学校って騎士学校ですわよね。失礼ですけれど魔術師の方も通われるんですか?」
普通は適正によって学校の振り分けが行われていたはず。幼いころから魔術の才能があれば王都にある魔術学校へ。騎士の家系だったり、剣の腕に覚えがあるのなら試験を通り騎士学校へと言う感じに。
「まぁね。実はあたしの家は魔術師の家系なんだけど、あたしは剣のお稽古も嫌いじゃなくてね。だってほら剣を振るう殿方って素敵な肉質してるじゃなぁい?だからそんな天国みたいな学校是非行きたいと思って、必死に訓練して、親とも大げんかして飛び出す感じで騎士学校に入ったってワケ。」
信念にブレが無いのが正直凄い。確かに魔術師は貧弱なイメージがあるもんね。健康的な男の美が好きなこの人なら迷わずに選んで突き進むんだろう。
そのバイタリティーは少し尊敬できるかも。
「美味しいご飯も頂いちゃったから、お礼にあたしの名前を教えてあげる。」
魔術師が名前を教えるのは稀なのよ。普通は通称で呼ばれるの、例えばあたしは[虹彩の白椿]とかね。
青年はコロコロと色を変えていく瞳を細めてにこりと笑った。
「あたしは、ジャノメ・フィクサー。王宮専属一等医療魔術師よ。宜しくね。グラデウスの婚約者さん。」
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