19 / 24
第1章 出会いと経験
第19話 『風雷拳』始動
しおりを挟む
先日ジュンタたちはパーティの手続きをした。パーティ名は「風雷拳」。3名の中でランクが上のハルドをリーダーとし、注意事項を聞きながら登録をした。翌朝、ジュンタとハルドはいつもより早く家を出てシーヤと合流し、ギルドにやってきた。
ハルド「てな訳で、クエストを受ける前にだ。パーティのルールを決めていこうと思う。」
ジュンタ「確かに、親しい仲で組んだとはいえ、チームとして動く以上ルールは必要だよね。」
シーヤ「そうよね。でも、具体的にどうすればいいのかな?」
「風雷拳」のメンバーは早速ルールについて話し合いを始めた。パーティ運用において、ルールはメンバーをまとめる大事な要素なのである。
ジュンタ「うーん、まずは基本的な所から決める?例えば仲間や周りの人に挨拶をするとか。」
ハルド「そんな事でいいのかよ?」
ジュンタ「うん。なんだそんな事かって思うような事こそ、ちゃんとルールとして定めるべきだと思うんだ。」
ジュンタ「シーヤさんは何か意見ある?」
シーヤ「えっと…」
ジュンタとシーヤは昨夜からタメ口で話すようになった。ハルド曰く、仲間内で敬語を使う事に違和感があるからだそうだ。
シーヤ「ごめんなさい。守らなきゃいけないことはいっぱいあると思うんだけど、多すぎて思いつかないわ。」
ジュンタ「そうか…」
ハルド「そういえばジュンタ、お前メモ帳買ったらしいな。そいつに意見書き出せばいいんじゃね?」
ジュンタ「そうだね。じゃあ、挨拶は意見として書くよ。」
ハルド「他には何かねえか?」
シーヤ「じゃあ、パーティのお金の使い道は皆で相談して決めるっていうのはどうかしら?」
ハルド「そいつぁ凄くいいと思うぜ。」
ジュンタ「それも書いとくよ。あと、俺からも1つ。」
ハルド「聞かせてくれ。」
ジュンタ「冒険者に限らず人としてコミュニケーション能力は大事だと思うんだ。だから挨拶をするっていう意見も出た訳だし。」
ハルド「まあ、そうだな。」
ジュンタ「これもコミュニケーションの一環なんだけど、俺の故郷に『報連相』って言葉があるんだ。」
ハルド「ホウレンソウ…?」
シーヤ「何それ?」
前世のコミュニケーションにおいて大事にされる「報連相」という行為。「報告・連絡・相談」の3つのポイントの略で、集団に属する習性があるヒトにとって無くてはならない習慣である。物事を進める時の定期的な「報告」、指示や体調などの情報を伝える「連絡」、そして困った時の「相談」。これら3つが行き届いていないと冒険者の場合、クエストを受けづらくなったり、ランク昇格試験の受験資格を得られなくなったりと損することが多い。
ハルド「なるほど。聞き馴染みのない言葉だが、確かに真っ当な考え方だ。」
シーヤ「私も凄くいいと思うわ。」
ジュンタ「どうもありがとう。」
ハルド「ルールはあんまり多くても大変だろうし、1回まとめようぜ。」
ジュンタ「うん。そうしよう。」
冒険者パーティ『風雷拳』のルールは以下の通りになった。
・仲間や周りの人に必ず挨拶する
・お金の使い道は皆で決める
・「報連相」は欠かさない
・ルールの追加や削除は話し合いで決める
ハルド「こんな感じでいいんじゃねぇか?このルールに賛成の奴は挙手。」
2人「はい!」
ハルド「決まりだな。んじゃ、せっかくだしこのままクエスト受けに行かねえか?」
2人「賛成!」
ルールを決めたジュンタ一行はクエストを受ける為に受付からクエストリスト借りる。
ハルド「せっかくパーティで動くなら、戦闘が発生するクエストがいいな。」
ジュンタ「そうだね。実戦経験を積むのは大事だ。」
シーヤ「でも私は、戦いにそんなに自信ないわ。」
ジュンタ「大丈夫。君一人で戦う訳じゃないんだ。心配いらないよ。それに、今は杖があるから魔法を連発できるでしょ?」
シーヤ「ええ。」
ハルド「心配なら魔法場でウォーミングアップするか?30分までなら無料だしな。」
シーヤ「じゃあ、お願いするわ。クエストもあるし、時間はそんなにかけないから。」
クエストを受けてからシーヤのお願いで魔法場でウォーミングアップを済ませた。初対面の時と違い杖があるため、魔法は安定して使えるようだ。
パーティで初めて挑むクエストは…
一般クエスト
内容:ゴブリン20体、オーク10体の討伐
報酬:個人→500ℳ パーティ→1000ℳ
受注資格:Dランク以上
※パーティで受注する場合、リーダーの冒険者ランクがD以上だと受注可能。ゴブリンの腰巻きとオークの毛皮を討伐数と同数持ってクリア報告をすること。
シーヤ「ホントにこれやるの…?その…数多くないかしら?」
ハルド「だからパーティで動くんだろ?」
ジュンタ「そうそう。それに、一気に30体を相手することはないから。」
シーヤ「ええ。頑張ってみるわ。」
一般クエストをパーティ名義で受注した後、風雷拳一行は森へと向かった。
ジュンタ「そういえば、俺たちが協力して戦うのは初めてだよね。作戦は立てなくていいの?」
ハルド「その事だが、もう考えてあるぜ。」
シーヤ「もう!?どんな内容なの?」
ハルド「ここで重要なのは、3人とも戦い方が違うって事だ。しかもそれは、パーティでの戦いにおいては有利だ。」
ジュンタ「確かに、それぞれ役割があった方が戦いやすいよね。」
ハルド「んで、その肝心な戦い方だがよ。まずジュンタ、お前には先陣を切ってもらう。得意な格闘術やナイフ捌きで敵を倒しまくってくれ。」
ジュンタ「なるほど。前に出て戦うのは俺が適任って事か。」
ハルド「そしてシーヤ。お前には、後ろから魔法で援護してもらう。前衛に隙ができた時にカバーするんだ。」
シーヤ「ええ、分かったわ。」
ハルド「そして俺は、お前らの間で戦う。ジュンタの事を魔法で援護できるし、シーヤに攻撃が飛んできても、俺なら打ち消せる。何より、真ん中にいた方が指示が通りやすい。」
ジュンタ「かなり合理的な作戦だね。全部ハルドが考えたの?」
ハルド「まあな。こちとら伊達に1年やってきてねえぜ。」
ジュンタ「流石だ。シーヤさんも一緒に頑張ろう!魔法使えるようになったから大丈夫だよ。」
シーヤ「ええ、ありがとう。そう言ってもらえると頑張れそうだわ。」
ハルド「…さて、早速お出ましだぜ。」
森の茂みからゴブリンが飛び出してきた。
シーヤ「上手くできるかしら…ゴクリ…」
ハルド「そんじゃあ、作戦通りに頼むぜ。」
ジュンタ「了解!」
先程話した通り、まずはジュンタが電光石火の如く、敵に切り込む。
ジュンタ「シュッ!」
一瞬で距離を詰め、強烈な袈裟斬りを叩き込み、ゴブリンが1体断末魔を上げた。
ハルド「いつ見ても速ぇな。俺たちも行くぞ。」
シーヤ「ええ。」
後の2人も、ジュンタに負けじと続く。
ハルド「《エアー・剣裂》!」
シーヤ「《エレキ》!」
2人の魔法がゴブリンを1体ずつ仕留めた。
ジュンタ「2人ともナイス!これなら、後隙を埋められる。」
連携のとり方を何となく掴んだ3人は、順調にゴブリンの群れを撃破したのだった。
討伐数
ゴブリン5/20体 オーク0/10体
ハルド「初めてにしては上出来だったな。」
ジュンタ「そうだね。俺の攻撃の直後に魔法を撃ったのは良かったよ。見事に俺の隙をカバーしている。」
シーヤ「私も、ここまでちゃんと戦えたのは初めて。2人ともありがとう。」
ジュンタ「こちらこそ、勉強になったよ。」
ハルド「おっしゃ!この調子でどんどん倒しまくるぞ!」
2人「おー!」
ジュンタたちはあれからゴブリンを少しづつ倒していき、森を深く進んだ。
討伐数
ゴブリン20/20体 オーク0/10体
ジュンタ「今のところ、オークにはまだ会ってないね。」
シーヤ「うん。オークはゴブリンより少し強いって聞いたけど大丈夫かしら。」
ハルド「そこは心配ねえ。確かに、オークはちょっとだけ倒しにくいが、個体数はゴブリンより少ねぇ。個人の初心者だと手強いがパーティで動く分には問題ねえだろ。」
ジュンタ「ゴブリンの時も連携取れてたし、落ち着いて戦おう。」
シーヤ「そうね。1人じゃ怖かったけど、皆がいれば大丈夫!」
オークとの戦いに向けて、戦闘に不慣れなシーヤが気合いを入れ直したところで、オークと遭遇した。
ハルド「ようやく見っけたな。しかも、まさかの10体。」
シーヤ「オークが…10体…」
ジュンタ「どう?やっぱり、不安が残る?」
シーヤ「ええ。あなた達には何度も話したと思うけど、強そうな魔物が目の前にいるとどうしても不安なの。」
ジュンタ「そうか…自信が無い事に挑むって、どうしても恐怖が残っちゃうよね。だけど、仕事である以上避けられない。でも大丈夫。俺たちがついてるから。」
シーヤ「っ!」
シーヤ(俺たちがついてる…)
ジュンタ「…シーヤさん?」
シーヤ「え…ええ、そうね。私頑張る。ゴブリンの時のように。」
ハルド「ほら、早くしねぇとオーク行っちまうぞ。」
ジュンタ「そうだった。」
ハルド「今度はパターン変えてみるぜ。まずは、シーヤの魔法で不意打ち。そこから、俺ら2人で一気に突っ込む。パーティ戦はあらゆるパターンを持っとくことが大事だ。行けるか?」
シーヤ「ええ。頑張るわ。」
ハルド「それじゃあ、作戦開始!」
シーヤ「いっけー!《エレキ》!」
雷魔法を前方広範囲に放った。ファーストヒットでオークたちに直撃し、怯んだところで、ジュンタとハルドが同時に突撃する。
ジュンタ「今だ!」
ハルド「おっしゃ行くぞ!」
ジュンタ「ハアァッ!」
先にジュンタがオークの懐に潜り込んで、一撃を入れる。
ジュンタ「《裡門頂肘》!」
ドゴンッ!
凄まじい炸裂音が響き渡り、オークがもんどり打って吹き飛ばされ、一撃で絶命した。
《裡門頂肘》
→八極拳の技。肘を使った超至近距離での体当たり。相手を肘の一点で捉え、震脚(強い踏み込み)と共に全身で強打する破壊力抜群の一手。八極拳の技はいずれも、まともに喰らえばひとたまりもない。
ハルド(えげつねぇ…何つー威力してやがんだ。ドゴンッ!って聞こえたぞ今。あん時もらってたらやばかったな…。)
ハルド「やるじゃねぇか!ならこっちも…」
ハルド「スキル発動!《突進》!」
ハルド「からの、《エアー・圧弾》!」
続いてハルドもスキルを行使し、流れるように魔法のコンボでオークを狩った。
ジュンタ「《燕返し》!」
ハルド「《エアー・剣裂》!」
シーヤ「《エレキ》!」
《燕返し》
→日本の剣術の技。二発の斬撃を素早く反対に放つ。
ジュンタたちはそれぞれの役割を己の技で全うした。無事ゴブリンとオークをそれぞれ指定数討伐に成功し、町に戻ってクエストクリアの報告をした。
ハルド「俺たちでの初クエストクリアって事で、パーッと飲み明かさねぇか?」
ジュンタ「でも俺とシーヤさん酒飲めないよ?」
ハルド「細けぇこたぁ気にすんなって。さぁ呑み行くぞー!」
シーヤ「待ってよ2人ともー!」
かくして、パーティでの初一般クエストを終わらせたジュンタたち。この後、ハルドの飲みすぎとジュンタの見事な食欲で、2人の所持金が瞬く間に底をつくのであった。
風雷拳一行の冒険はまだまだ続く。
To be continued
ハルド「てな訳で、クエストを受ける前にだ。パーティのルールを決めていこうと思う。」
ジュンタ「確かに、親しい仲で組んだとはいえ、チームとして動く以上ルールは必要だよね。」
シーヤ「そうよね。でも、具体的にどうすればいいのかな?」
「風雷拳」のメンバーは早速ルールについて話し合いを始めた。パーティ運用において、ルールはメンバーをまとめる大事な要素なのである。
ジュンタ「うーん、まずは基本的な所から決める?例えば仲間や周りの人に挨拶をするとか。」
ハルド「そんな事でいいのかよ?」
ジュンタ「うん。なんだそんな事かって思うような事こそ、ちゃんとルールとして定めるべきだと思うんだ。」
ジュンタ「シーヤさんは何か意見ある?」
シーヤ「えっと…」
ジュンタとシーヤは昨夜からタメ口で話すようになった。ハルド曰く、仲間内で敬語を使う事に違和感があるからだそうだ。
シーヤ「ごめんなさい。守らなきゃいけないことはいっぱいあると思うんだけど、多すぎて思いつかないわ。」
ジュンタ「そうか…」
ハルド「そういえばジュンタ、お前メモ帳買ったらしいな。そいつに意見書き出せばいいんじゃね?」
ジュンタ「そうだね。じゃあ、挨拶は意見として書くよ。」
ハルド「他には何かねえか?」
シーヤ「じゃあ、パーティのお金の使い道は皆で相談して決めるっていうのはどうかしら?」
ハルド「そいつぁ凄くいいと思うぜ。」
ジュンタ「それも書いとくよ。あと、俺からも1つ。」
ハルド「聞かせてくれ。」
ジュンタ「冒険者に限らず人としてコミュニケーション能力は大事だと思うんだ。だから挨拶をするっていう意見も出た訳だし。」
ハルド「まあ、そうだな。」
ジュンタ「これもコミュニケーションの一環なんだけど、俺の故郷に『報連相』って言葉があるんだ。」
ハルド「ホウレンソウ…?」
シーヤ「何それ?」
前世のコミュニケーションにおいて大事にされる「報連相」という行為。「報告・連絡・相談」の3つのポイントの略で、集団に属する習性があるヒトにとって無くてはならない習慣である。物事を進める時の定期的な「報告」、指示や体調などの情報を伝える「連絡」、そして困った時の「相談」。これら3つが行き届いていないと冒険者の場合、クエストを受けづらくなったり、ランク昇格試験の受験資格を得られなくなったりと損することが多い。
ハルド「なるほど。聞き馴染みのない言葉だが、確かに真っ当な考え方だ。」
シーヤ「私も凄くいいと思うわ。」
ジュンタ「どうもありがとう。」
ハルド「ルールはあんまり多くても大変だろうし、1回まとめようぜ。」
ジュンタ「うん。そうしよう。」
冒険者パーティ『風雷拳』のルールは以下の通りになった。
・仲間や周りの人に必ず挨拶する
・お金の使い道は皆で決める
・「報連相」は欠かさない
・ルールの追加や削除は話し合いで決める
ハルド「こんな感じでいいんじゃねぇか?このルールに賛成の奴は挙手。」
2人「はい!」
ハルド「決まりだな。んじゃ、せっかくだしこのままクエスト受けに行かねえか?」
2人「賛成!」
ルールを決めたジュンタ一行はクエストを受ける為に受付からクエストリスト借りる。
ハルド「せっかくパーティで動くなら、戦闘が発生するクエストがいいな。」
ジュンタ「そうだね。実戦経験を積むのは大事だ。」
シーヤ「でも私は、戦いにそんなに自信ないわ。」
ジュンタ「大丈夫。君一人で戦う訳じゃないんだ。心配いらないよ。それに、今は杖があるから魔法を連発できるでしょ?」
シーヤ「ええ。」
ハルド「心配なら魔法場でウォーミングアップするか?30分までなら無料だしな。」
シーヤ「じゃあ、お願いするわ。クエストもあるし、時間はそんなにかけないから。」
クエストを受けてからシーヤのお願いで魔法場でウォーミングアップを済ませた。初対面の時と違い杖があるため、魔法は安定して使えるようだ。
パーティで初めて挑むクエストは…
一般クエスト
内容:ゴブリン20体、オーク10体の討伐
報酬:個人→500ℳ パーティ→1000ℳ
受注資格:Dランク以上
※パーティで受注する場合、リーダーの冒険者ランクがD以上だと受注可能。ゴブリンの腰巻きとオークの毛皮を討伐数と同数持ってクリア報告をすること。
シーヤ「ホントにこれやるの…?その…数多くないかしら?」
ハルド「だからパーティで動くんだろ?」
ジュンタ「そうそう。それに、一気に30体を相手することはないから。」
シーヤ「ええ。頑張ってみるわ。」
一般クエストをパーティ名義で受注した後、風雷拳一行は森へと向かった。
ジュンタ「そういえば、俺たちが協力して戦うのは初めてだよね。作戦は立てなくていいの?」
ハルド「その事だが、もう考えてあるぜ。」
シーヤ「もう!?どんな内容なの?」
ハルド「ここで重要なのは、3人とも戦い方が違うって事だ。しかもそれは、パーティでの戦いにおいては有利だ。」
ジュンタ「確かに、それぞれ役割があった方が戦いやすいよね。」
ハルド「んで、その肝心な戦い方だがよ。まずジュンタ、お前には先陣を切ってもらう。得意な格闘術やナイフ捌きで敵を倒しまくってくれ。」
ジュンタ「なるほど。前に出て戦うのは俺が適任って事か。」
ハルド「そしてシーヤ。お前には、後ろから魔法で援護してもらう。前衛に隙ができた時にカバーするんだ。」
シーヤ「ええ、分かったわ。」
ハルド「そして俺は、お前らの間で戦う。ジュンタの事を魔法で援護できるし、シーヤに攻撃が飛んできても、俺なら打ち消せる。何より、真ん中にいた方が指示が通りやすい。」
ジュンタ「かなり合理的な作戦だね。全部ハルドが考えたの?」
ハルド「まあな。こちとら伊達に1年やってきてねえぜ。」
ジュンタ「流石だ。シーヤさんも一緒に頑張ろう!魔法使えるようになったから大丈夫だよ。」
シーヤ「ええ、ありがとう。そう言ってもらえると頑張れそうだわ。」
ハルド「…さて、早速お出ましだぜ。」
森の茂みからゴブリンが飛び出してきた。
シーヤ「上手くできるかしら…ゴクリ…」
ハルド「そんじゃあ、作戦通りに頼むぜ。」
ジュンタ「了解!」
先程話した通り、まずはジュンタが電光石火の如く、敵に切り込む。
ジュンタ「シュッ!」
一瞬で距離を詰め、強烈な袈裟斬りを叩き込み、ゴブリンが1体断末魔を上げた。
ハルド「いつ見ても速ぇな。俺たちも行くぞ。」
シーヤ「ええ。」
後の2人も、ジュンタに負けじと続く。
ハルド「《エアー・剣裂》!」
シーヤ「《エレキ》!」
2人の魔法がゴブリンを1体ずつ仕留めた。
ジュンタ「2人ともナイス!これなら、後隙を埋められる。」
連携のとり方を何となく掴んだ3人は、順調にゴブリンの群れを撃破したのだった。
討伐数
ゴブリン5/20体 オーク0/10体
ハルド「初めてにしては上出来だったな。」
ジュンタ「そうだね。俺の攻撃の直後に魔法を撃ったのは良かったよ。見事に俺の隙をカバーしている。」
シーヤ「私も、ここまでちゃんと戦えたのは初めて。2人ともありがとう。」
ジュンタ「こちらこそ、勉強になったよ。」
ハルド「おっしゃ!この調子でどんどん倒しまくるぞ!」
2人「おー!」
ジュンタたちはあれからゴブリンを少しづつ倒していき、森を深く進んだ。
討伐数
ゴブリン20/20体 オーク0/10体
ジュンタ「今のところ、オークにはまだ会ってないね。」
シーヤ「うん。オークはゴブリンより少し強いって聞いたけど大丈夫かしら。」
ハルド「そこは心配ねえ。確かに、オークはちょっとだけ倒しにくいが、個体数はゴブリンより少ねぇ。個人の初心者だと手強いがパーティで動く分には問題ねえだろ。」
ジュンタ「ゴブリンの時も連携取れてたし、落ち着いて戦おう。」
シーヤ「そうね。1人じゃ怖かったけど、皆がいれば大丈夫!」
オークとの戦いに向けて、戦闘に不慣れなシーヤが気合いを入れ直したところで、オークと遭遇した。
ハルド「ようやく見っけたな。しかも、まさかの10体。」
シーヤ「オークが…10体…」
ジュンタ「どう?やっぱり、不安が残る?」
シーヤ「ええ。あなた達には何度も話したと思うけど、強そうな魔物が目の前にいるとどうしても不安なの。」
ジュンタ「そうか…自信が無い事に挑むって、どうしても恐怖が残っちゃうよね。だけど、仕事である以上避けられない。でも大丈夫。俺たちがついてるから。」
シーヤ「っ!」
シーヤ(俺たちがついてる…)
ジュンタ「…シーヤさん?」
シーヤ「え…ええ、そうね。私頑張る。ゴブリンの時のように。」
ハルド「ほら、早くしねぇとオーク行っちまうぞ。」
ジュンタ「そうだった。」
ハルド「今度はパターン変えてみるぜ。まずは、シーヤの魔法で不意打ち。そこから、俺ら2人で一気に突っ込む。パーティ戦はあらゆるパターンを持っとくことが大事だ。行けるか?」
シーヤ「ええ。頑張るわ。」
ハルド「それじゃあ、作戦開始!」
シーヤ「いっけー!《エレキ》!」
雷魔法を前方広範囲に放った。ファーストヒットでオークたちに直撃し、怯んだところで、ジュンタとハルドが同時に突撃する。
ジュンタ「今だ!」
ハルド「おっしゃ行くぞ!」
ジュンタ「ハアァッ!」
先にジュンタがオークの懐に潜り込んで、一撃を入れる。
ジュンタ「《裡門頂肘》!」
ドゴンッ!
凄まじい炸裂音が響き渡り、オークがもんどり打って吹き飛ばされ、一撃で絶命した。
《裡門頂肘》
→八極拳の技。肘を使った超至近距離での体当たり。相手を肘の一点で捉え、震脚(強い踏み込み)と共に全身で強打する破壊力抜群の一手。八極拳の技はいずれも、まともに喰らえばひとたまりもない。
ハルド(えげつねぇ…何つー威力してやがんだ。ドゴンッ!って聞こえたぞ今。あん時もらってたらやばかったな…。)
ハルド「やるじゃねぇか!ならこっちも…」
ハルド「スキル発動!《突進》!」
ハルド「からの、《エアー・圧弾》!」
続いてハルドもスキルを行使し、流れるように魔法のコンボでオークを狩った。
ジュンタ「《燕返し》!」
ハルド「《エアー・剣裂》!」
シーヤ「《エレキ》!」
《燕返し》
→日本の剣術の技。二発の斬撃を素早く反対に放つ。
ジュンタたちはそれぞれの役割を己の技で全うした。無事ゴブリンとオークをそれぞれ指定数討伐に成功し、町に戻ってクエストクリアの報告をした。
ハルド「俺たちでの初クエストクリアって事で、パーッと飲み明かさねぇか?」
ジュンタ「でも俺とシーヤさん酒飲めないよ?」
ハルド「細けぇこたぁ気にすんなって。さぁ呑み行くぞー!」
シーヤ「待ってよ2人ともー!」
かくして、パーティでの初一般クエストを終わらせたジュンタたち。この後、ハルドの飲みすぎとジュンタの見事な食欲で、2人の所持金が瞬く間に底をつくのであった。
風雷拳一行の冒険はまだまだ続く。
To be continued
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる