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後悔

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 いらっしゃいませ、お客さん。こんな時間にお子様とお越しくださるなんて。まだ1歳?いやはや可愛らしい時期ですなぁ。あれ、お客さんどうしました?可愛くなんてない、と。旦那さんは一切家事を手伝わない人なのですね~大変ですなぁお客さんも。殺したい、と。ふふっ、お客さん物騒な話はさておきメニューどうなさいますか?私としては当店名物『涙』なんてどうかと思いますけどね。今のお客さんにピッタリな品が入っているんですよ。お、それになさいます?ご注文ありがとうございます。今日の『涙』『後悔』を承りました。


『後悔』
 んんっ、ここはどこだろう。僕確か...、あぁそうだ僕死んだんだった。未練があると幽霊になるって聞いたけどまさか自分がなるとはなぁ。僕にとっての未練ってなんだろう。会いたい人はいないし、家族も好きじゃない。僕んちはね、母親しか居ないんだ。父親はいるんだけどお母さんを殴るしあんなの父親なんかじゃない、だからお母さんがずっと育ててくれてたんだよね。え、感謝?ないよそんなの。だって僕嫌われてたもん。あなたがいるから、死んで欲しいって言われてたんだよ?そりゃ僕だって好きで生まれたわけじゃないし産んだのあんただよねって言う話。って自分で語ってたら急にムカついてきた。せっかくだしお母さんの顔でもおがみにいこっと。
 僕ね、いつも夜中にお母さんが殴られてたの知ってたの。それも僕のせいで。だからお母さんはいつもお父さんがいる時僕をなじる。しねって言ってくるの。それにお父さんは僕を殴らないけどお母さんは僕を殴ってくるの。だから僕腕アザだらけなんだよ。
 でもね毎日がだから自殺したとかじゃないんだ。別に死にたくなかったし交通事故なんだもの。仕方ないよね。でもこれで良かったって思ってるんだ。だってお母さんはもう殴らなくて済むし僕がいない方がいいに決まってる。
 だから僕ね、お母さんが僕の写真をもって泣いてるのを見ちゃってびっくりしたよ。なんで嬉しくないの?って。だって絶対喜ぶと思ってた。だからお母さんなんで謝るんだろうって。 
 ほんとはね、僕全部知ってたの。お母さんが僕を殴る理由。お母さんが殴らないとお父さんが殴ってくるんだよね。お父さんは力が強いから、お母さんはいつも力を入れずに殴ってきてたよね。ご飯抜きにした時も、暖かい夜食こっそり作ってくれた。見えるところにアザを作って周りの人に助けて貰えるようにしてくれた。夜中にぼくのとこにきて謝ってたの寝たふりしてたけど知ってるんだ。だからね、僕はお母さんが死のうと知ってたのも知ってる。自分で車の前に飛び出したことも知ってる。僕はお母さんを守ろうとして死んだことも、お母さんが悲しんでいることも本当は知ってたんだ。
 だからねお母さん、もう後悔しないで。僕は毎日が楽しかったんだ。お母さんがいたから。嘘じゃないよ?
  
愛してるよ、お母さん



いかがでしたか?ハンカチ入りますか?それでこの子の面倒みるの辛いなら実はお客さんに施設に入れるなど提案があるのですが。ほう、自分で育てたいと。大丈夫ですよ、あなたはきっといい母親になれます。代金は結構ですよ。あなたの美しい『後悔の涙』を代わりにちょうだいします。それではまたのご来店お待ちしております。
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