傀儡妃は幼馴染の王太子をひたすら愛する

田鶴

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第2章 傀儡の王太子妃

35.継母のお茶会

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 パトリツィアは性知識に乏しく、挿入なしの素股でも夫と結ばれ、子供もいずれできるはずと思っているようだった。ルイトポルトは敢えてその誤解を解かず、夫に抱かれていると思わせていた。だが、ずっと誤魔化せる訳ではないのは、ルイトポルトも分かっていた。その時は残念ながら思ったよりも早く来た。

 ルイトポルトは、パトリツィア宛の夜会や茶会の招待状を止めてなるべく出席さないようにしており、主催もさせなかった。だが、実家の継母カロリーネ主催の茶会の招待状が、届き、ルイトポルトが知る前にパトリツィアは幼い弟ラファエルが心配で継母のお茶会への参加を決めてしまった。

 当日、パトリツィアは早めに実家へ到着し、継母に嫌味を言われたが、めげずにラファエルに会いに行った。ラファエルはパトリツィアの姿を見ると、飛びついてきた。

「お姉様!」
「ラファエル、大きくなったわね。いい子にしてた?」
「はい! お勉強も剣術も頑張ってます!」
「そうなの。本当に立派ね」

 パトリツィアは嬉しそうに抱き着いたままのラファエルの頭を撫でた。

「今度、貴方の剣術を見たいわ」
「じゃあ、今見て下さい! ゲオルグをやっつけてみせます! ねえ、ゲオルグ、僕、強いよね?」
「はい、坊ちゃまの剣筋はかなり良いかと存じます」

 ラファエルは、護衛騎士ゲオルグに剣筋を褒められ、嬉しそうだった。そんな小さな主人の様子をゲオルグの母で侍女のナディーンも優しい目で見守っていた。

「見たいのは山々なのだけど、今日はお継母様のお茶会のために来たのよ。遅れるとまずいからもう行かなくちゃいけないの。今度、見せてね。ごめんね、ラファエル」

 パトリツィアがお茶会に遅れれば、継母と義妹がラファエルに後で何をするか分からない。パトリツィアは断腸の思いでラファエルに今は見られないと告げたが、幼いラファエルには理解できなかった。

「嫌だぁ! お姉様! どうして?! あんなオバさんより僕の方が大事でしょ?!」
「ラファエル、もちろん貴方は私の大事な大事な弟よ……お願い、分かって」

 ラファエルは泣き出して床に転がって手足をバタバタさせて猛抗議した。公爵家の唯一の後継ぎにもかかわらず、不遇な扱いを受けているラファエルが気の毒で、ナディーンとゲオルグは自分達だけはと思ってついつい甘やかしてしまっており、ラファエルはこの2人だけが側にいる時、8歳という実年齢よりも幼い行動を押し通して我儘になってしまう。

 パトリツィアはラファエルの手足が当たって髪型が乱れるのも構わずに、暴れる弟を抱き留めて背中を撫で続けた。ラファエルは次第に大人しくなって仕舞いには泣きつかれて眠ってしまった。

「結局遅れてしまったわね。こんな事なら剣技を見てあげればよかった」
「また次があります。さあ、妃殿下、御髪おぐしを直したら奥様の所へ参りましょう」
「そうね。それではゲオルグ、ラファエルを寝台に運んで頂戴」
「はい、かしこまりました」

 パトリツィアはゲオルグに助けてもらってラファエルを寝台に寝かさせ、ナディーンに髪型をさっと直してもらってお茶会会場となっている温室へ向かった。温室に入ると、招待客の目が一斉にパトリツィアに集まったが、その視線はあまり好意的に感じられなかった。

「今日は招待してくださってありがとう」
「ああ、妃殿下がいらしてよかった。もういらっしゃらないかと思っていたのですよ」

 王族が招待されたお茶会に遅れて出席したり、途中で帰ったりするのはよくある事なのに、カロリーネはパトリツィアとの関係を結婚前と同じようにとらえ、パトリツィアの遅刻を暗に責めたので、パトリツィアは仕方なく継母に近づいて小声で謝った。

「妃殿下、お気になさらずに。さあ、お座りになって。今日はとして色々とをしようと思っているのですよ」

 パトリツィアはカロリーネと同じテーブルに着席させられたが、義妹ガブリエレの姿はなかった。実はガブリエレも出席したがっていたものの、成人間もないということで母親のカロリーネが出席させなかった。クレーベ王国の成人年齢は15歳で、ガブリエレは昨年その歳を迎えているので、パトリツィアは怪訝に思ったが、緊張のあまりすぐにその事はパトリツィアの頭から抜け落ちていった。
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