傀儡妃は幼馴染の王太子をひたすら愛する

田鶴

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第2章 傀儡の王太子妃

33.露見

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 ルイトポルトとパトリツィアの努力の甲斐もなく、2人の白い結婚の噂は間もなく王宮中に広まった。もちろんパトリツィアの父である宰相ベネディクトにも露見してしまい、ベネディクトはすぐにパトリツィアを訪ねた。

「王太子妃殿下、宰相閣下がお目通りを願っております」
「お通しして」

 ベネディクトは、王太子妃の側付きの者達がいる手前、臣下の礼をとった。

「宰相閣下、何の御用でしょうか?」
「妃殿下、人払いをお願いいたします」

 本来なら王太子妃と男性を2人きりにはしないのだが、この2人は親子である。それに一部の侍女以外はベネディクトの息がかかっており、ルイトポルトが新たに送り込んだ侍女達はベネディクトを失脚させる計画を知らないので、側付きの者達は全員、疑問を挟まず退室していった。その途端、ベネディクトはパトリツィアに偉そうな態度をとり始めた。

「お前、まだルイトポルトに抱かれていないんだな?」
「お父様、酷いわ! いくら親子でも夫婦の事情を話す訳には参りません」
「何かまととぶっているんだ。第一、お前には早く王子を産めと言っているだろう? お前が役に立たないなら、娘はうちにもう1人いる。姉妹で1人の男を共有してみるか? ちょっと外聞は悪いが、背に腹は代えられない」
「教会は一夫多妻を許していません!」
「そんなもの、どうにでもなる。ガブリエレにあいつの子供をこっそり産ませてお前の子供に偽装する事だってできるんだ」
「そんな罰当たりな事が許されるはずがありません!」
「世の中、決まり通りに事が全て運ぶわけじゃないんだぞ」
「そ、そんな……」
「それが嫌なら、1ヶ月以内に本当の初夜を済ませる事だな」
「は、はい、お父様……」
「結婚式の後の初夜のような偽装をしても無駄だぞ。王宮には私の目が光っているからな」
「はい……」

 宰相の息がかかった使用人達は王宮にいくらでもいる。王太子夫妻の閨の翌日に使用人がシーツを代えれば、閨の実態がない事がすぐに分かってしまうに違いない。

「どうしてもルイトポルトと子供を作らないのなら、次代の王には別の人間になってもらうまでだ」
「陛下には殿下しかお子様がいらっしゃらないのに?!」
「この王国の歴史は長いんだ。何代前に遡ったって王家の血を引いていればいい。いくら私の言いなりにならなくてはいけなくとも、王になりたい者はいくらでもいる。そうなったらお前はルイトポルトとは離縁させてその男と結婚させる。好きでもない男に抱かれたいのか? 嫌だろう?」

 ベネディクトの不遜なニヤ笑いにパトリツィアはぞっとした。ベネディクトは本気なのだ。

「それからお前の報告はなんだ? 子供の日記じゃないんだぞ!」
「……と言いますと?」
「ルイトポルトが執務室に何時から何時までいたとか、夕食で何を食べたとか、役に立たない報告だけを書きおって! 誰に会ったとか、誰に手紙を書いたとか、お前には使用人が探れない部分まで報告してもらわなきゃいけないんだ。分かったか?!」
「でも、お父様、私には王太子殿下が誰に手紙を書いたかなんて覗き見できませんし、執務室に張り付いて誰に会っているか監視する訳にいかないでしょう?」
「ちっ! 役に立たない娘だ! とにかくあいつの行動はできる限り全て報告しろ! でなければ、ラファエルがどうなるか、分かっているだろうな? あいつの代わりなど、俺にはこれからいくらでも孕ませられる女がいるんだからな」

 それだけ言い捨てると、ベネディクトは王太子妃の応接間を出て行った。

 パトリツィアは、あれ以上父に言い返せなかった。

 ルイトポルトに何もかも打ち明けて解決できたらどんなにいいだろうとパトリツィアは何度思ったことかしれない。でも相談すれば、彼は必ずパトリツィアを守ろうとして行動を起こすだろう。でもそれは彼の身に危険を及ぼす。

 だから、パトリツィアはルイトポルトにとって毒にならない――父親にとっては役に立たない――報告しかするつもりはなかった。それだけだって本来はルイトポルトにとっては裏切りだろう。でも実家に残っている幼い弟の事を考えると、どうしても形ばかりの報告を止められなかった。

 その日のうちにルイトポルトは、義父が人払いをしてパトリツィアと話した事を耳に入れた。

「今日、宰相が人払いをしてパトリツィアと2人きりで何か話した。十中八九、閨の事だ。計画の実行はまだ無理だろうか?」
「正直言ってまだ無理ですね。先日の元侍女達の父親達がどの程度数に入れられるか未知数ですし、そうでなくとも味方がまだまだ足りません。それ以前に宰相を断罪できるだけの悪事の証拠が充分に集められていません」
「それではパトリツィアを抱く振りをしなくてはならないか……」
「愛撫するだけして最後までしないんですよ。我慢できますか?」
「私の忍耐力を馬鹿にするな」
「信じられませんね。それに自慰で出した精液をシーツに少し垂らすような偽装が必要です。妃殿下の前でできますか?」
「なっ……! いくら何でもパトリツィアの前で自慰しなくてもいいだろう?」
「まあそうかもしれませんけど、お2人が寝室を出る前にシーツに精液を垂らさなくてはいけないことは確かですよ」
「……精液は自分の寝室で取るよ」

 ルイトポルトは、そうは言ったものの、自分の自慰をパトリツィアに知られてしまう状況に陥る事に精神がガリガリと削られるような気分になった。
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