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30.兄のために
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あのシスターアントニア宛の手紙について、ゾフィーが心配していたことは杞憂だった。ラルフは兄ゴットフリートのためにその手紙を書いたのだった。
シスターアントニアは、ノスティツ家が破産する前にゴットフリートと婚約していた。婚約破棄後に彼女は別の男性に嫁いだのだが、去年離婚して聖グィネヴィア修道院に入っていた。
ラルフは、あの日の会合の後にばったり出会った『昔の知り合い』の女性から聞くまでそのことを知らなかった。その知り合いというのは、実はラルフの元婚約者で今は子持ちの人妻レアであった。
ゴットフリートは今も元婚約者のシスターアントニアに未練がありそうだったから、ラルフは兄に彼女の離婚と修道院入りについてすぐに話したが、彼は何日経っても煮え切らなかった。だからお節介とは知りつつも、ラルフは見切り発車でシスターアントニアに手紙を出してしまったのだ。
ラルフがゾフィーにシスターアントニア宛の手紙を頼んだ日、2人は、ようやくアントニアとレアのことについて腹を割って話した。2人は、未だに白い結婚を続けていたが、就寝前に夫婦の寝室で2人だけで色々な話をすることで夫婦間のコミュニケーションをとっていた。今回みたいに他の人に聞かれたくない話がある時も、昼でも夫婦の寝室に行って話すのが習慣になっていた。
今回の浮気(?)騒動でゾフィーは自分の気持ちがはっきりわかった――ラルフを愛している、他の女性に取られたくない――でも、ゾフィーはルドルフへの罪悪感を払しょくできなくてラルフへの愛を中々素直に態度に出せないのだった。
「どうしてお義兄様の元婚約者の離婚話を貴方の元婚約者から聞いたってすぐに言ってくれなかったの?」
「いやー、心配するかなと思って……」
「秘密にされるほうが傷つくわ。私が嫉妬するって己惚れているの? それとも後ろめたいことがあったの?」
「とんでもない! 彼女は子供にも恵まれて旦那さんともうまくいっているそうだよ。だから大昔に婚約を破棄した相手なんて何とも思ってないよ。婚約破棄の後は2年前の会合で再会したのが初めてだし」
「まぁいいわ。今回はお義兄様に免じて協力してあげる」
「ありがとう、ゾフィー」
そう言ってゾフィーを見つめたラルフの瞳は熱を帯びていた。ラルフが顔を近づけてくると、ゾフィーはそっと躱して額にキスをした。
「ごめん。性急すぎたね」
そう言って寝室を先に出て行ったラルフは明らかに傷ついていた。落胆とショックと後悔がない交ぜになった複雑な感情が顔に出るのは隠しきれなかった。だがゾフィーにはラルフの背中しか見えなかったので、そのことに気づかなかった。
ラルフがゴットフリートのためにしたお節介はなかなか一筋縄ではいかず、時間もかかったが、喜ばしいことに実を結んだ。だが、ラルフとゾフィー自身の夫婦関係は、一進一退で中々進まなかった。
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ゴットフリートは今も元婚約者のシスターアントニアに未練がありそうだったから、ラルフは兄に彼女の離婚と修道院入りについてすぐに話したが、彼は何日経っても煮え切らなかった。だからお節介とは知りつつも、ラルフは見切り発車でシスターアントニアに手紙を出してしまったのだ。
ラルフがゾフィーにシスターアントニア宛の手紙を頼んだ日、2人は、ようやくアントニアとレアのことについて腹を割って話した。2人は、未だに白い結婚を続けていたが、就寝前に夫婦の寝室で2人だけで色々な話をすることで夫婦間のコミュニケーションをとっていた。今回みたいに他の人に聞かれたくない話がある時も、昼でも夫婦の寝室に行って話すのが習慣になっていた。
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「どうしてお義兄様の元婚約者の離婚話を貴方の元婚約者から聞いたってすぐに言ってくれなかったの?」
「いやー、心配するかなと思って……」
「秘密にされるほうが傷つくわ。私が嫉妬するって己惚れているの? それとも後ろめたいことがあったの?」
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