吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

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吸血鬼と狼男④

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夏祭りで賑わう街の中心から離れた位置にある、とある廃工場。今は活動していない筈のその場所から、以前工場が動いていた時以上の轟音が響き続けている。

「クッハハハハハハハハハ!!」

「はぁああああああああああッ!!」

轟音の正体は吸血鬼と人狼という尋常ならざる力を持った大妖怪同士の衝突である。

拳による突きは大岩に穴を穿ち、強靭な脚から繰り出される蹴りは大木をなぎ倒す破壊力を秘めている。
そんな力を持った者同士が全力でぶつかり合えば周囲の地形を僅かとはいえ変化させる程の暴力の嵐を生むのは当然の結果と言える。

「こ――――のッ! いい加減に倒れたらどうですか犬畜生!!」

猛獣と化した人狼の蹴りを捌き、鉄骨さえ切り裂く鋭爪を躱し、自分より二回りも大柄な獣人状態の銀月に渾身の力を込めた拳を叩き込んでいく璃亜。

ドズズンッ!! と、周囲を揺るがすような衝撃が人狼の正中線を寸分狂わず貫いた。

――――だが。

岩盤にヒビを入れることなく穴を開けられる突きをその身に受けても、彼は膝をつくことすらなかった。

「ゥぐッ、――――ク、クハ。いいぞ! もっと、もっとだ!! このメチャクチャな威力、さっきまでの俺なら意識が飛んでてもおかしくねえ! だが耐えた! アンタと戦えば戦う程俺は強くなれる!! 無尽蔵に経験値が稼げるみてえだ!」

「人の事をボーナスステージ扱いするのはやめて、――――くれませんか!!」

左脚を軸にした強烈な回し蹴りがほんの一瞬硬直した銀月の脇腹へ深々と食い込んだ。

(これなら――――ッ!?)

今度こそ渾身の一撃を叩き込んだという感触。位置、角度、スピード、どれをとっても最高の一撃だ。い
かに満月の光を浴びる人狼であれ蹴り潰せる自信が璃亜にはあった。

それでも。

「ごブッ、グはぁ、ハハ。ほんと…………愉しいなあ最高だよアンタあ!」

発達した犬歯をむき出しにし、獰猛に笑う口元から赤い液体が漏れる。

「くッ――――!!」

ふわりと、気味の悪い浮遊感が吸血鬼を包む。

銀月が己の脇腹にささるスラリとした脚を掴んでいた。

「 ――――でも、まだ駄目だ。さっきからあの人間を気にして、全力を出しきれていない。あの死にかけの人間がいなければアンタはもっと強さを発揮できるだろう、だから…………先にてめえから死んどけよ人間ッ!!」

ナイフ投げの様に相一に狙いを定め腕を振りかぶる。

そして。

「所長ッ!! 逃げ――――」

躊躇なく振り切った。
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