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好敵手の条件 ④
しおりを挟む「あっ、わたくしったら名乗りもしないで失礼いたしました。わたくしはシャシュカ・ベイレードと申します。」
慌てて立ち上がり、スカートの裾を持ち淑女の礼をする。
名乗りもしないで喧嘩を売ったのは、騎士道に反していたかもしれないと、僕は反省した。
ちょっと頭に血が上っていたのかも。落ち着いて話をしてみれば会話が通じない感じでもないし、グラデウスの愛人だとばかり思っていたけれど、過去の話を聞く限りでは、親しい友人というのもあながち嘘じゃ無かったのかもしれない。
でもあの距離の近さは問題だけれどね。
「ジャノメ様はグラデウス様の友人とお見受けしましたが、友人への治療はあのように近づいてするものなのですか?」
僕が聞きずらそうに問うと、ジャノメは「あら?そんなこと何処で知ったのかしらぁ?」意地の悪そうな顔で笑う。むう、どうせ僕が覗いていたこと知っていただろう。
「そうねぇ、まぁあたしの治療は特別だし、それにグラデウスの受けた毒と呪いは身体の内側に受けたものだから、色々と外に吐き出させる必要があったの、ふふふ、詳しく聞きたいかしら?」
その手を上下に振る仕草はやめて欲しい、一応こちらは純粋な乙女なんだ、見た目だけだけど。
「擦り合いっこなんて、男しかいない学園じゃ挨拶みたいなもんよぁ。酷い先輩だと無理やり迫ったり、自分の所有物にしようとする奴もいたけど、そういうのはあたしは嫌い。まぁなんていうか確かに知らない人から見たら、厭らしくは見えるかもね。でも昨日のアレはちゃんとした治療だったのよ。あたしの手は患者を癒すことが出来るの、本当にね。」
魔術師という者はそれぞれ特性が違うらしいけれど、ジャノメの能力は触れることによって患者の治癒能力を上げる事が出来るらしい、この魔術が出来る者は王国の中でも数人しかおらず、彼は王宮内でも重宝されているのだとか。
同い年で城に務めたグラデウスとジャノメの事を、王国の双璧とも呼ぶものも居るらしい。
「特に第一王子はあたしたちの事をとても、買ってくれていたわ。まぁ元々同級生だったし仲が良かったということもあるんでしょうけれど、それだけじゃ無く、ちゃんとあたしたちの能力も認めていてくれた、それは本当に嬉しい事よ。でもねぇ。」
ジャノメは目を伏せ困ったようにため息を付いた。
「グラデウスが自分の身代わりに呪いを受けたのが、かなりショックだった見たいで。かなり人間不信になっちゃったのよね。まぁあたしもグラデウスも元々女嫌いだし、城にいるほとんどの奴らの事は信頼なんてして無いけれど、でも第一王子は誰の事も尊重し、優しさを与えることの出来る人だったから、これにはあたしも吃驚よ。」
まぁ、城に第一王子の命を狙っている反逆者がいるのは間違いないから、警戒するには良いんだろうけど。
「問題なのは、グラデウスを領地にかえしてから、あたしを自室から出してくれなくなっちゃってね。この執着の仕方は流石に不味いなぁと思って、ここにに逃げて来たってワケ。」
「それは、勝手に出てきて大丈夫ですの?その、城から捜索隊を出されたりされるのでは?」
お気に入りの魔術師が逃げたら益々人間不信にならないだろうか?
「大丈夫よ、どうせ王子はあたしがここに居る事知っているだろうしね。」
これ、といってジャノメが見せてくれたのは腕に付けられた、赤い宝石の付いたシルバーの腕輪。
「この腕輪は王子がくれた物なんだけど、これには特殊魔術が掛けられていてね、贈ったものには贈られたものの居場所が分かるようになっているの。だから王子はあたしがここに居るって知っている。
だから今頃は自分のしでかしたことに気が付いて反省中って所かしらね。まぁ彼にも良心ってものがあるならしばらくは追ってこないでしょうよ。」
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