吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

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海に行こうぜ

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「海、ねぇ…………」
警察組織に詳しくない相一でもその立場が低くない事が分かる警視監という役職に就いている安曇野乃里子。彼女との通話を終えた相一はぼんやりと窓の外を眺める。

「なによ相一あんた海行くの?」

「ここからだと…………断波海水浴場が一番近いですね…………」

相一が通話をしている間すぐそばで据え置きゲーム機でレースゲームに興じていた二人が反応を見せる。
青白いツインテールが特徴の中学生ぐらいの少女、白山氷柱はいつも通り来客用ソファに寝転びながらコントローラーと一緒に体を左右に揺らしている。

その隣では、小さな体格に似合わないゴツイヘッドホンを首から下げた黒髪おかっぱ少女の三千千里が同じようにコントローラーを握りながら画面に映る自分のマシンに合わせて体を揺らしていた。

「海に行くって言っても仕事だからな。遊びに行くわけじゃ――――」

言いかけたその時、事務所の扉が勢い良く開かれ元気が有り余ってる感のある少女の声が飛び込んできた。

「皆さん!! 海行きましょう、海!!」

ドバーンという効果音が似合いそうな登場をしたのは、近所の高校に通っている華も恥じらう…………かどうかは知らないが動く度に上下に揺れるサイドテールが特徴である中原詩織だ。

「…………詩織ちゃんさぁ、ウチに盗聴器仕掛けてたりしないよな?」

「? してませんけど? あ、お邪魔しまーす」

きょとんとした表情を浮かべながら氷柱達の向かい側のソファに腰掛ける。

「そういえば詩織ちゃん夏休みに入ってから毎日ウチ来てるけど友達と遊びに行ったりしねぇの。――――それとも最近の女子高生ってみんなそんな感じなのか?」

パキン、と部屋の空気が凍りついた…………気がした。

「…………」

「えっあれ何この空気? 氷柱お前ちょっと部屋の気温下げ過ぎじゃない?」

「…………」

「だからなんでこういう時真っ先にあたしに振るのよあんたは!?」

「…………」

「あの…………詩織ちゃん……………?」

おどおどしながらもこういう場面で最初に動けるのは意外と千里であることが多いようで。

「…………いえ、別に気にしてないですよ? 元々友達と呼べる人なんか数える程しか居なかったですし去年その子がいなくなっちゃってクラスで多少会話がある程度の人達もその子の友達で友達の友達みたいな関係だったしその子がいなくなってしばらく私自分でも分かるぐらいやつれて荒んでましたし周りから距離置かれても仕方ないなって思いますし――――」

「悪かった! 俺が悪かったから!! いいよな海! 行こう海、みんなで行こう、なっ!?」

俯きながら低級の妖怪なら怯えて逃げ出しそうな呪詛のようなものを呟きだした女子高生を見てこれはマズイと事務所の代表が行動を開始する。

「海、いいですね…………! 行きましょうみんなで…………!」

「探偵さん、千里ちゃんも…………」

詩織の表情に僅かな光が戻る。

「そ、そうよ詩織!! 学校に友達なんか居なくたってあたし達と一緒に行けば良いじゃない!」

ビュゴゥッ、と部屋の気温が2度は下がった気がした。

「氷柱ちゃァァあああああん!? 雪女だからってそんな方法で部屋を温度下げなくて良いんだよォォおおおおおお!?」

「え、ちょっ、違…………ご、ごめん詩織! そういうつもりで言ったんじゃ――――ッ!!」

「うふふふふふふ、いいのいいのよ氷柱ちゃん。自分でも分かってるからうふふあはは」

「ひィっ!? 詩織帰ってきなさい! あんた女子高生としてしちゃいけない顔しちゃってるわよ!?」

その後、うふふとかあははしか言わなくなった女子高生を事務所総出で正気に戻すために一騒動あったのだがそれはまた別の話である。
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