吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

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雪女と濡れ女②

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「こんのウシ乳糞ビッチ!! いい加減カチンコチンのシャーベットにしてやるわ!!」

「あらもう、見かけによらずあなたも結構際どい発言するんじゃない。彼のナニがカチンコチン――――」

「誰もそんな事言っとらんわッ――――――!!」

ドゴンどばんザバーンと色んな意味で真逆の属性を持つ二人が大海原の真ん中で激しくぶつかり合う。その傍らではそんな二人の女妖怪のテンションについていけないと氷山の片隅に腰を下ろし、肩を並べて観戦モードを決め込んだ相一と璃亜の姿。

「所長、直に氷へ座り込むのはお腹に良くありませんよ、これを」

璃亜は自分の首にかかっていた大き目のタオルを即席の座布団として二人の下へ滑り込ませる。

「お、サンキュ」

「お、サンキュ――――じゃないわよ!! 何さっきから二人して呑気に観戦モードに入ってんのよ!?」

大きく振るう右腕と連動する様に薄く鋭い氷の刃を撃ち出しながら雪女が吠える。

「そうよぉ――――折角なんだからみ・ん・な・で、楽しみましょう?」

濡れ女こと水張雫は氷柱と一度距離を取り両手を軽く合わせた。パンと乾いた音を飲み込むように、ゾゾゾゾゾゾと。

相一達が乗る氷山を覆う様に海面から水柱が――――否、最早壁と呼んでも差し支えない規模の水量が迫ってくる。

「おいおいこれはちょっと…………」

素早く腰をあげ事態に備える相一と璃亜の二人。

そしてその二人を庇う様に青白ツインテールを振り回す小柄な少女が躍り出る。

「だぁから! そう簡単にくれてやるかって――――のッ!!」

遠投でもするかのような体勢から放たれたのは先端が螺旋状にかたどられた巨大な氷塊だった。

軽自動車ほどのサイズを誇るそれは真っすぐに、吸い込まれるように海水の壁へと叩きつけられた。

ドッパァアアアアン!! という衝撃音と水飛沫をまき散らしながら周囲から迫りくるドーム状の水壁に大穴を開ける事に成功する。

人間三人が悠々と通れる程の水のトンネル。ほんの一瞬の隙間ではあったがそれを見逃すほど悠長に構えている筈も無い。

「さすが、頼りになるぜ」

「当然でしょ、あたしを誰だと思ってんのよ」

雪女の成果を称えつつ、トンネルの先へと彼女が伸ばした氷の足場に飛び出そうとする相一とそれに追従する様に駆け出した氷柱。

その時、それに気づいたのは璃亜だけだった。

前後左右から巨大な滝が押し寄せて来ているも同然の状況で、璃亜だけが冷静に『その先』を見据えている。

「待ってください二人とも!」

咄嗟の呼びかけはさらに大きな水音にかき消された。
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