幽霊のユーコさん!

るちぇ。

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第1章 光るバッハ

第11話 私の力になりなさい!

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勝敗は火を見るよりも明らかだった。
方や感動させただけ。
方や対戦相手に花まで持たせて弄んだ。

「死神、勝敗のジャッジをしなさい」
「え、でもこの戦いのルールは……」

死神は覚えていた。
これは格の競い合い。
つまり、どちらかが負けを認めた時に決着なのだと。

「あんたの目も節穴? 勝敗なんてわかりきっているじゃない」
「……そうかもしれませんね。でも、一応確認はしますよ。これでも公正さを売りにしている死神ですから」
「あっそ。じゃあどうして私を間違えて刈ったのかしら?」
「さ、さー! 聞いてみましょうか!」

死神は露骨に目を反らしながら、
光るバッハへとマイクを向ける気持ちで尋ねる。

「Hahaha! はっきり言おう! 私の目は曇っていた!」
「と、言いますと?」
「私はただ目を光らせればいい、ピアノを引けばいいと思っていた。それが間違いだったのさ!」

これには誰もが首を傾げるだろう。
いや、それでも十分恐い、と。
校長先生はちょっとアレだったんだ、と。

「如何に美しい調度品も、人の目に触れなければただのガラクタも同然! いや、存在しないのと同義!」
「美術なんて関係ないけどね」
「その点、ユーコは目を向けてくれた! この私に、忘れかけていた脅すという行為を体験させてくれた!」
「どれだけサボっていたのよ」
「だから私は認めよう! ユーコの勝利を!」
「やっと認めた? はい、お疲れ様」

ユーコはとてもつまらなそうにそう言った。
熱が去っている。
校長先生をどうやって料理しようかと、
楽し気に考えて実行していた時とはまるで別人。
今はとても気怠げで、
口が寂しくなるとすぐにパッキーを咥えて、
スマホがあったら延々と弄っていそうな、
そんな普通の女子高生だった。

「……ユーコ」
「ん? どうかしたの、私の顔をジロジロ見て」

死神はここに来て、初めて後悔した。
この子は、お世辞にも褒められたものではないが、
間違いなく稀有な才能を持っている。
そうでなくても、
こんなにも普通の女子高生としても顔も持っている。
そんな子を間違えて刈ってしまった。

「あんた、馬鹿?」

死神は顔を上げた。
いつぞやの時と同じだ。
椅子に座って足を組み、ギロリと睨み付けている。

「私はこれでも感謝している。なに辛気臭い顔をしているのよ」
「で、でも、君は……」
「二度は言わないわ。ありがとう」

それきり興味を無くしてしまったのか、
ユーコは釣り竿に手を伸ばした。

「ねぇ、光るバッハ。こいつにあんたを括り付けて、適当にかっ歩するだけでも面白いんじゃない?」
「Hahaha! そいつはクレイジーだねぇ! もしもやる時は私を使ってくれ!」
「あんたを使うこと前提なんだっての。馬鹿じゃないの?」

そう言ってユーコは、
悪魔染みた笑みを浮かべながら、
次は何をしようかと思いをはせたのだった。
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みんなの感想(11件)

リョウ
2018.06.27 リョウ
ネタバレ含む
るちぇ。
2018.06.27 るちぇ。

お疲れ様です。
第1章はこのような感じになりました。
次章作成は追々行いますので、気長にお待ち頂けると幸いです。

解除
リョウ
2018.06.26 リョウ
ネタバレ含む
るちぇ。
2018.06.26 るちぇ。

お疲れ様です。
巻き込んでいくスタイルですよー!(笑

解除
リョウ
2018.06.25 リョウ
ネタバレ含む
るちぇ。
2018.06.25 るちぇ。

お疲れ様です。
バッハはネタキャラなので、設定があやふやだったかもしれません。
申し訳ありません。
校長は幽霊などいない、と固く信じていますからね。そのため見回りです。

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