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始めに動いたのは五条だ
「行くぞ!」
縮地で近づいてきたのか一瞬で間合いを詰める
ブンッ
短剣による刺突をしてくる
あぶね!なるほどな、これで戦ってきたのか。確かにこれならある程度の相手には勝てそうだな
身体能力を正直者で強化して後ろに避ける

「なんだよ。逃げるのかよ!そんなんじゃ琴音を任せるなんて無理だな」
別になんと言われようがどうでも良いが、こいつに言われるとくっそ腹立つな。仕方ないしプライドをズタボロに出来るような倒しかたでも考えるか

「すまん、すまん。どう勝つかを考えていたんでな
次からはしっかりとやるからぱぱっとやっちまおうぜ」
「てめぇマジ殺してやる!まぐれで避けたぐらいで調子に乗んな!!縮地!」
正面から突きをしてくれば右足を下げて左手で軌道をずらし、右手で手首を掴んで足払いと同時に腕を引くことで投げ飛ばす
「ガッ!!」

受け身をとらずに頭から落ちたので不思議な声が出た
「さ、さとうー!俺にこんなことしてただですむと思うなよー!」
何度も縮地で近づき短剣で刺す

何度も同じような攻撃が来るので段々と慣れてきた
もうほとんど動かずに体を捻るだけで避けるか捌くことが出来るようになった
「どうした?五条さん!全然当たらんぞ?」
捌きながら話しかける
「う、うる‥さい。今に倒してやる」
って言ってるそばから突くスピードが遅くなってるんだが

もうそろそろ良いかな
スピードが落ちて捉えるのが簡単になったので、五条の一突きに合わせて一発顔面に拳をいれる

後ろに回り込まれたりはしたが軸足を中心に回転して対応する
相手の一突きに対して顔面に一発拳を当てる
そんな状態が二分ぐらい続き
なんだ、こんなもんなのか。クラスメイトがほとんど殺された中で生き残ったからもっと強いと思ってたぞ
こんなことならもっと速く決着つければ良かったな。時間を無駄にした

パシッ
「もういいわ。お疲れさん」
片手で腕を引きもう片方の腕で腹に重い一撃をいれる
「き……さ……ま~」
もうすげーな、こいつの闘争心は
気絶しながらも足首をずっと掴んでいる

「そこまでだね。サトー君」
「アンリエッタさん」
「この決闘はサトー君の勝ち、コトネちゃんだっけ?」
「ん」
「君も着いていくんだろ?なら行くと良いよ。ギルド長としては実力者の二人を引き留めたいんだけど拘束はできないしね」
ギルド長の許可も出たことだしさっさと行くか
「行こう」
御堂が隣に来て言う
「そうだな。でもその前に」
馬車を嘘で直す

「不思議な力を使うんだね。佐藤君は」
「まあな」
「琴音ちゃんをよろしくね!私たちじゃあんなに楽しそうな表情引き出せないから」
「任せとけ、仲間になるなら本気で守るつもりだからな」
「そっか。それなら安心だね」
そう言って馬車のところに戻っていった

「俺たちも行くか」
「うん!でも何しに行くの?」
コテンと首をかしげながら聞いてくる。仕草は可愛いがもう少し小さかったら完璧だったのにな

「じゃあそろそろ僕たちは行くね。他のギルドメンバーがもう向かってるからあんまり遅くなるわけには行かないんだ」
「そうか、それじゃあこれで。俺たちも行くわ」
「うん」
馬車が動きだした。御堂は遠ざかっていく馬車を見つめている
「本当によかったのか?俺と一緒にいたいなんて」
「やっと二人きりになれたよ~」ギュー
腕に抱きついてくる
こいつは狙ってやってるのか?
前からそうだったが抱きつく度に胸が当たっている。母よりもボリュームがあるのでなかなかに気持ちが良い

「それでどこ行くの?」
そういえばまだ目的って話してなかったな
「観光だ。この世界を面白おかしく旅する」
「そっか、なら一緒に旅行だね」
まあそう言えなくもないか
「まずはここから近い所に行こう。街でも村でもどこでも良いしな」
「なら一日せずに村につけるはずだよ。マナプルの回りには多くの集落があるって聞いたことがあるよ」
そうなのか、ならすぐに見つかりそうだな
この土地周辺の情報を解析する。ここから三時間ほど歩いた場所に農村があるみたいなのでそこに向かうことにする

「農村なんてなかなかに行かないから楽しみだな~」
「それはそうだろ、俺たちは科学の発達した地球から来てるんたから」
「それはそうだけどさ、一回はやってみたいじゃない農業って」
そんなに農家がやりたかったのか。某番組でアイドルが農業をやってるから華やかなイメージだが本来の農業は地道なものだぞ

二人で話ながらたまに出てくる魔物を倒しながら進む
そして三時間歩いた頃やっと村に着いた
その村は回りに木の柵を立てていて、入り口に門番らしき人が二人いた

「お、可愛い子を連れてるな少年」
熊みたいな体格の人が絡んでくる
「通りたいんだがいいか」
「おいおい、俺を無視するなよ!良い体の嬢ちゃんじゃねーか
ちょっと貸してくれよ」
どこにでもこういう奴はいるんだな、門番なのにこんなんで良いのか?しかし、御堂はもう仲間にしたし、篠宮にも頼まれたからな

御堂に伸ばしていた手を掴み一本背負いの体制で脳天から叩きつける
バタンッ

一撃で気絶したようで完全に動かなくなった
「さて。お前はどうする?」
もう一人の門番に声をかけると
「ま、待った待った。いきなりすまなかった。これはただの恒例行事みたいなものなんだ」
「恒例行事?」
「そう、知らない土地でいきなり彼女が教われそうになったら彼氏はどうするのかってもんだ」

どんなドッキリだよ、くだらない
「謝らんぞ」
「ああ、それは心配ないよ
悪いのはそこに転がってるバカだからね。ギルドカードとかの身分証を見せてくれるかな。門番としてのお仕事だからね」
二人でギルドガードを見せ中に入る
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