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第2章 魔女の遺物
2-2 友と喧騒
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エリカが玄関の扉を開けると、そこで待っていたのはよく見知った顔の女性。
「やっほー!エリたん、元気にしてた~?」
白い長袖のトレーナーに、青いジーンズという出で立ち。
髪は明るいオレンジ色のショートボブで、星型のピアスをした快活そうな女性が、目をキラキラと輝かせてエリカに抱きついた。
「わっ!びっくりするじゃない、澪。」
「会いたかったよ~、愛しのエリたん!」
彼女の名前は、雛塚澪。
エリカの高校時代の同級生で、二人とも同い年の20歳である。
「久しぶりね。呼び鈴の鳴らし方ですぐに分かったわ。」
「えーっ!?何で何で~?」
「あんなに遠慮なく何度も鳴らすのは澪しかいないもの。」
「てへっ。だってだって、一秒でも早くエリたんに会いかったんだも~ん。」
「ふふっ、もう何言ってるのよ。さあ、立ち話もなんだし中に入って。」
エリカは恥ずかしそうに言うと、澪を工房の中に招き入れた。
「エリたん家のソファー、気持ちいいね!」
リビングに入ると、まるで自分の家かのように、ソファーでだらりとくつろぐ澪。
その様子を楽しそうに眺めつつ、エリカが声をかける。
「何か飲み物でも飲む?」
「えーっとぉ、じゃあコーラでお願いっ。」
二人分の飲み物を用意しながら、エリカは澪との思い出を回想する。
魔女という異質な存在であることを隠すために、目立たず地味な高校生活を送っていた。
そのせいで、親しい人がほとんどいなかった自分にとっての数少ない友人。
口数少なく近寄りがたい雰囲気を纏っていた自分に、澪だけは明るく話しかけてくれた。
(ほんと、あの頃の私が、どれだけ救われたことか……)
親友と言っても差し支えないほど、二人は本当に仲が良い。
だから、澪だけには自分が魔女であることを打ち明けている。
もちろん最初はとても驚かれたが、それでも快く受け入れてくれた彼女には、本当に感謝している。
(これからも、澪のことは大切にしないとね。)
飲み物の準備ができたエリカは、コーラが入ったグラスを澪に手渡す。
「はい、どうぞ。」
「ありがと~!」
澪はコーラを受け取るやいなや、勢いよく飲み始める。
その様を見て、どこからともなくアレイスターがひらひらと飛んできた。
「アッハッハ、気持ちいいくらいの飲みっぷりだな、ミオ。元気そうで何よりだぜ。」
澪は大きく手を振ってそれに応える。
「やっほー、アーくん!ひっさしぶり~。」
「よう、久し振りだな。しっかし『アーくん』は子供みたいで恥ずかしいから、勘弁してほしいぜ。」
「いーじゃんいーじゃん。カッコいいよ、アーくん!」
「あー、わかったわかった。アーくんでいいから連呼しないでくれ。」
澪は何度もこの工房に来たことがあり、アレイスターとも顔馴染み。
言葉を話す翡翠色の蛾という、普通の人であれば度肝を抜かれるような光景にも、至って平然としている。
「こうやって会うのは半年振りくらいね。最近はどう?仕事は順調?」
エリカは澪の向かいのソファーに腰を下ろして話しかける。
「うん、順調だよ!最近は色んな所でショーをやらせてもらってるんだ~。こう見えてあたし、意外と売れっ子なんだよねっ。」
「さすがは澪ね。上手くいっているみたいで良かったわ。」
澪の職業はなんとマジシャン、すなわち手品師。
高校卒業後にプロのマジシャンに弟子入りして修業を積み、1年ほど前にデビューした。
厳しい修行の成果である確かな実力に加え、華のある容姿も相まって、じわじわと人気が出てきている。
「ちなみに、どんなマジックが一番得意なの?」
「おっ、エリたん興味ある?それはね~、まあ、見てもらうのが早いかなっ。」
澪がおもむろにカバンの中から取り出したのは、マジックでよく見かける黒いシルクハット。
「よ~く見てね~。今は空っぽでしょ?」
胸の前で抱えた帽子の中には何も入っていない。
そのシルクハットを両手でクルクルと回した後、澪は自分の頭に乗せ、
「でもね、こうすると――ほらっ!」
サッと外すと、なんとそこには一羽の真っ白いハトが。
「すごいわ!どうなってるの!?」
「おー、なかなかやるじゃねーか。」
感嘆の声を上げるエリカとアレイスターに向け、澪は得意げに舌を出して笑う。
「てへっ、凄いでしょ!これがあたしの十八番なんだ~。」
流石はプロのマジシャンである。
観客の二人には、タネも仕掛けもさっぱり分からない。
澪は満足そうな顔でハトを肩に乗せて撫でる。
――と、今度はエリカにとって頭の痛い話題を振った。
「そういやエリたん。この前あたしが紹介した、萌ちゃんの依頼はどうだった?上手くいった~?」
「え?あ、うん……まあ、一応依頼は達成できた……かな。」
先日の一件を思い出し、歯切れの悪い答えを返すエリカ。
依頼人の元カレを殺しそうになって嫌われた、という本当のことは――とても言えない。
「……?そっか、とりあえず上手くいったってことだね!うんうん。」
不穏な雰囲気を察してか、澪はそれ以上の深入りはせずに納得してみせる。
その反応を見たエリカは、ほっと胸を撫で下ろす。
(気を遣ってくれたのね……ありがたいわ。)
気まずくなってしまった空気を変えるため、エリカは別の話題を振る。
「ところで澪、今日はどうして工房に来たの?ただお喋りしに来ただけ、って訳でもないと思うけど。」
「そうそう!実はね、エリたんにぜひ調べてほしいなーってことがあって、そのお願いをしに来たんだ~。」
「私に調べてほしいこと?それはお仕事の依頼ってことかしら。」
「え~!この大親友でマブダチのあたしからお金を取ろうっていうの?うえーん、そりゃないよ~。」
コロコロと表情を変え、身振り手振りで大げさな反応をする澪。
その様を目にしてエリカはクスリと笑う。
「ふふっ、冗談よ。で、どんなお願いなの?」
「えっとね、『魔女の遺物』の噂のことは知ってるかな?最近巷で話題になってるんだけどっ。」
全く知らない話を出され、エリカは首を傾げる。
「魔女の遺物?私は世の中の流行りとかに疎いから、聞いたことないわね。どんな噂?」
エリカが尋ねると、澪は待ってましたとばかりに、
「ふっふっふ、それはですね……」
まるで怪談でも語るかのような、おどろおどろしい声で話し始めた。
「――むかーしむかし、山芝村にある洞窟の奥深くに、恐ろし~い魔女が住んでいました。その魔女は不老不死の薬を作り出そうとしていましたが、研究中の不慮の事故で死んでしまいました。そんな彼女の魔力と怨念が込められた、とてつもなく強力な魔法の道具が、今でも洞窟のどこかに眠っているのです――」
山芝村とは、エリカが住んでいる霧原市からずっと西の方にある、山に囲まれた田舎の村。
特段有名な場所ではないものの、村のはずれに比較的大きな洞窟があり、心霊スポットとして一部の界隈で人気があるらしい。
澪は噂の内容を語り終わると、肩に止まっていたハトと戯れながら、普段通りの明るい声に戻して続ける。
「っていう噂なんだよ~。それでね、本当かどうか確かめようとして洞窟に入った人がいるらしいんだけど、中から出てきたら『俺は今日、何してたんだっけ?どうしてこんなド田舎の洞窟にいるんだ?全然思い出せない。』って、何にも覚えてなかったんだって!不思議でしょ~。」
一通りの解説を聞いた二人は顔を見合わせ、
「何も覚えてなかった?怪しいな、きっと何かカラクリがあるぞ。」
アレイスターは大いに訝しみ、
「私もそう思うわ。……ん?ということは、もしかして澪のお願いは、その洞窟に行って真相を確かめてきてほしいっていうことかしら?」
エリカは澪の意図を確認した。
澪はコーラを一気に飲み干すと、前のめりになってローテーブルに両手をつき、
「そうそう!さっすがエリたん、その通りだよ~。だって、だってね、もし本当に魔法の道具が見つかったら、きっとすご~くエリたんの役に立つと思んだ!」
目を輝かせて力説するが、一方のエリカは
「ありがとう。うーん、そうね……」
感謝しつつも悩ましげに腕を組み、アレイスターに意見を求める。
「噂になっている強力な魔法の道具っていうのは、魔身具のことかしら。」
「ああ、十中八九そうだろうな。」
エリカが言う『魔身具』とは、魔女が自身の持つ力を、何らかの媒体に大量に注ぎ込み凝縮させた、魔法の道具のこと。
そのいずれもが有するのは、作製した魔女それぞれに千差万別の強力な機能。
魔女にとっての切り札とも言える代物である。
「もし噂が本当なら、どんな魔身具だったとしても、私達の役に立つことは間違いないわよね。ウィッチハンターに対抗するための大きな力になるんじゃないかしら。」
「んー、確かにそうかもしれねぇが、オレは何かキナ臭いというか、仕組まれてるような感じがするんだよな。」
エリカの語る希望的観測に、アレイスターは懸念を示すも、
「――でもまあ、虎穴に入らずんば虎子を得ずって言葉もあるし、ダメ元で行ってみるのもアリだと思うぜ?仮に魔身具がガセだったとしても、洞窟の中で何かが起こってんのは間違いねーし、調べてみるのは悪くねぇだろ。」
最終的には前向きにエリカの背中を押す。
それを聞いた澪は大きくガッツポーズした。
「アーくんありがとっ!それじゃあ、エリたん――」
「うん、洞窟を調べてみようと思う。早速、明日にでも山芝村に行ってみようかしら。」
と、あっさり予定を決めようとするエリカの目の前に、アレイスターが飛び上がった。
「おいエリカ、簡単に言ってるけど一体どうやって行くんだ?オマエは免許も車も持ってないだろ。」
「え?電車とかバスで行けばいいんじゃないの?」
呑気な答えを返すエリカに、澪が呆れたような顔をする。
「エリたん、それは無理だと思うよ……。山芝村は近くに駅がないし~、バスの本数はすっごく少ないんだっ。」
「そうなの!?困ったわね……」
「箒で空を飛んでひとっ飛び~!とかはできないの?」
「みんな魔女って言うとすぐにそれをイメージするけど、魔法で空を飛ぶってすごく難しいのよ。私にはできないわ。」
飛行や加速、転移など、移動に関する魔法はかなり難易度が高く、使える魔女はごく一部。
移動手段という面では、エリカも一般人とさして変わらない。
それどころか車の運転ができない分、見劣りするとさえ言える。
(魔女なのに公共交通機関を使うしかないなんて、ちょっと格好悪いわよね……)
すると、澪がニヤニヤしながらエリカの隣に腰を下ろして肘で小突く。
「ほれほれ、そーんな時こそ親友の出番さ~!あたしが連れて行ってあ・げ・る!」
「え、どうやって?澪って車は持ってないわよね。」
「まあまあ、それは明日のお楽しみってことで。どーんとお任せあれっ!」
澪は自信満々の表情で、ぺろりと舌を出してウインクした。
「やっほー!エリたん、元気にしてた~?」
白い長袖のトレーナーに、青いジーンズという出で立ち。
髪は明るいオレンジ色のショートボブで、星型のピアスをした快活そうな女性が、目をキラキラと輝かせてエリカに抱きついた。
「わっ!びっくりするじゃない、澪。」
「会いたかったよ~、愛しのエリたん!」
彼女の名前は、雛塚澪。
エリカの高校時代の同級生で、二人とも同い年の20歳である。
「久しぶりね。呼び鈴の鳴らし方ですぐに分かったわ。」
「えーっ!?何で何で~?」
「あんなに遠慮なく何度も鳴らすのは澪しかいないもの。」
「てへっ。だってだって、一秒でも早くエリたんに会いかったんだも~ん。」
「ふふっ、もう何言ってるのよ。さあ、立ち話もなんだし中に入って。」
エリカは恥ずかしそうに言うと、澪を工房の中に招き入れた。
「エリたん家のソファー、気持ちいいね!」
リビングに入ると、まるで自分の家かのように、ソファーでだらりとくつろぐ澪。
その様子を楽しそうに眺めつつ、エリカが声をかける。
「何か飲み物でも飲む?」
「えーっとぉ、じゃあコーラでお願いっ。」
二人分の飲み物を用意しながら、エリカは澪との思い出を回想する。
魔女という異質な存在であることを隠すために、目立たず地味な高校生活を送っていた。
そのせいで、親しい人がほとんどいなかった自分にとっての数少ない友人。
口数少なく近寄りがたい雰囲気を纏っていた自分に、澪だけは明るく話しかけてくれた。
(ほんと、あの頃の私が、どれだけ救われたことか……)
親友と言っても差し支えないほど、二人は本当に仲が良い。
だから、澪だけには自分が魔女であることを打ち明けている。
もちろん最初はとても驚かれたが、それでも快く受け入れてくれた彼女には、本当に感謝している。
(これからも、澪のことは大切にしないとね。)
飲み物の準備ができたエリカは、コーラが入ったグラスを澪に手渡す。
「はい、どうぞ。」
「ありがと~!」
澪はコーラを受け取るやいなや、勢いよく飲み始める。
その様を見て、どこからともなくアレイスターがひらひらと飛んできた。
「アッハッハ、気持ちいいくらいの飲みっぷりだな、ミオ。元気そうで何よりだぜ。」
澪は大きく手を振ってそれに応える。
「やっほー、アーくん!ひっさしぶり~。」
「よう、久し振りだな。しっかし『アーくん』は子供みたいで恥ずかしいから、勘弁してほしいぜ。」
「いーじゃんいーじゃん。カッコいいよ、アーくん!」
「あー、わかったわかった。アーくんでいいから連呼しないでくれ。」
澪は何度もこの工房に来たことがあり、アレイスターとも顔馴染み。
言葉を話す翡翠色の蛾という、普通の人であれば度肝を抜かれるような光景にも、至って平然としている。
「こうやって会うのは半年振りくらいね。最近はどう?仕事は順調?」
エリカは澪の向かいのソファーに腰を下ろして話しかける。
「うん、順調だよ!最近は色んな所でショーをやらせてもらってるんだ~。こう見えてあたし、意外と売れっ子なんだよねっ。」
「さすがは澪ね。上手くいっているみたいで良かったわ。」
澪の職業はなんとマジシャン、すなわち手品師。
高校卒業後にプロのマジシャンに弟子入りして修業を積み、1年ほど前にデビューした。
厳しい修行の成果である確かな実力に加え、華のある容姿も相まって、じわじわと人気が出てきている。
「ちなみに、どんなマジックが一番得意なの?」
「おっ、エリたん興味ある?それはね~、まあ、見てもらうのが早いかなっ。」
澪がおもむろにカバンの中から取り出したのは、マジックでよく見かける黒いシルクハット。
「よ~く見てね~。今は空っぽでしょ?」
胸の前で抱えた帽子の中には何も入っていない。
そのシルクハットを両手でクルクルと回した後、澪は自分の頭に乗せ、
「でもね、こうすると――ほらっ!」
サッと外すと、なんとそこには一羽の真っ白いハトが。
「すごいわ!どうなってるの!?」
「おー、なかなかやるじゃねーか。」
感嘆の声を上げるエリカとアレイスターに向け、澪は得意げに舌を出して笑う。
「てへっ、凄いでしょ!これがあたしの十八番なんだ~。」
流石はプロのマジシャンである。
観客の二人には、タネも仕掛けもさっぱり分からない。
澪は満足そうな顔でハトを肩に乗せて撫でる。
――と、今度はエリカにとって頭の痛い話題を振った。
「そういやエリたん。この前あたしが紹介した、萌ちゃんの依頼はどうだった?上手くいった~?」
「え?あ、うん……まあ、一応依頼は達成できた……かな。」
先日の一件を思い出し、歯切れの悪い答えを返すエリカ。
依頼人の元カレを殺しそうになって嫌われた、という本当のことは――とても言えない。
「……?そっか、とりあえず上手くいったってことだね!うんうん。」
不穏な雰囲気を察してか、澪はそれ以上の深入りはせずに納得してみせる。
その反応を見たエリカは、ほっと胸を撫で下ろす。
(気を遣ってくれたのね……ありがたいわ。)
気まずくなってしまった空気を変えるため、エリカは別の話題を振る。
「ところで澪、今日はどうして工房に来たの?ただお喋りしに来ただけ、って訳でもないと思うけど。」
「そうそう!実はね、エリたんにぜひ調べてほしいなーってことがあって、そのお願いをしに来たんだ~。」
「私に調べてほしいこと?それはお仕事の依頼ってことかしら。」
「え~!この大親友でマブダチのあたしからお金を取ろうっていうの?うえーん、そりゃないよ~。」
コロコロと表情を変え、身振り手振りで大げさな反応をする澪。
その様を目にしてエリカはクスリと笑う。
「ふふっ、冗談よ。で、どんなお願いなの?」
「えっとね、『魔女の遺物』の噂のことは知ってるかな?最近巷で話題になってるんだけどっ。」
全く知らない話を出され、エリカは首を傾げる。
「魔女の遺物?私は世の中の流行りとかに疎いから、聞いたことないわね。どんな噂?」
エリカが尋ねると、澪は待ってましたとばかりに、
「ふっふっふ、それはですね……」
まるで怪談でも語るかのような、おどろおどろしい声で話し始めた。
「――むかーしむかし、山芝村にある洞窟の奥深くに、恐ろし~い魔女が住んでいました。その魔女は不老不死の薬を作り出そうとしていましたが、研究中の不慮の事故で死んでしまいました。そんな彼女の魔力と怨念が込められた、とてつもなく強力な魔法の道具が、今でも洞窟のどこかに眠っているのです――」
山芝村とは、エリカが住んでいる霧原市からずっと西の方にある、山に囲まれた田舎の村。
特段有名な場所ではないものの、村のはずれに比較的大きな洞窟があり、心霊スポットとして一部の界隈で人気があるらしい。
澪は噂の内容を語り終わると、肩に止まっていたハトと戯れながら、普段通りの明るい声に戻して続ける。
「っていう噂なんだよ~。それでね、本当かどうか確かめようとして洞窟に入った人がいるらしいんだけど、中から出てきたら『俺は今日、何してたんだっけ?どうしてこんなド田舎の洞窟にいるんだ?全然思い出せない。』って、何にも覚えてなかったんだって!不思議でしょ~。」
一通りの解説を聞いた二人は顔を見合わせ、
「何も覚えてなかった?怪しいな、きっと何かカラクリがあるぞ。」
アレイスターは大いに訝しみ、
「私もそう思うわ。……ん?ということは、もしかして澪のお願いは、その洞窟に行って真相を確かめてきてほしいっていうことかしら?」
エリカは澪の意図を確認した。
澪はコーラを一気に飲み干すと、前のめりになってローテーブルに両手をつき、
「そうそう!さっすがエリたん、その通りだよ~。だって、だってね、もし本当に魔法の道具が見つかったら、きっとすご~くエリたんの役に立つと思んだ!」
目を輝かせて力説するが、一方のエリカは
「ありがとう。うーん、そうね……」
感謝しつつも悩ましげに腕を組み、アレイスターに意見を求める。
「噂になっている強力な魔法の道具っていうのは、魔身具のことかしら。」
「ああ、十中八九そうだろうな。」
エリカが言う『魔身具』とは、魔女が自身の持つ力を、何らかの媒体に大量に注ぎ込み凝縮させた、魔法の道具のこと。
そのいずれもが有するのは、作製した魔女それぞれに千差万別の強力な機能。
魔女にとっての切り札とも言える代物である。
「もし噂が本当なら、どんな魔身具だったとしても、私達の役に立つことは間違いないわよね。ウィッチハンターに対抗するための大きな力になるんじゃないかしら。」
「んー、確かにそうかもしれねぇが、オレは何かキナ臭いというか、仕組まれてるような感じがするんだよな。」
エリカの語る希望的観測に、アレイスターは懸念を示すも、
「――でもまあ、虎穴に入らずんば虎子を得ずって言葉もあるし、ダメ元で行ってみるのもアリだと思うぜ?仮に魔身具がガセだったとしても、洞窟の中で何かが起こってんのは間違いねーし、調べてみるのは悪くねぇだろ。」
最終的には前向きにエリカの背中を押す。
それを聞いた澪は大きくガッツポーズした。
「アーくんありがとっ!それじゃあ、エリたん――」
「うん、洞窟を調べてみようと思う。早速、明日にでも山芝村に行ってみようかしら。」
と、あっさり予定を決めようとするエリカの目の前に、アレイスターが飛び上がった。
「おいエリカ、簡単に言ってるけど一体どうやって行くんだ?オマエは免許も車も持ってないだろ。」
「え?電車とかバスで行けばいいんじゃないの?」
呑気な答えを返すエリカに、澪が呆れたような顔をする。
「エリたん、それは無理だと思うよ……。山芝村は近くに駅がないし~、バスの本数はすっごく少ないんだっ。」
「そうなの!?困ったわね……」
「箒で空を飛んでひとっ飛び~!とかはできないの?」
「みんな魔女って言うとすぐにそれをイメージするけど、魔法で空を飛ぶってすごく難しいのよ。私にはできないわ。」
飛行や加速、転移など、移動に関する魔法はかなり難易度が高く、使える魔女はごく一部。
移動手段という面では、エリカも一般人とさして変わらない。
それどころか車の運転ができない分、見劣りするとさえ言える。
(魔女なのに公共交通機関を使うしかないなんて、ちょっと格好悪いわよね……)
すると、澪がニヤニヤしながらエリカの隣に腰を下ろして肘で小突く。
「ほれほれ、そーんな時こそ親友の出番さ~!あたしが連れて行ってあ・げ・る!」
「え、どうやって?澪って車は持ってないわよね。」
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