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第1章 光るバッハ
第3話 試してみるわ!
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ユーコがまず求めた能力は以下の通りだ。
壁抜けや浮遊といった自由な移動手段。
あらゆる物理的な障害を一切無効化したのだ。
そして反して、
あらゆる物質に触れられることも求めた。
「ふふ……これで最低限の力は手に入れたわ。後は……」
ユーコは教室を見渡す。
今は深夜だ。
当り前だが生徒なんていない。
「あの……僕はそろそろお暇しても?」
「駄目よ。何かあったら聞くんだから」
逆らうことのできない死神。
今日の魂刈りは諦めるのだった。
さて、ユーコはとある物音に気付いた。
足音だ。
更に、廊下で眩い光が揺れている。
懐中電灯だ。
「おあつらえ向きね。誰か来たわ」
「えっと……どうするんですか?」
「決まっているじゃない。脅かすのよ」
脅かす。
それはあれか。
廊下の影に隠れて、誰か来たら「ワッ!」とするような。
死神は頭を振る。
素晴らしい来世を蹴ってまでして、
こんな性格のユーコがそんなことを望むだろうか。
「お出でなすったわね」
死神の疑問とは裏腹に、
ユーコはその気しかない。
教室の扉は開かれた。
顔を覗かせたのは警備員である。
「……異常なんてねぇよなぁ」
そんなぼやき声を出して、
警備員は面倒臭そうに頭をかいた。
当り前だ。
銀行や店ならまだしも、
こんな学校に誰が侵入するものか。
いても悪ガキか、忘れ物を取りに来た生徒くらいだろう。
「さて、始めようかしら」
あぁ、忘れていた。
ここに、
人を脅かすために幽霊になったドSがいる。
ユーコは小手調べに、と。
少し伸ばした爪を黒板に押し当てた。
そのまま一気に、
ためらいないく、
引き下ろす。
「嫌ぁあぁぁぁっ!?」
「な、なんだぁあぁぁぁっ!?」
死神と警備員の情けない声が木霊する。
あの独特の不協和音は、
どうやら全世界共通で不快らしい。
そんな2人の様子を見たユーコはというと、
頬を赤らめて、
ウットリとしながら、
身をよじらせて、
「あぁ……最っ高!」
そんなことをのたまった。
「だ、誰だっ!? 出て来い!?」
警備員はお仕事モードに入る。
あんな不協和音だ。
風が吹いたくらいで鳴るはずがない。
教室内をあちこち照らし、
誰がやったのかと探そうとする。
「こ……これは……」
発見したのは黒板の爪痕だ。
キッチリ5本分。
どう見ても人がやった痕跡。
「くそ、どこに隠れやがった!?」
教壇の下、
掃除ロッカーの中、
カーテンの向こう側。
警備員は思い付く限りの場所を探すものの、
他に何の手がかりも見付けられない。
当り前だ。
相手にしているのは、
幽霊のユーコなのだから。
「警察を呼ぶべきか……いや、誰かの巧妙な悪戯かもしれないし……。そうだ、悪戯。そうとしか考えられない」
何も見付けられなかった警備員は、
そんな風に、
自分自身に言い聞かせるようにブツクサ言いながら出て行こうとする。
「もう帰っちゃうの? ゆっくりしていけば……いいのにねっと!」
そんなの、ユーコが許すはずがない。
開かれていた扉に足をかけると、
力任せに蹴った。
「は、はにゃぁあぁぁぁっ!?」
耳をつんざくような音を立てて、
扉はひとりでに閉じる。
今度は警備員だけが情けない大声を上げて、
転げるようにしながら走り去って行った。
「あー……何て最高なのかしら! 幽霊っていいわねっ!」
「ソ……ソウデスカ……」
死神はというと、
まだ黒板のダメージが大きく立ち直れないでいたのだった。
壁抜けや浮遊といった自由な移動手段。
あらゆる物理的な障害を一切無効化したのだ。
そして反して、
あらゆる物質に触れられることも求めた。
「ふふ……これで最低限の力は手に入れたわ。後は……」
ユーコは教室を見渡す。
今は深夜だ。
当り前だが生徒なんていない。
「あの……僕はそろそろお暇しても?」
「駄目よ。何かあったら聞くんだから」
逆らうことのできない死神。
今日の魂刈りは諦めるのだった。
さて、ユーコはとある物音に気付いた。
足音だ。
更に、廊下で眩い光が揺れている。
懐中電灯だ。
「おあつらえ向きね。誰か来たわ」
「えっと……どうするんですか?」
「決まっているじゃない。脅かすのよ」
脅かす。
それはあれか。
廊下の影に隠れて、誰か来たら「ワッ!」とするような。
死神は頭を振る。
素晴らしい来世を蹴ってまでして、
こんな性格のユーコがそんなことを望むだろうか。
「お出でなすったわね」
死神の疑問とは裏腹に、
ユーコはその気しかない。
教室の扉は開かれた。
顔を覗かせたのは警備員である。
「……異常なんてねぇよなぁ」
そんなぼやき声を出して、
警備員は面倒臭そうに頭をかいた。
当り前だ。
銀行や店ならまだしも、
こんな学校に誰が侵入するものか。
いても悪ガキか、忘れ物を取りに来た生徒くらいだろう。
「さて、始めようかしら」
あぁ、忘れていた。
ここに、
人を脅かすために幽霊になったドSがいる。
ユーコは小手調べに、と。
少し伸ばした爪を黒板に押し当てた。
そのまま一気に、
ためらいないく、
引き下ろす。
「嫌ぁあぁぁぁっ!?」
「な、なんだぁあぁぁぁっ!?」
死神と警備員の情けない声が木霊する。
あの独特の不協和音は、
どうやら全世界共通で不快らしい。
そんな2人の様子を見たユーコはというと、
頬を赤らめて、
ウットリとしながら、
身をよじらせて、
「あぁ……最っ高!」
そんなことをのたまった。
「だ、誰だっ!? 出て来い!?」
警備員はお仕事モードに入る。
あんな不協和音だ。
風が吹いたくらいで鳴るはずがない。
教室内をあちこち照らし、
誰がやったのかと探そうとする。
「こ……これは……」
発見したのは黒板の爪痕だ。
キッチリ5本分。
どう見ても人がやった痕跡。
「くそ、どこに隠れやがった!?」
教壇の下、
掃除ロッカーの中、
カーテンの向こう側。
警備員は思い付く限りの場所を探すものの、
他に何の手がかりも見付けられない。
当り前だ。
相手にしているのは、
幽霊のユーコなのだから。
「警察を呼ぶべきか……いや、誰かの巧妙な悪戯かもしれないし……。そうだ、悪戯。そうとしか考えられない」
何も見付けられなかった警備員は、
そんな風に、
自分自身に言い聞かせるようにブツクサ言いながら出て行こうとする。
「もう帰っちゃうの? ゆっくりしていけば……いいのにねっと!」
そんなの、ユーコが許すはずがない。
開かれていた扉に足をかけると、
力任せに蹴った。
「は、はにゃぁあぁぁぁっ!?」
耳をつんざくような音を立てて、
扉はひとりでに閉じる。
今度は警備員だけが情けない大声を上げて、
転げるようにしながら走り去って行った。
「あー……何て最高なのかしら! 幽霊っていいわねっ!」
「ソ……ソウデスカ……」
死神はというと、
まだ黒板のダメージが大きく立ち直れないでいたのだった。
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