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第3章 激動の王国
52.改革の光と陰
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ベネディクト達の断罪から1ヶ月後、平民と貴族を同数の定員とする議会設置が決定した。正式な選挙が行われるまでは暫定議員として民主派の平民から代表が選ばれ、現議員の貴族と共に議会を支える。
暫定議会では、平民と貴族の垣根を低くする改革がさっそく行われた。貴賤結婚が結婚前の地位を維持したままで認められ、結婚で平民が爵位継承者の配偶者になったり、貴族の養子になったりして爵位継承することも可能になった。それまでは貴賤結婚すれば両方とも平民になる規定であった。この決議に至るまで保守主義の貴族が大反発していたが、民主化運動の賛同者が王宮を取り囲んで圧力をかけたので、保守強硬派も仕方なく受け入れるしかなかった。ルイトポルト自身は、新しい時代が来た以上これは避けられない改革だと肯定的に受け止めていた。
断罪後、前王妃マレーネ、反乱分子とされた前王弟ヨアヒム、元宰相ベネディクトと元宰相派の貴族は、王宮の地下牢か市中の刑務所に捕らえられており、牢はほとんど満員御礼である。
ベネディクトのツェーリンゲン公爵家を始め、元宰相派貴族の家は取り潰された。その使用人達は、明らかに罪を犯した者を除いて、王室や王太子派の貴族、市井の裕福な家に引き取られつつあるが、全員の行き先が決まった訳ではなく、元使用人達やその家族の間で不安が広がっている。
それに急に人件費の負担増を強いられた者達の不満も高まりつつある。特に昨今、領地経営だけでは懐事情の厳しい貴族が多い。それなのに商売をするのは下賤の民のする事だという旧態依然の意識が抜けきらない。かと言って全ての使用人達の給金を王室が払う余裕もないし、彼らを無職のまま放置したら民主過激派――革命派――の恰好の餌食となる。取り潰された家の元使用人達の行く末は、徐々に大きな問題となっていった。
断罪から3ヶ月後、マレーネ、ヨアヒム、元宰相ベネディクトとその一門の処分が決まった。断罪直前に出奔した王太子妃パトリツィアは公式には行方不明とはされず、病気療養で離宮に滞在すると発表されたが、世間は事実上の幽閉ととらえた――いや、そういう風に受け止められるようにアントンが工作した。
マレーネは愛人達と共に歳費以上の金銭を使えるように横領を繰り返し、その放蕩振りが国民に広く知られていたので、無罪放免にはできず、修道院に送られて幽閉される。
ベネディクトと元宰相派の当主達は処刑される事になった。ヨアヒムを含むその他の男性達は、余程の高齢でなければ、去勢された後にどこかの教会か修道院で神職に就かされる。女性は女子修道院で修道女になるか、そうでなければ出産可能な期間、長期摂取すると不妊になる避妊薬を飲まされ続け、監視付きで孤児院で働く。
元宰相一派の家の幼い子供達は教会付属か王立の孤児院で育てられ、成長したら今の大人と同じ処分を受けることになった。
クレーベ王国と近隣諸国の教会を統べる中央教会は、元宰相一派の大部分を押し付けられる事になり、強気になって多額の寄付を要求した。そのため、ずっと牢に収容しておこうとか、いっその事、全員処刑してしまおうという意見も臨時議会で特に民主派出身議員から出て紛糾した。
牢は短期収容ならギリギリ何とかなるものの、生存中の処分対象者達全てが寿命を迎えるまで収容し続けるとなると、通常の受刑者の収容場所がなくなってしまう。一方、元宰相一派のために新たな収容施設を造るとしたら、大金がかかり、その後も維持費と人件費がかかる。かと言って全員処刑していては、あたかも新政府が恐怖政治を行うかのような印象を植え付けてしまう。したがってこの処分は苦渋の末の妥協の産物であった。
それでも新政府は中央教会の要求した多額の一時金を支払えないので、教会が受け入れている処分対象者の人数に従った一定の額を毎年寄付すると取り決めた。その上、元宰相一派の子女を受け入れる王立孤児院は定員数を増やすために施設改修や新たな職員を雇い入れたりしてここでも新政府の負担が増えた。このようにして新政府の不安材料は休火山のマグマのように地下でくすぶり続ける事になってしまった。
暫定議会では、平民と貴族の垣根を低くする改革がさっそく行われた。貴賤結婚が結婚前の地位を維持したままで認められ、結婚で平民が爵位継承者の配偶者になったり、貴族の養子になったりして爵位継承することも可能になった。それまでは貴賤結婚すれば両方とも平民になる規定であった。この決議に至るまで保守主義の貴族が大反発していたが、民主化運動の賛同者が王宮を取り囲んで圧力をかけたので、保守強硬派も仕方なく受け入れるしかなかった。ルイトポルト自身は、新しい時代が来た以上これは避けられない改革だと肯定的に受け止めていた。
断罪後、前王妃マレーネ、反乱分子とされた前王弟ヨアヒム、元宰相ベネディクトと元宰相派の貴族は、王宮の地下牢か市中の刑務所に捕らえられており、牢はほとんど満員御礼である。
ベネディクトのツェーリンゲン公爵家を始め、元宰相派貴族の家は取り潰された。その使用人達は、明らかに罪を犯した者を除いて、王室や王太子派の貴族、市井の裕福な家に引き取られつつあるが、全員の行き先が決まった訳ではなく、元使用人達やその家族の間で不安が広がっている。
それに急に人件費の負担増を強いられた者達の不満も高まりつつある。特に昨今、領地経営だけでは懐事情の厳しい貴族が多い。それなのに商売をするのは下賤の民のする事だという旧態依然の意識が抜けきらない。かと言って全ての使用人達の給金を王室が払う余裕もないし、彼らを無職のまま放置したら民主過激派――革命派――の恰好の餌食となる。取り潰された家の元使用人達の行く末は、徐々に大きな問題となっていった。
断罪から3ヶ月後、マレーネ、ヨアヒム、元宰相ベネディクトとその一門の処分が決まった。断罪直前に出奔した王太子妃パトリツィアは公式には行方不明とはされず、病気療養で離宮に滞在すると発表されたが、世間は事実上の幽閉ととらえた――いや、そういう風に受け止められるようにアントンが工作した。
マレーネは愛人達と共に歳費以上の金銭を使えるように横領を繰り返し、その放蕩振りが国民に広く知られていたので、無罪放免にはできず、修道院に送られて幽閉される。
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元宰相一派の家の幼い子供達は教会付属か王立の孤児院で育てられ、成長したら今の大人と同じ処分を受けることになった。
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牢は短期収容ならギリギリ何とかなるものの、生存中の処分対象者達全てが寿命を迎えるまで収容し続けるとなると、通常の受刑者の収容場所がなくなってしまう。一方、元宰相一派のために新たな収容施設を造るとしたら、大金がかかり、その後も維持費と人件費がかかる。かと言って全員処刑していては、あたかも新政府が恐怖政治を行うかのような印象を植え付けてしまう。したがってこの処分は苦渋の末の妥協の産物であった。
それでも新政府は中央教会の要求した多額の一時金を支払えないので、教会が受け入れている処分対象者の人数に従った一定の額を毎年寄付すると取り決めた。その上、元宰相一派の子女を受け入れる王立孤児院は定員数を増やすために施設改修や新たな職員を雇い入れたりしてここでも新政府の負担が増えた。このようにして新政府の不安材料は休火山のマグマのように地下でくすぶり続ける事になってしまった。
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