周りは魔法やスキルをよく使うけど自分は武術一筋で頑張ります!

ゼン

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第1章 出会いと経験

第24話 夜戦

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本日、雑貨屋の娘から依頼を受けた『風雷拳』一同は、クエスト中に夜を迎え、適当に開けた場所で野宿していた。夕食をとりつつ仲良く雑談をした3人は、クエストを完遂するため、明日に備えて焚き火をきちんと消して眠りについた。しかし、眠りについてから2時間ほどでジュンタが突然目を覚まし、テントの外から異変を感じ取った。その状況を危険だと判断したジュンタが即刻メンバー2人を強引に起こす。 

ジュンタ「ハルド、シーヤさん、起きて!外に誰かいる!」 

ハルド「んー…なんだこんな時間に…?」 

シーヤ「どうしたの…まだ暗いよ?」 

まだ深夜なため、2人は寝起きで意識が朧げだ。 

ジュンタ「2人とも寝ぼけてる場合じゃない、緊急事態だ!多分だけど、魔物に囲まれている!」 

ハルド「何だと!?」 

シーヤ「嘘でしょ!?」 

まさかの報告を受けた2人は次第に目を覚まし、急いでテントから出る。するとそこには、既に全方位からこちらを見つめる魔物が大量に湧いていた。 

ハルド「クソ、マジかよ…」 

ジュンタ「さっきの焚き火で引き寄せちゃったか…」 

シーヤ「でも、火なら寝る前にジュンタさんが消してくれたはずじゃない?」 

ジュンタ「消す前に相当近づかれたのかも。」 

シーヤ「そんな…」 

ハルド「こりゃ…ざっと20体はいるぜ。しかも今は夜、昼間より戦いづれぇ。」 

そう、今この状況で最も厄介なのが、真っ暗闇な夜中であるということ。日中とは異なり視界不良なため、戦闘で不利になりやすい。 

ハルド「お前ら、とりあえず背中を合わせろ!暗いからかなりキツイぞ!」 

ジュンタ「うん!」 

シーヤ「わかったわ!」 

ハルド「《エアー・剣裂スライス》!」 

ジュンタ「《唐竹割り》!」 

シーヤ「《エレキ》!」 

それぞれがやられまいと必死に抵抗するが、数が多く、中々包囲網を崩せない。 

ジュンタ「くっ…このままじゃ夜目が利くまで持たない。」 

シーヤ「何か方法はないの?」 

ハルド「こうなったら適当に一方向から突破するぞ!ジュンタ、先陣を切れるか?」 

ジュンタ「わかった!やってみる!」 

ジュンタが方向を定め、包囲網の一端に向かって突撃する。 

ジュンタ「こっちだ!」 

しかし、それに合わせて何かが暗がりからジュンタに飛びかかる。 

ジュンタ「何っ!?」 

ジュンタは魔物の攻撃を飛び退くが、攻めようとして反応が僅かに遅れたため、猛獣に引っかかれたように服が裂ける。 

ハルド「《エアー・剣裂スライス》!」 

直後にハルドの攻撃がジュンタの眼前の魔物に命中。 

ハルド「大丈夫か?」 

ジュンタ「うん、なんとか。」 

ジュンタ(3本の爪痕…あの飛び方、四足歩行か!) 

ジュンタ「今回は俺1人じゃ苦戦するから手伝って。」 

ハルド「おう、任せろ!シーヤは背後でひたすら自分の身を守れ!」 

シーヤ「わかったわ!」 

ジュンタ1人での突破は厳しく、ハルドと2人での特攻になり、シーヤは雷魔法を駆使して、魔物を自分に近づけないようにしている。武術とは本来、対人戦での生存率を上げる為に工夫を重ねた技術。野生動物との戦闘は想定していないため、ジュンタは、四足歩行の動物と戦った経験はほぼない。それ故、思うように動けず苦戦を強いられる。 

ジュンタ「ハルド、あそこに魔法を!」 

ハルド「了解!《エアー・剣裂スライス》!」 

ジュンタ「ありがとう、これで隙ありだ!」 

自分たちが向いている方の魔物をハルドが怯ませ、ジュンタがその隙を突いて撃破する。すると、包囲網が一部解けて脱出路が見えてきた。 

ハルド「よし!今のうちに逃げるぞ!」 

ジュンタ「ああ。シーヤさんも急ごう!」 

シーヤ「ええ!」 

魔物の包囲網を突っ切ろうとする3人。しかし… 

シーヤ「きゃっ!?」 

一番後ろにいたシーヤが転倒して逃げ遅れる。魔物はそれを見逃さずシーヤに飛びつく。 

ジュンタ「シーヤさん、伏せて!」 

ピンチの仲間を助けるように、ジュンタが投石を魔物の頭部に当てる。 

ジュンタ「さ、早く!」 

シーヤ「ありがとう!」 

ハルド「おい!追いつかれる前に行くぞ!」 

そして、ジュンタたちは必死に連携をとって、なんとか魔物の群れから逃走に成功した。 

ジュンタ「危なかった…」 

ハルド「ふう…ここまで来れば大丈夫だろ…」 

シーヤ「はぁ…はぁ…はぁ…た、助かった~」 

難を逃れ、その場で体を休める3人。シーヤは特に疲れきっていた。 

ジュンタ「シーヤさん、大丈夫?怪我とかは?」 

シーヤ「ありがとう、私は大丈夫よ。それより、ジュンタさんの服…」 

ジュンタ「ああ、これくらいすぐ直すから大丈夫だよ。怪我もないし、問題ないよ。ハルドは?」 

ハルド「俺も異常はねぇぜ。でも…お前が気づかなきゃヤバかったな、俺たち。」 

シーヤ「うん、もしかしたら魔物に食べられて死んじゃってたかもしれないし…本当に良かった。ありがとう、ジュンタさん。」 

ジュンタ「いやいや、2人を強引にでも起こして正解だったよ。」 

ハルド「マジでその通りだな。ホントよく気づいたもんだぜ。」 

ジュンタ「うん、でも皆の力が無かったら逃げられなかったよ。2人もありがとう。」 

ハルド「おうよ。それがパーティだからな。」 

シーヤ「ええ。私はまだ迷惑をかけるかもしれないけど、力を合わせられて良かったわ。」 

ジュンタ「そういえばハルド、さっき囲ってきたアイツらは一体誰なんだ?夜目が少し利き始めた頃にうっすらと見えたけど…なんか、四足歩行で見た目が狼っぽかったような…」 

ハルド「ああ、俺もそれが気がかりだったんだ。間違いじゃなければ、奴らはナイトウルフ。名前の通り、列記とした夜行性の魔物だ。単体でも討伐難易度はCランク。群れだと、数によってはBランク相当に跳ね上がる事もある。お前がついてたから何とか逃げ切ったものの、他の集団だったら、生きて帰れたかどうか…本来、この辺はギルドのメルン町支部の管轄で、Cランク以上の魔物は決して出てこないはずだったんだがな…」 

ハルド「さて、アイツらから逃げ切った訳だが、これからどうする?」 

ジュンタ「そのことなんだけどさ…何か、大事なもの忘れてる気がするんだけど…」 

シーヤ「あっ!」 

ここで、シーヤが思い出したように声を上げる。 

ジュンタ「どうしたの?」 

シーヤ「そういえば、薬草を入れた袋は?まさか、テントに置き去りになったりしてない?」 

2人「あ、しまった…」 

シーヤ「どうしよう…このままじゃ、薬草持って帰れないよ?」 

ジュンタ「そうだね…まだ近くにいると思うけど、取りに行く?3人でやれば何とかなりそうじゃない?」 

ハルド「いや、やめとけ。」 

シーヤとジュンタの2人は薬草を取りに行こうか迷っていたが、ハルドがそれを止める。 

ジュンタ「え、どうして?」 

ハルド「さっき戦ってみてわかったろ?アイツら結構しぶといだろ。」 

シーヤ「確かに、ゴブリンとは比べ物にならない。」 

ハルド「アイツらは基本群れで行動するし、かなり獰猛だ。それに、今はまだ逃げるのに精一杯で、十分には戦えない。俺とシーヤはそもそも力不足、ジュンタだって、ナイフ1本と強敵を殺るには装備が不十分だ。そのナイフはギルドから貰った安モンだし、飛び道具も使い切っちまったそうだからな。」 

ジュンタ「それは、そうだね。」 

シーヤ「じゃあ、どうするの?」 

ハルド「一旦夜を明かして、危険がないように帰るしかねぇ。」 

ジュンタ「じゃあ…薬草は?」 

ハルド「手荷物も置き去りで逃げちまったから、どうしようもねぇな。」 

シーヤ「そんな…せっかく集めたのに…」 

ジュンタ「シーヤさん、もうこうなっちゃったのは仕方ない。日が昇ってから帰って、あの女の子には、素直に謝ろう。」 

シーヤ「うん…そうしよう。」 

『風雷拳』一行は安全に夜が明けるのを待ち、帰りの支度を整えた。そして、重い足取りで町へ戻っていくのであった。 

To be continued
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みんなの感想(17件)

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嗚呼!表紙絵も実に素晴らしい!
今後の展開も楽しみだ!!

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嗚呼!
久しぶりに更新されている!!

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嗚呼感想を書こう

嗚呼、もう半年も更新されていない...
もう更新されることはないのか!?

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