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バザーに向けて ②
しおりを挟む教会の裏手には、古い木造りの小屋がポツンと立っている。一見材木の保管場所にに見えるその部屋は、実は簡単に移動が出来る魔法陣が描かれた特別な小屋なんだとか。
バザーの商品を先に馬車で送り、僕とジャノメはその魔法陣の中心に立っている。難しい魔法文字で描かれたその陣はさっぱり意味が分からないけど、取りあえずここに立っていれば、一瞬で隣の領地に行けるそうだ。
普通に馬車で行けば一日は掛かる距離が一瞬だなんて信じられないな、こういう時魔術の凄さを思い知らされる。師匠曰くこれはまだまだ序の口らしいけど、このように魔術師だけが知っている便利なものは凄く多いのだけど、一般の市民たちが知ってしまったら、職を無くすものが出たり、堕落するものも多いだろうということで、完全に黙秘されているのだとか。
この陣は全国の教会一つ一つに置いてあり、緊急時の脱出装置としての役割もあるそうだ、その場合は城の門の前に辿り着けるように設定されているらしい。
「すっごく便利なのは分かるんだけど、あたしは自分の力で空を飛ぶ方が好きね。だからあんまりこういうの使わないの、でもあんたにはちゃんと使い方教えておくわ、グラデウスに何かあったらここから逃げて、城に助けを求めるのよ。城の騎士団はグラデウスの事心底慕っているからきっと力になってくれる。」
その言葉に頷いて、ジャノメの手をしっかりと握る、まだまだ魔力の制限が上手くない僕だけでは移動は難しい、隣から移動呪文の詠唱が聴こえてくる。
ジャノメが歌うように呪文を唱え、足元の魔術文字を3回つま先でタップするように鳴らすと、青白い光に包まれて、いつの間にか僕は知らない場所にいた。
周りを白い壁が囲んでいる無機質な部屋、明かりは上に続くであろう階段の傍に置かれているだけだ。この様子を見るにここは地下なのだろう。
重要機密であるこの移動陣は基本、一目に付かない地下にあることが多いらしい、ならなんで僕たちが居た教会は外にあったんだろう、結構謎だな。
ジャノメはうーんと伸びをすると、「なーんか肩凝ったわぁ。慣れない詠唱するもんじゃないわね。」と肩をバキバキさせながら地上へ向かう階段を昇っていく。
僕もそのあとに続いて地上に出れば、そこは一面白い砂で覆われていた。
「ここはワルツ家の隣の領地である、メリドワ家が納める砂の領地よ。この領地の面積半分以上はこの白い砂で覆われている。昼は熱く夜は寒くなるから体調を崩さないように気を付けるのよ。」
そういってジャノメは、僕の頭に鼠色のマントについていたフードをバサリと被せた。
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